表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/28

第14話 雨の日と、写真部SNSのはじまり

その日は朝から雨だった。


校舎の窓ガラスを細かい雨粒が流れ落ち、

グラウンドは薄い水膜に覆われていた。

放課後の部室は、いつもより静かで、

雨音が一定のリズムで響いている。


「今日は外で撮れんけん、室内活動やな」

悠斗が椅子に腰を下ろしながら言った。


ひよりが机にノートを広げる。


「ねぇ、前から思っとったんやけど……

 写真部の公式SNS、作ってみん?」


湊は驚いた。


「SNS……?」


「うん。松山の景色とか、

 私たちの写真を発信できたら素敵やと思って」


悠斗が腕を組む。


「ええやん。

 うちの写真部、人数少ないし、

 活動知ってもらうにはちょうどええわ」


そのとき、

すずが珍しくすっと手を挙げた。


「……やりたい」


ひよりが目を丸くする。


「すずちゃんが……?

 SNS、興味あるん?」


すずは小さく頷いた。


「……写真、見てもらいたい。

 “音”とか“湿度”とか……

 伝わるかもしれん」


湊はその言葉に胸が少し温かくなった。



そこへ、顧問の加藤先生が部室に入ってきた。


「お、今日は雨か。

 ……で、何やら真剣な顔しとるな?」


ひよりが説明する。


「先生、写真部のSNSを作りたいんです。

 松山の景色とか、私たちの写真を発信したくて」


加藤先生は少し考え、

椅子に腰を下ろした。


「いいと思うよ。

 ただし――大事なことがある」


四人が姿勢を正す。


「まず、写真には“被写体の権利”がある。

 人物が写る場合は、必ず許可を取ること。

 特に未成年は慎重にな」


湊が頷く。


「……はい」


「それから、場所によっては撮影禁止のところもある。

 神社仏閣、商業施設、個人宅……

 “撮っていい場所かどうか”を必ず確認すること」


悠斗が真剣な顔で言う。


「なるほど……

 俺ら、けっこう街中で撮っとるけん、気をつけんとな」


加藤先生は続けた。


「あと、SNSは“拡散力”が強い。

 位置情報や、個人が特定できる情報は

 むやみに載せないこと。

 トラブルは避けたいからね」


ひよりがメモを取りながら言う。


「分かりました。

 ルールを守って、楽しく発信します」


すずが静かに言った。


「……写真は、人を傷つけるためじゃなくて、

 誰かの心をあったかくするためにある」


加藤先生は微笑んだ。


「その通りだよ、立花さん。

 その気持ちを忘れなければ大丈夫だ」


すずは少しだけ照れたように俯いた。



SNSの構成を話し合ううちに、

すずがどんどん意見を出し始めた。


「……“光のシリーズ”とか、

 “風のシリーズ”とか……

 テーマごとに投稿したい」


ひよりが驚く。


「すずちゃん、めっちゃ積極的やん!」


悠斗が笑う。


「ええやん、すず。

 お前の写真、絶対人気出るぞ。

 自信持て」


すずは少しだけ頬を赤くした。


「……ありがとう」


湊はその姿を見て、

すずの中にある“静かな情熱”を改めて感じた。



雨音が部室に優しく響く中、

四人はSNSの名前、投稿の順番、

写真の選び方を話し合い続けた。


ひよりが言う。


「なんか……雨の日って、落ち着くね」


悠斗が頷く。


「せやな。

 外に出られん分、こういう時間も悪くない」


すずは窓の外の雨を見つめながら呟いた。


「……雨の音、写るかな」


湊は微笑んだ。


「写るよ。

 すずさんの写真なら」


すずは少しだけ目を丸くし、

そして静かに微笑んだ。


雨の日の部室は、

いつもより少しだけ温かかった。


そして写真部の新しい一歩が、

静かに踏み出された瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ