表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/28

第18話 愛媛FCからの返事と、2週間後のグラウンド

愛媛SCへ手紙を出してから、

ちょうど一週間が経った頃だった。


放課後の部室に、

加藤先生が封筒を手に入ってきた。


「藤沢くん、これ……君宛に届いてたよ」


湊は思わず立ち上がった。


「えっ……!」


ひよりと悠斗とすずも、

息を飲むように湊の手元を見つめる。


封筒には、

《愛媛SC》のロゴ。


湊の指が少し震えた。


封を切り、

便箋を開く。


《練習風景の撮影について

 校内展示を目的とする場合に限り、許可いたします。

 SNS等での公開はご遠慮ください。

 当日はスタッフの指示に従ってください。

 日程は以下の通り――》


湊は読み終えると、

ゆっくり顔を上げた。


「……OK、だって」


ひよりが目を丸くする。


「えっ……ほんとに!?」


悠斗が湊の背中を叩く。


「マジか!

 プロチームの練習撮影なんて、普通できんぞ!」


すずは静かに微笑んだ。


「……すごい。

 湊くんの手紙、届いたんやね」


湊は胸が熱くなった。


「SNSには載せられないけど……

 校内展示ならOKだって」


ひよりが嬉しそうに言う。


「十分すぎるよ!

 写真部の展示、絶対盛り上がるよ!」


加藤先生も頷いた。


「よくやったね、藤沢くん。

 プロの現場は緊張するだろうけど、

 いい経験になるよ」


悠斗がスケジュールを見て言う。


「2週間後の土曜日か。

 よっしゃ、予定空けとくわ」


ひよりも笑う。


「もちろん行くよ。

 プロのスピード、撮ってみたい!」


すずは静かに言った。


「……芝の匂い、楽しみ」


湊は便箋をそっと閉じた。


(本当に……行けるんだ)


胸の奥がじんわりと熱くなる。



そして2週間後の土曜日。


朝の空気は少しひんやりしていて、

雲の切れ間から柔らかい光が差し込んでいた。


愛媛SCの練習場に向かう道は、

松山の街から少し離れ、

田んぼと住宅が混ざる静かな風景が続いていた。


遠くには石鎚山系の稜線が見え、

春の霞が山肌を淡く包んでいる。


ひよりが言う。


「なんか……松山の“外側”って感じやね」


悠斗が頷く。


「プロの練習場って、こういうとこ多いんや。

 街の喧騒から離れとる」


すずは空を見上げた。


「……光が柔らかい」


湊は歩きながら、

胸の奥が少しずつ高鳴っていくのを感じた。


(本当に……プロの選手を撮るんだ)


加藤先生が言う。


「みんな、緊張しなくていいよ。

 スタッフさんの指示に従って、

 迷惑にならないように撮れば大丈夫だ」


ひよりが笑う。


「湊くん、今日もローアングルするん?」


悠斗がすかさず乗る。


「お、出た“湊の盗撮アングル”!」


「だから違うって!」

湊が慌てると、

すずまで小さく笑った。


「……芝、舞うかな」


その言葉に、

湊は少し照れながらも嬉しくなった。



練習場のゲートが見えてきた。


青とオレンジのクラブカラー。

芝の匂い。

遠くから聞こえるボールを蹴る音。


湊は思った。


――ここから、また新しい光が始まる。


そして四人と加藤先生は、

静かにゲートをくぐった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ