2話 天気と心情は反比例
パチクリと目を瞬きさせる。いつの間にか寝ていた。火を切らさないようにずっと起きていようと思ったのに結局一瞬で寝てしまっていた。
「……眠い」
また岩に背を預けて眠りについた。
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「これでよし…!」
昨日寝る前に水の用意だけしていたのでその辺りは問題ない。木で作った水筒に水を入れて蓋をする。少し溢れ出てはしまうがこればっかりは仕方ない。
とりあえず水と濾過器、後刀だけを持って再び森の中を移動していく。
獣道を辿りながら街を探して進んでいく。もしこの世界に私1人以外存在するならだいぶイージーになる。
「…いいものみっけ」
誰かの焚き火の跡。もしかしたら近くに人がいるかもといつ頃のものかを炭などから確認してみたがかなり前のもの。ただこの近くを通る人がいるということはこの世界に人もいるし街もどこかにはあるということだ。
今日はここで休むことにした。昨日みたいに岩に背を預けて眠りにつく。
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「ご飯、食べなきゃ…」
水が確保できたとはいえ食事を取らないと始まらない。
ということでやってきたのは川だ。魚を取る。これしかない。
「これで…いけ…る?」
とりあえず〈天涯〉を鞘から引き抜いてみるけどこれだと串刺しにした瞬間食べる部分がなくなるよね…?
周りをキョロキョロと見てみる。近くにあるのは…、石と木、あときのみ。残念ながら近くにあるものじゃ釣りに使えそうなものも定置系のものも作れない。
「私ならいけるはず…!」
自分の腕を信じることにしてまず近くの木を拾って、前みたいに先を何本も尖らせていく。
それを水面に向かって投げつけられたそれは水の中に消えたのちに浮上してきた。———魚の頭を貫いた状態で。
脳天を貫かれた魚は水面をぷかぷかと浮いて下流へと流れていく。水面に浮かんでいる石の上をぴょんぴょんと跳ねてその魚の元まで向かって、その魚の尾を鷲掴みにした。
「ぶい」
誰もいないけどVサインをする。癖だもん仕方ない……?
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「美味しい…!」
昨日寝た場所まで終わり前の人が使った炭などを再利用して火を起こして魚を焼いた。結局あの後4匹程度取れたので今は2匹焼いている。残りは…。
「できた…」
細かくちぎられた木の破片のようなもの。先ほど取った魚の一部を燻製にしたのだ。
「よし…」
軽く味見をしたけど問題もなし。そのまま火をつけた状態で眠りについた。
朝、鳥の鳴き声で目覚めるとまず昨日取って洗っておいた魚の皮に手をつけた。火の上に木片を敷き、さらに魚を焼く石に木をかけ、その上に葉っぱを置いた簡易的な燻製機。きのみの殻に燻製の魚を詰めて殻で蓋をし、それを魚の皮で包んで完全に密閉する。
「今日も、頑張る…!」
ポケットにそれを入れて再び森の中を彷徨っていく。後は街を見つけるだけ!ゆっくりと軽食を口に運びながら森をかき分けて行った。
のんびりと、散歩をするような感じに森を進んでいく。元の世界に比べてかなり過ごしやすい気候に少し感動しながらも永住の地を見つけるための旅を続ける。理想は開けた場所で近くに地下水を汲めるような場所。そうそうないがそれさえ見つけて基盤を整えればもうあとはぐうたらできる。
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「………」
ちょびちょびと魚の燻製を齧りながら暗い場所の石に腰を下ろした。外では時々光で突然辺りが輝いたり、木が倒れるような音が聞こえる。
楽しいであろう未来を考えていたら酷い目を見た。こういう時に限ってよくないことって起こるよね…。
今外は大雨…。濡れたらまずいので降り始めた直後、とりあえず近くにあった洞窟へと逃げ込んだ。灯りもないので入り口の近く———雨がギリギリ当たらないくらいの位置で大人しくしている。
奥から時々物音のようなものが聞こえるがそれに関してはノータッチだ。…魔物?だったら嫌だし。
一応こういう生き物は殺意とかを感じたら逃げるのか気になるという節もあって殺気をダダ漏れにさせている。
殺し屋さんたちはすぐ気づいちゃうから普段はどんな時でも殺気を抑えているけど、抑えることができるなら放出することもしようと思えばできる。何のために使うのか疑問だったけどこれで逃げてくれるなら使い道が見つかるんだけど…。
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流石に何がいるかわからない洞窟ではそんなに深い眠りにつくことなどできず晴れたタイミングでさっさと洞窟から退散した。
魔物さんが察知できるのかの実験は一旦また今度に回して再び土地探しの旅を始める。ゆっくりと山を下っていくとそれなりに平らな場所に来た。
けどここではない。もっと住みやすい土地に向けてまだまだ旅を続けていく。
えっ?めんどくさがりなのにこういうところは妥協しない理由?
それは単純明快。ここで手を抜いたら後がさらにめんどくさくなるから!ということでこういうところはちゃんとするのです。
「あ……」
るんるんと軽くスキップしながら進んでいると何故か突然辺りが暗くなった。今さっきまで太陽が照りつけてたのに…。
「グルルルル……」
グル…ルルル…?謎の音に反応して上を見た。
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〜洞窟の謎の民〜
雨が降ってきそうだったので狩を中断して洞窟の中に避難して、奥の方でくつろいでいました。お腹は空いてるけど食べ物もないので体力を消費しないように大人しく座っていました。
するとびっくり!外から誰かが入ってきたではありませんか。様子を見に少しぎこちない体を起こして陰から様子を見てみました。すると10数歳であろう小柄な少女がちょこんと石の上に腰掛けて、とても美味しそうなものを食べていました。
好機だと思って影でタイミングを伺っているとあたりの空気の流れが変わりました。まるで彼女は自分以上に強大な魔物のよう。とんでもない殺気と魔力が彼女から放出されているではありませんか。
私もバカじゃありません。自分よりも強いお方に手を出す気はありません。ただ怖いものは怖いので洞窟の奥で緑でガリガリの自分の体を抱きしめるようにして体をガクガクぶるぶるさせながら一夜を明かしました。
2話でかなり進展!……といっても当分はこんな感じの旅なので少しばかり書くのに苦労してます。まあ本人と旅してる気分をゆっくりと楽しんでもらえると幸いかなと思います。