肆の4 泣かせる企画で自縄自縛
《 二〇二三年四月二十九日
株式会社三和
代表取締役社長 小山真様
大江・田中・大宅法律事務所
弁護士 藤間崇史様
zip二二七-〇〇三六
横浜市青葉区奈良町二九一三-二-八〇五
森史×
mobile.〇九〇-××××-××××
fax.〇四五-九六一-二〇七七
mail:××××××@××××××
冠省 藤間崇史弁護士を差し出し人とする二〇二三年四月二十六日付け文書を、日本郵便のレターパックプラス(追跡番号一九七五-五九〇五-三六七二)で拝受しました。
同文書が述べる、当方が求める〔問題解決の意思〕とは、貴職らが「ない」と認識するという〔法的問題〕を指しているのではないことは、従前の当方発文書や貴社への電話、貴社役員ならびに店舗従業員との面談で申し述べてきた通りです。
また、貴職らが「取材」というワードをどのような意味合いでとらえているのか当方には見当も付きませんが、今回の一連の問題に関し、貴社ならびに店舗とそれらの従業員、貴事務所、貴社役員ならびに貴社役員が虚偽告訴したらしい警視庁町田署への取材は、適宜進めております。
ところで、藤間弁護士発四月二十六日付け文書中〔次の事項を通知しております〕は、なにを〔通知〕なさっているのですか? 〔改めて各行為について〕の後の〔止めるよう〕の使い方が、誤っていませんか? あるいは、読点(、)、句点(。)の使い方が、不適切ではありませんか? これでは、スーパーSANWA奈良北店店舗及びその敷地内に立ち入れ、店舗関係者に接触せよ、役員に接触しろ、と〔再三〕〔通知〕していることになりますよ。
いずれにせよ、貴職らに「立ち入れ」とか「接触せよ」とか、あるいはその逆のことを〔通知〕されても〔通告〕されても、そこにはなんら法的強制力が伴いません。当方はなにによっても行動を束縛・制限されません。〔許容され〕るか否かは、貴職らにその判断の権限が託されていません。
さて、貴職らが求める〔質問事項〕〔取材依頼〕について、当方の読解に誤りがないのであれば、これまで文書そのほかで当方が示してきたことに、次の段落で述べる、照明用蛍光灯問題を加えます。このように、取材の過程で貴社にまつわる問題は後から後から出てきます。
取り引き先メディアに当方が提出する類の企画書に準拠する文書を別紙〔企画書〕として添付します。
首都圏発行夕刊紙『内外タイムス』(二〇〇九年廃刊)に寄稿した取材・執筆者である当方署名入り記事コピー(現寸大モノクロ化)のそれぞれ別テーマ分を、参考資料として冒頭の二方に宛て郵送(本状と同封)します。ご査収・参照ください。現在のところ当時と異なり、成果物発表に際し戸籍名ではなく別の雅号を使っております。
正常な対人関係が築けない取材相手の方々には当時も今も、発表の時期や発表媒体に関する情報を、発表後においてもなんら通知しておりませんので、お含みおき願います。
本状は本年四月十九日付け貴職ら宛て文書(ファクシミリ送信)に続くものです。前回同様、不達リスク回避を目的とし、上述した郵送分と並行し関連複数個所宛てにファクシミリ送信(参考資料除く)します。ご不明な点はお尋ねください。 草々》
《 二〇二三年四月二十九日
企画書
● タイトル 「劣化しているのは買い物客か? スーパーマーケットか?」(仮)
● 企画趣旨
東京・南多摩で発祥し関東エリアを中心にドミナント方式でスーパーマーケットを展開する株式会社三和(本社・東京都町田市、小山真社長)は、その土地柄であろうと企画立案者は思料するが、従業員と客層が極めて悪質。自身の程度が低レベルであるがゆえに客は従業員の悪辣さに気づかず、同様に、従業員は客の悪辣さに気づかない。
本企画は、文化人類学、民俗学、比較社会学の観点から、同社展開全エリアの、他社含め各種事業所ならびに消費者を対象に、彼らの「質の程度」を考える。
● 企画背景
スーパーSANWA奈良北店(横浜市青葉区)では、陳列前の商品が入った段ボール箱、空箱(畳んだ状態のもの含む)を、従業員が足で蹴って売り場フロア内を移動させる。同様に、買い物客は商品を選びながら、あるいはレジでの会計を待ちながら、床に置いた状態の店舗のかご(バスケット)を足で蹴って移動させる。会計を待つ列では、スマートフォンを操作しながら(見ながら)であることが多い。
会計時にレジ係は買い物客との世間話に夢中で会計作業が進まず、長蛇の列が解消しない。二〇二三年二月三日、企画立案者の会計作業中、レジ係は何度もレジを離れ、さらにレジに戻ってからもどこかに電話をかけ、会計が一向に進まない。これについて店長(当時)は、「恵方巻きだから」と店や会社やレジ係には瑕疵がないことを主張する。
同三月二十九日には、現店長が、商品の密封されていない惣菜売り場で、陳列台上の照明器具(蛍光灯)を、たまったほこりをぼろぼろ落としながら交換する。これについて当該店長は、「(客の少ない)アイドリングの時間帯だから」と、やはり瑕疵を認めない。
惣菜売り場については、従業員が、値札ラベルのバーコードを読み取るハンディ機材をしゃもじように使い、売り物の【密封されていない】惣菜を、がさがさ移動させる。
客の前で(客の目を気にせず)これらを敢行するということは、同社、同店、従業員はこれらを問題だと認識せず、客も問題だと認識していないということの証左だ。
● 発表媒体 未定。
● 発表時期 未定。
● 企画立案 横浜市青葉区奈良町二九一三-二-八〇五
森 史×
電話 〇九〇-××××-××××
ファクス 〇四五-九六一-二〇七七
メール ××××××@×××××
了》
取材をしたり原稿を作成したりに当たり、「企画書」をおれが初めて外部に提出したのは、三十六歳になってからだ。それまで勤めていた報道機関たる新聞社をドロップアウトし、専門家が読む専門誌を発行する出版社に転籍した。
そこでは、取材対象イコール広告主であること多く、また、扱うテーマが高度かつデリケートな側面もあり、民間企業に取材を申し込むとほぼ一〇〇パーセント、「企画書を出せ」と言われた。原稿、下刷りをチェックさせろという、新聞社にいては想像もできない条件を突き付けられたこともある。
彼らも報道機関相手には、そんな無茶を言わないはずだ。つまり、おれの所属する出版社は報道機関ではなく、発行する出版物も報道媒体ではないと認識されている。
加えて、取材窓口の広報担当部署が、インタビューなどに応じる人選をし、かつ、出版物への掲載について上層部に根回しし、了承を取り付ける必要があることからも、企画書が求められた。
新聞社にいたころは名刺が企画書代わりだしおれら記者は会社の看板を背負っているから、取材対象者のだれもそんなおかしなことは言わない。そんなまどろっこしいことをやっていたら、ニュース取材・報道ができない。
ただ、最新ニュースに依存しない長編連載を書く際、特に複数の記者が取材、執筆を分担する場合は、チームの問題意識統一を図るため、社内用、ことにチーム員用に企画書のようなものを作成し関係記者らに配る。これにしても、取材先には提出しない。見せたりなんかしたら、こちらの意図が筒抜けで情報漏洩を心配しなければならなくなる。
三十九歳で勤めそのものを辞めフリーランスとして活動を始め、映像業界にも手を出し足を伸ばした。報道・ドキュメンタリー番組が専門の製作会社と業務委託契約を結び、番組一本当たりの報酬で、在京などの民間テレビ局で放送するための素材を作り、納品する。
そして、改めて知った。テレビの世界では、企画書が不可欠。しかも、画面に登場する取材対象向けだけではない。放送局向けの、局ディレクターや局プロデューサーに読ませる、彼らのOKを取り付け視聴率の高い質の良い枠を確保してもらうための企画書がいる。それを書く能力が求められる。
活字記者出身のおれは、テレビマンを感涙させる企画書を作成する技を、すぐに習得した。所属する番組製作会社において、おれの企画書は採用率が高く、企画が次々に採用される。だから、複数の作品に同時並行で取り組まねばならず、多忙により自身の首を絞めるだけでなく、それぞれの仕事が手薄になってしまい取材先の期待に応えられない、かえって迷惑をかけてしまうという葛藤に常に陥り、罪悪感にさいなまれた。
だから、企画書の作成でおれは、あえて力を加減する、採用に至らぬよう調整する技も覚えた。
株式会社三和社長、小山真と、大江・田中・大宅法律事務所弁護士、藤間崇史に送った企画書は、でたらめだ。こんな書きぶりでは、通る企画も通らない。
しかし、それでいい。テレビ時代に力を加減したような故意でやっているわけではない。双方に対し宣言しているように、彼らが拒んでもおれは取材を続けるし、いずれかの媒体で発表する。そしてその媒体では、企画書なんていらない。原稿がすべてだ。
この方針を彼らが理解できないとしたら、それは彼らの能力に起因するもので、おれにはなんの瑕疵もなく、責任も追及されない。
(「肆の5 ピースの足りないジグソーパズル」に続く)




