3話 迷子と困り人
「ずっと森ではないか!」
八千代が吠えるのも当然だ。道を間違え奥に進んでいるため2時間歩いているのに鬱蒼とした森がずっと続いている。
先ほどの餓鬼は三度来た。一応対話を試みたり、攻撃を少し避けたりしていたが、こちらへ確実なる殺意を持って攻撃していたため。全員屠った。
木刀はかなり硬く、切り裂けるので重宝している。
しかし、木刀はかなり耐久性が高いが、骨を断つ斬撃を何度もして、全く壊れる気配がしない。
それは八千代の力の一つ。
纏 (まとい)
超常の力を物質や体に纏うことで耐久性を上げる、切れ味などを上げる。
肉体に使えば、足や手の攻撃を爆発的に上げることもできる。
八千代の1番使っている技で、熟練度はマックスだろう。
なぜなら力が強すぎて、この技で道具を守らないとあっという間に壊してしまうからだ。
この技は息をするかの様にできるため、木刀を常時コーティングしている。
草木を切り分けるときもズバズバ切れるのでこの技を使わない選択肢は無かった。
「あーあ。もっと強いもの来ないかな~。できれば大きい鬼みたいなものが欲しい。」
その願いが神様が聞いたのかはわからないが、遠くで大きな音がなった。何かが争っている音である。
もうこれは行くしかない。行かない選択肢はあるだろうか?いや、ない!
知らない地ではやってはいけない全力疾走で。とんでもない勢いで走る。
森の中に大きな広場が開いていた。その中に2隊の動物がいた。
体積が通常の3倍くらい大きいゴリラ。もう一体は倍サイズだが、かなり鋭い剣の様なツノが生えたサイ。
どちらも目は血走っている。それはもはやお互い死ぬまでは終わらない戦いの様だった。
「ゴガァァァ」とゴリラが鳴くと
「グロォオォ」とサイが吠える
真剣勝負に八千代は釘付けになっていた。高級寿司を前に出された寿司好きの様な。好物を前に出された人と同じ様な顔をしていた。
口はニコニコとだらけきっており。目はキラキラと光り。体はどうなるのだろうかと震えていた。
どうなるのだ、これはどうなるのだろう。頭では二体はどう動くか想像するが、実際の動きも知りたいのだと。机があったのなら、どんどんと早くしてくれと急かしていただろう。それほど楽しみだった。
サイは予想に反してとんでもない勢いで走り出し、次の瞬間にはゴリラの胴体まで近づいていた。
しかしゴリラもサイの動きには簡単についてきた。身軽な動きでサイドに避け、胴体に上からの振り下ろしをした。
ドン!と大きな音が響いたが、サイは一才動きは鈍らず、そのまま走り抜けてゴリラの方へ頭を向けた。
しばしの静寂の後に、今度はゴリラの方が行動に出た。近くの大きな石を持ち上げ、サイへ全力投球した。
一般人では黙示が難しいほどのスピードで投げられた石はサイのツノにより真っ二つにされた。そのままゴリラの方へ走る。今度は避ける先に鋭いツノを振り抜いた。
ゴリラも慌てて避けたので、大怪我には至らなかったが、体の表面を軽く割いた。お腹に小さく切り傷ができ。血が垂れてきていた。
これだ。これこそが私の求めていた戦い。人命として成したいのだ!
これ以上お互いに消耗していたら私の相手が務まらない。もう行くすぐ行く!
「待て!私もまぜろー!」
二体の動物の前に少女が現れた。こいつはなんだと。小さいものの癖に生意気なと思った。
しかし心の奥底。野生の部分で侮るなと、決して驕らず本気で殺すべきだと警鐘を鳴らしていた。
ゴリラが来た。本気のタックルで吹き飛ばす気だ。人間が食らったらひとたまりもない。
「纏!ふぐぅぅぅ!!」
ゴリラのタックルを真正面に受け止めた。ずりずりと3メートルまで押されたが。止まった。
「転!どりゃぁぁ」
ゴリラの股下に入り込み、足を大きく蹴り飛ばし、浮かんだところで腹を掴み前方へぶん投げた。
その隙をサイが逃すはずがなく。投げた直後にはサイは走り出した。八千代は投げた後に大きな隙が出ていた。
サイは勝利を確信した。あの厄介なゴリラすら自分のツノには勝てなかった。勝てるものはいるはずがないのだ。
「纏 白刃どり!」
ピタ そんな音がした。それくらいぴたりとお互いが止まった。
サイの突進すら、ツノすら一切通じなかった。
「好奇!踵落とし!!」
その場でツノを掴み、思い切り飛び上がる。その場で強烈な踵落としを頭部に浴びせた。
脳に強烈なダメージが来た。耐えられるはずもなく、サイは気絶した。
「ゴガァァァ!」
ゴリラは投げられていたが、攻撃は喰らっていない。まだまだ元気でこちらへ吠える。
「壁!そして正拳突き!」
ゴリラが瞬きをした瞬間、腹部に強烈なダメージが来た。
ズドンと木を巻き添えに吹き飛ばすと、遠いところで伸びていた。
「ふふん。私は強い!」
戦闘には勝ったが、餓鬼と違い、別にこちらへ無差別な殺意を持ったわけでもない上に邪魔をしてしまった。
この上殺生などしようものなら、どの顔で母に会えばいいのだろうか。
二体は見逃して、先に行くことにした。一応超常の力を使い、回復力を莫大にしておいたので、数分の後に起きるだろう。
さらに森の奥へ進んで行く。森のかなり奥に行き。どんどん暗さが目立っていった。日は登っているはずなのに、薄暗い
ここでようやく迷子になっていたと気づいた。確かに餓鬼は見えなくなり、大きな動物などが増えたのだと思った。
先ほどの動物が起きてこちらを探すだろう。二度目の戦闘では流石にやる気が起きない。どうしようと考えていたら
「助けてください!」
女性の助け声が聞こえた。
問答は後でできると。そこへ向かう
なんだか穏やかな場ではなかった。紐で縛られた女性が中央におり、その周りをお堅い見た目の連中が囲っている。
騎士の様な見た目であるが、話の内容が凄まじかった。
「ここには誰も来ないぞ。」
「好きにしてもいいってさ?俺辛抱たまらないぞ」
「もうやっちまおうぜ?」
「そうだそうだ。」
「た、助けて!誰か助けてください!」
「貴様らは何をしている?」
「なんだ!?」




