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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第13話 砥部焼と、白い光の静けさ

日曜日の午前。

写真部の四人は、松山市から少し離れた砥部町へ向かっていた。


「今日は“白い光”を撮るんよ」

ひよりが言う。


砥部町は、山に囲まれた静かな町だった。

空気が澄んでいて、

どこか時間がゆっくり流れている。


「砥部焼って、どんな焼き物なんですか?」

湊が尋ねると、悠斗が答えた。


「白磁が特徴なんよ。

 “砥部の白”って呼ばれとるくらい、

 光の反射が綺麗なんや」


すずが小さく付け加える。


「……青い線も、好き。

 “呉須”っていう青い絵付け」


ひよりが笑う。


「砥部焼はね、丈夫で普段使いできるんよ。

 昔から愛媛の食卓にある焼き物なんよ」


湊は胸が少し高鳴った。



工房に入ると、

白い器がずらりと並んでいた。


皿、鉢、湯呑み、花瓶。

どれも白磁の柔らかい光をまとい、

静かに佇んでいる。


「……すごい」


湊は思わず呟いた。


工房の窓から差し込む自然光が、

器の表面を淡く照らしていた。


ひよりが言う。


「砥部焼はね、

 “白の中にある影”が綺麗なんよ」


悠斗が湊の肩を軽く叩く。


「湊、白いもの撮るときはな、

 光を強く当てすぎたらあかん。

 影が消えて、ただの白い板になるけん」


すずが器の影を指さした。


「……影の“青さ”を見るといい」


湊はスマホを構え、

白磁の器を撮ろうとした。


しかし――


「……あれ、真っ白になっちゃう」


ひよりが覗き込む。


「湊くん、白はね、

 “光を減らす”んよ。

 影の方に寄せて撮ると、形が出るんよ」


悠斗も言う。


「白磁は難しいんや。

 でも、光を弱めたら一気に綺麗になる」


すずは静かに言った。


「……白の中に、青がある」


湊は影側に回り、

光を弱めて撮ってみた。


今度は――

器の丸みが柔らかく浮かび上がり、

白磁の表面に淡い青が滲んでいた。


「……できた」


ひよりが目を丸くする。


「湊くん、めっちゃ綺麗に撮れとるよ」


悠斗も満足そうに頷いた。


「白磁の“呼吸”が写っとるな」


すずは静かに微笑んだ。


「……砥部の白、掴んだね」


湊は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。



工房の奥では、

職人がろくろを回していた。


湊はしばらくその動きを見つめた。


土が回転し、

指先で形が生まれていく。


「……すごい。

 こんな風に作られてるんだ」


ひよりが説明する。


「砥部焼はね、

 “厚み”があるんよ。

 丈夫で、毎日使えるように作られとるんよ」


悠斗が付け加える。


「昔は藩の御用窯やったんや。

 歴史も深いんよ」


すずは静かに呟いた。


「……土の匂い、好き」


湊はその言葉に、

砥部焼の“静けさ”を感じた。



工房を出ると、

外の光が白磁のように柔らかかった。


ひよりが言う。


「砥部焼ってね、

 “光を受ける器”なんよ。

 光がある場所で使うと、一番綺麗なんよ」


悠斗が笑う。


「湊、今日の写真は“白の勉強”やったな」


すずは静かに頷いた。


「……白は、光の一番近くにある色」


湊は思った。


――光を撮るって、

 色を撮ることなんだ。


砥部焼の白い器のように、

湊の胸にもまたひとつ、

静かな光が灯っていた。


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