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屈辱を晴らすその燈②


燈とエストワードの戦いは後にミエーラン町全体が驚くほどの大きな話題となる。

そのエストワードは空を飛んでいた。激戦の末、体はボロボロであった。


ドーバンが編成した選抜パーティの力は想像以上に凄まじく、聖水に力を奪われていたこともあって本領が発揮できなかったのだ。魔族、特にエストワードの体はアンデット系に分類されていたために効果は抜群であった。


魔族の姿になったエストワードはある建物の屋上に降り立った。


あと少しで上手くいくところだったのだ。醜い燈を全滅にできるところであったのだ。魔族の世界を広げるため、人間の世界を滅茶苦茶にしてやりたかったのだが。


それもどれもこれも、1人のせいだ。1人しかいない。こんなことを仕組んだのは。


「エナキぃ…」


その名前を呟いた。エストワードは月に向かって叫んだ。


「エナキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



********


「呼んだ?」


「かはっ…?!!」


その声が聞こえた時には、エストワードの体に短剣が突き刺さっていた。硬直した体に追い打ちをかけるようにして聖水が降り注ぐ。エナキだった。エナキが背後からエストワードを刺したのだ。エストワードは地面に倒れた。聖水でどんどん力が失われていく


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…貴様ぁぁぁぁああああ…..!!!」


「どう、選抜パーティは? 凄かったでしょ?僕がドーバンに提案したんだよ、手紙でね」


エナキは言った。


「さてと」


その目には怒りが込められている。エストワードは苦しみことしかできない。


「お前は僕を本気で怒らせた。僕の友人を殺し、妹を人質にした。…情けをかけるつもりはないけど、流石に僕も人間さ。君に選択肢を二つあげるよ」


エナキはある紙をエストワードに見せる。そ子には魔力が込められている。


「一つ、これはお前が奴隷契約に用いた魔法が込められている。僕にかけた魔法と同じさ。僕と契約して、奴隷になってよ」


エナキの指がもう一つ上がった。


「二つ、お前が殺した燈のように短剣で滅多刺しにされる。僕に殺されるんだ、今ここで」


倒れ込むエストワードの顔を、エナキは足で踏みつけた。地面に擦りつけるように。


「さぁ…選ばせてあげるよ」


侮辱された気分だった。もっともエナキは狙ってやっている。この間も注がれる聖水はエストワードの顔に辺り、体を溶かして、エストワードを弱らせていく。



無論、受け入れる気はなかった。プライドの高い魔族に、人間に馬鹿にされるのは耐えられなかった。エストワードは最後の力を振り絞ってエナキを殺そうとした。爪でエナキの体を切り裂こうとしたのだ。


しかし、想像以上にエナキは早かった。これは選抜パーティの誰よりの早かった。

そして短剣のスキル、<<風神・ユナイトテンペスト>>。エストワードの体を切り裂いた。


「うわぁぁぁ…!!!」


「あぁ…これじゃもう契約なんてできないね…」


エナキは投げ捨てるようにいい、持っていた紙を破り捨てた。そしてエストワードの背中に乗った。


「お前の強さは一体…お前の賢さは一体…」


「まず、今のこのスキルを見て何も思え得ない辺り、君の負けだよ」


エナキは続けた。


「存分に苦しんで死んでいってよ」


エナキはまずエストワードの羽を剥ぎ取った。それから指一本ずつ、短剣で切断していた。スキルを発動しているエナキにとって切断するのは簡単であった。足、腕と四肢から短剣を刺しては抜き、刺しては抜きを繰り返した。


その最中でエナキは言った。


「僕は強いわけじゃない。賢さは、まぁまぁあるかもしれないけどね。まぁ簡単な話だよ」


エナキはエストワードの耳を切り裂いた。よく聞こえるようにと。耳元で囁いた。


「2回目なんだ。お前の吐き気がするようなギミックを味わうのがさ」


やがてエストワードは動かなくなり、魔力の粒子となって風に乗って消えていった。

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