表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/57

エピローグ


ケンジの目が覚めたのはそれからかなり後のことだった。


あの戦闘のことはよく覚えていない。エナキ曰く、あの後、ケンジを連れて無事地上まで戻り、ダイゴが持っていた第三の拠点にケンジ達を置いた。そのまま選抜パーティの全員が合流し、エナキと共にエストワードを倒しに向かった


ただケンジがその話をすると、皆が口を揃えてこう言われる。ケンジが<<アッシュ・ベヒモス>>をほぼ倒したということ。おかげで街ではちょっとした伝説として語り継がれている。そんな馬鹿な、思ったがドーバンがその報酬として、本来の5金貨であったが、10倍である50金貨を渡してきたのだから現実味が帯びてきている。


燈とエストワードの戦いはなんとなくケンジの耳に入っていた。しかし、納得がいかず暇そうにしていたエナキを連れ出して、ケンジ達は墓地に来ていた。天気は快晴である。


「つまり、前に召喚されたってことか?」


エナキは頷いた。エナキは今回に召喚された燈ではなく、前回召喚された燈だったということをケンジはここで初めて知った。通りで色々なことを知っていたわけである。


ただ、あまり表に出しすぎるとエストワードに不審がられる。故に、ケンジに打ち明けることができなかったんだ、とエナキは楽しそうに話すが、ケンジはあまり信じられなかった。言い訳にしか聞こえない。


「ここには前の僕の仲間が眠っているんだよ、みんなには内緒だけどね」


「….お前のその秘密癖どうにかならないのか」


「大切なものは、自分だけが知っておけば僕は満足なのさ」


やがてモモカとミキジロウがやってきた。


モモカはエナキのそばに近寄った。前まではケンジの側に来たのだが、やはり本物の兄の方がいいのだろう。きっとモモカは無意識に兄を求めていたに違いないとケンジは思った。ミキジロウは、一時期多くの燈が亡くなったのを聞いて落ち込んでいたが、今は相変わらずの元気っぷりだった。腕も回復して、もう少しで動かせるようになるということだった。


3日後、ケンジ達はミエーランを旅立つ。


脅威は去ったというわけだが、いつまでもこの街にいるとまたどこで何が起こるか分からない。今回で魔族の存在が明るみになった。人々は燈の英雄としての復活を待っている、とドーバンに言われた。


やがて、選抜パーティも現れた。彼らは今日、ミエーランを出発することになっている。多分お別れの挨拶だろう。別々の出発になったのは悲しいが、リーダーの意向だというのだからしょうがない。これかドーバンと共に王都に向け出発するのだという。長い旅路になるそうだ。


ミライがケンジ手を振って、こちらに寄ってくる。草原と後ろには大きな海を背景にして。


その時だった。


ケンジの目に違う景色が飛び込んできたのは。


同じような蒸し暑い日。背景が草原と後ろには大きな海なのは変わらない。真っ直ぐ広がる一本道に奥には陽炎がある。そこにミライが白いワンピースと麦わら帽子を着て、ケンジに向かって手を振っている。


その幻想とも言えるような現象は長いといえば長いし、短いといえば短い。


しかし、明らかに今のいるミライとは違った。


ケンジはしばらく、言葉を失った。


―――今のミライはこの世界のミライじゃない。見えたのは前の世界の未来…。


別の道を歩むことになるかもしれない。ただ、ミライが前の世界の手がかりが欲しいように、ケンジもこれからミライを追いかけなくてはならないだろう。前の世界の、大事な記憶を追いかけるために。


どんな出来事がこれから待ち受けているのか、ケンジは期待で胸が溢れた。もう前の世界のことなどケンジは忘れていた。


ケンジは目の前のミライを見ている。この世界の先を見ている。


ケンジは、ファンタジーの中でも未来を見る。

ここまでご愛読いただきありがとうございます

評価・ブクマ・いいね等お待ちしております

本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 完結おめでとうございます。 一気に拝読させて頂きました。 ケンジの最後の表現。目の前のミライを見るとファンタジーの中でも未来を見る。が好きな表現だなと思いました。 楽しく読ませて頂きあり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ