第21話 放課後の教室と、すずの光
愛媛FCの練習撮影から数日。
学校はいつも通りで、
チャイムの音も、廊下のざわめきも、
どこか落ち着いた日常のリズムを刻んでいた。
放課後、写真部の四人は部室に集まっていた。
ひよりが言う。
「校内展示、どの写真使うか決めんとね」
悠斗が頷く。
「プロの写真はSNSに載せられんけど、
展示ならええしな」
すずは静かに写真を並べていた。
芝が舞う瞬間、
影が止まる瞬間、
風が揺れる瞬間。
湊はその写真を見て、
ふと胸がざわついた。
(……すずさんの写真って、なんでこんなに“音”がするんだろう)
写真なのに、
風の音が聞こえるような、
芝の匂いが漂うような、
そんな不思議な感覚。
湊は思わず口にしていた。
「すずさんって……なんでこんな写真撮れるの?」
すずは少しだけ首を傾げた。
「……分からん。
でも、光が“話しかけてくる”ときがある」
ひよりがその言葉に反応した。
「光が……話しかける?」
すずは静かに頷いた。
「……風が止まる瞬間とか、
影が揺れる前とか……
“今やよ”って言われる感じがする」
湊は息を呑んだ。
(そんな風に世界を見てるんだ……)
ひよりは笑おうとしたが、
なぜか胸の奥がざわついた。
(湊くん……すずちゃんのこと、
なんか特別に見とる気がする)
自分でも理由が分からない。
ただ、
湊の視線がすずに向くたびに、
胸の奥がきゅっと締めつけられた。
その日の帰り道。
夕陽が校舎の窓を赤く染めていた。
湊はすずに声をかけた。
「すずさん、今日の写真……すごかったよ」
すずは少しだけ目を丸くした。
「……ありがとう」
「なんか……すずさんの写真って、
“静か”なのに、すごく強い」
すずは歩きながら言った。
「……湊くんの写真は、
“まっすぐ”なんよ」
「まっすぐ?」
「……見たままを撮るんじゃなくて、
“見たいもの”を撮っとる」
湊はその言葉に、
胸が熱くなるのを感じた。
(すずさんって……やっぱりすごい)
その後ろを歩くひよりは、
二人の会話を聞きながら、
胸の奥がざわざわしていた。
(……なんで、こんな気持ちになるんやろ)
自分でも分からない。
ただ、
湊の視線がすずに向くたびに、
心が揺れた。
部室に戻ると、
加藤先生が展示のレイアウト案を広げていた。
「みんな、いい写真が揃ってきたね。
校内展示、楽しみにしてるよ」
ひよりは笑顔を作った。
「はい、頑張ります!」
でもその笑顔の奥には、
小さな揺れが隠れていた。
湊は気づかない。
すずも気づかない。
悠斗だけが、
ひよりの表情をちらりと見て、
何かを察したように目を細めた。
(……ひより、気づき始めたんやな)
夕陽が部室の窓から差し込み、
四人の影を長く伸ばしていた。
湊は思った。
――すずさんの光は、不思議だ。
でも、ひよりの光も……大切だ。
その“揺れ”が、
静かに物語を動かし始めていた。




