絶望で消えそうになるその燈②
ケンジは教会を飛び出した。そして、無我夢中で走った。結局教会の中を全て回ったのだが、ミキジロウは見当たらなかった。モモカも、もちろんエナキもどこにもいなかった。雨は強く、雨音が街の中を支配していた。昼というのに覆われた雲が分厚いのかやけに暗い。
「はぁ、はぁ…」
次にケンジが当てにしたのは選抜パーティだった。ダイゴだ、ダイゴは生存確認されていた。ダイゴに接触すればなんとかなる。モモカも行方不明になっている以上、燈の宿舎には誰もいないだろうと予想した。故にザボ爺の家。ダイゴが滞在していたスキル屋の方に向かえば確実に会えるだろうと思ったのだ。
ダイゴがいなくてもザボ爺はいるはずだ。おそらく何かしら知っているはず。
体に鞭を打ち、泥だけになったまま丘の上を全力で駆け上った。薪割り場を超えて庭へと入り、ケンジはドアを開いた。
「ザボ爺、ダイゴさんは!?」
ドアを開けるなり、ケンジは叫んだ。しかし、部屋には誰もいなかった。
そんなことはおかしい。少なくともザボ爺はここら出ることは滅多にない。いや、そもそもどうして鍵が閉まっていなかったのだろうか…。
ふと机の上に紙が置かれているのをケンジの目に入った。置き手紙だ。
宛名は書かれていない、しかし『この家の主人を知る者へ』と書かれている。
「!」
間違いない、ダイゴが書いた字だと思った。
ダイゴは間違いなく生きている。そうケンジは思って封筒から中身を取り出した。
そこには2枚の紙が同封されていた。そして、ケンジは絶望した。誰もいない部屋で。1枚目はダイゴの字だ。2枚目は誰の者か分からない。
1枚目。
『ザボ爺は殺された』
2枚目。
『燈を無断で支援した者、当然の報いを』
窓の外には確かに盛り土があり、花が添えられていた。それに気づいたのは、ケンジがこの家を去る時であった。
そして遠くで、誰かがニヤリと笑った。




