6話 とりあえず魚は素晴らしい
「このキノコ、大丈夫」
見た目は完全に毒があるけどそんなこともなくただただ普通のキノコ。昆虫食に関しては…うん、見逃してください。私にはあんなもの到底食べられません。
「えいっ」
となるとやっぱり頼るべきは魚。ここはかなり下流の方なので大型魚とかもたまに入り込んでくる。とはいっても繋がってるのは巨大な池。大型魚といってもせいぜい70cmほど。一応この世界の生き物は全体的に少し大きいことがわかった。個体や種類にもよるけど前世の1.5〜2倍以上も大きなっている個体もいた。それのせいで危険度もかなり上がっている。
まあ、おかげで食べれる量も増えたのだけど。
「(百発百中とはこのことか…。全部脳天を貫いておる)」
「ぶい」
魚はベルの分もあるのでベルに回収してもらっている。ベルって熊?だけど人間以上に賢いかもしれない。確か前世にもそんな感じの熊がいたような…いなかったような…?まあどっちでもいいや。
「(その"ぶい"って言いながら取っているポーズはなんだ?)」
「これはね、喜びを表してる」
多分普段あんまり笑わないからニヤついてるみたいになっちゃってると思うけどピースサインをベルに向ける。
真似しようとしてるけど人間と熊?では指の構造も違うからか上手く出来てない。でもそれがすごい可愛かった。
「ざる、作る」
「(急にどうした?)」
魚を運ぶって行為で思い出した。"ざる"といううってつけな存在があったことに。
ただし材料は竹…。この近くで竹は見てないんだよね。ということで一か八か……。
近くに落ちてる木の枝を拾ってベルを呼んだ。
「これ、わかる?」
「(ほう、これを"竹"というのか…!見たことあるぞ!)」
「ほんと?」
地面に枝で竹の絵を描いてベルに聞いてみる。私よりも長くこの森に住んでいるベルなら見たことあるかも…と思って聞いてみたら案の定。
「(けれどもここからかなり遠い場所だ。森の最果て、東の端に生えている)」
「うーーん…。流石に遠そう…」
「(ここから端までは最低でも3日はかかる。それも片道だ)」
これはまた後ほどどうするか検討することにしよう。今この場で決めれるような内容ではない。それもその竹が本当にあるのか、本当に使えるのかもわかったものじゃない。
「一旦後回し、とりあえずこれ捌く」
「(私は何がすることはあるか?)」
「木、そこに置いておいて」
川で魚の下処理は終わらせているので前みたいに燻していく。…日持ちいいし腹持ちもいいからこうなっちゃうよね。
「あっ、火ついた」
「(む?そんなに大変なことなのか?」
「前、30分以上かかった」
「(それは…ご愁傷様だな)」
植物油でも集めて火を直ぐ大きくできるようにしたらもっと楽になるかも。あとは火打石とか。とにかく早く火と水に関しては安定させたい。
「簡単に火をつける方法……、なんだっけ」
何があったような気がするのだけどもどうしても思い出せない。まあ、時期に思い出す…と思う。
「ベル、食べてみる?」
「(うむ、一口いただいてもいいだろうか)」
「はい、どうぞ」
一番大きそうな燻製を口元に近づけると器用にパクッと食べた。慣れないのか少し顔を顰めていたが直ぐにパッと笑顔になった。
「(とてもこれは美味しいな!)」
「ぶい」
便利な生活になってもまだまだ燻製には頼ることになりそうだなと思いながら私も燻製を口に運んだ。
うん、絶対お世話になる。