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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第19話 プロのスピードと、芝の匂い

土曜日の朝。

愛媛SCの練習場に着いた四人と加藤先生は、

スタッフに案内されてグラウンド脇へ通された。


「ここからなら安全ですので、どうぞ」

スタッフの男性が丁寧に頭を下げる。


湊は胸が高鳴った。


目の前には、

鮮やかな緑の芝、

青とオレンジの練習着、

ボールを蹴る乾いた音、

選手たちの鋭い動き。


「……すごい」

湊は思わず呟いた。


ひよりが言う。


「湊くん、プロはね、

 “動き出し”が全然違うんよ」


悠斗が頷く。


「スピードもパワーも桁違いや。

 撮るのめっちゃ難しいで」


すずは静かに言った。


「……芝の匂い、強い」


湊はスマホを構えた。


選手が走り出す。

ボールが弾む。

芝が舞う。


シャッターを切る。


しかし――


「……全部ブレてる」


ひよりが覗き込む。


「湊くん、プロは速いけんね。

 “止まる瞬間”を探すんよ」


悠斗がアドバイスする。


「パスを受ける前、

 トラップした瞬間、

 蹴る前の“溜め”……

 そこが一番撮りやすい」


すずが指さした。


「……影を見るといい。

 影が止まると、動きも止まる」


湊は深呼吸し、

選手の影を追いながら構えた。


パスを受ける瞬間――

影が一瞬だけ止まる。


シャッター。


画面には、

芝を蹴り上げる足、

舞い上がる緑の粒、

ボールの軌道、

選手の集中した横顔が

鮮やかに写っていた。


「……撮れた」


ひよりが目を丸くする。


「湊くん、すごいよ!

 “プロの瞬間”が写っとる!」


悠斗も満足そうに頷いた。


「おお、ええやん。

 芝の舞い方が完全にプロの写真や」


すずは静かに微笑んだ。


「……光も、風も、写っとる」


湊は胸の奥が熱くなるのを感じた。



練習が終わると、

スタッフが声をかけてくれた。


「今日はありがとうございました。

 校内展示、楽しみにしています」


ひよりが丁寧に頭を下げる。


「こちらこそ、ありがとうございました!」


悠斗も笑う。


「めっちゃ勉強になりました!」


すずは静かに言った。


「……ありがとうございました」


湊は深く頭を下げた。


「本当に……ありがとうございました」


スタッフは優しく微笑んだ。


「また機会があれば、ぜひ」


その言葉に、

湊の胸がまた熱くなった。



帰り道。

春の風が心地よく吹き抜ける。


ひよりが言う。


「なんか……今日、すごかったね」


悠斗が頷く。


「プロのスピード、やばかったな」


すずは静かに呟いた。


「……芝の匂い、忘れられん」


湊は空を見上げた。


(もっと……撮りたい)


その気持ちは、

しまなみ街道の向こうへ続く

“まだ見ぬ光”と同じ方向を向いていた。


プロのスピードを撮った今日の経験は、

湊の胸に静かに刻まれた。


――そして、

この日を境に、

4人の“旅の計画”は

ゆっくりと動き始めることになる。


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