絶望で消えそうになるその燈
絶望パート、あえて端的にしてます
探し始めたとはいえ、ケンジには手がかり一つもなかった。故にきっとケンジと同じようにベッドで倒れているに違いないであろう、ミキジロウから探すことにした。意識不明であるなら自ら動くことはできないはずだ。
教会は想像以上にかなり大きかった。外は雨が降っており、どの部屋の中も蒸していた。濡れた石畳の上をケンジは裸足で走り回った。中庭に出れば大きな塔が何本か聳え立ち、どの塔から回ればいいのかケンジは戸惑った。とりあえず1番近かった塔から中へと入ると、通路には部屋と繋がる扉が開けっぱなしの状態で多く並び、どの部屋の中もケンジが寝ていた部屋と同じように負傷者で溢れかえっていた。
「ミキ!いたら返事をしてくれ!」
どの部屋に入ってもケンジは叫び続けた。返事がなければ誰に断りを得ることなく侵入し、ベッドの上にいるそれぞれ顔を確認していく。時には、治療する者にこう尋ねた。
「あの!人を探していて、男で背丈は俺よりも少し大きくて、それで…それで右腕の負傷が激しいらしくて…」
しかし、多くの者に首を振られた。治療した人を覚えていないほど負傷者がいる、とまるで裏で口合わせしているかのように皆に告げられた。中には「騒ぐんじゃねぇ!」と怒鳴られたりもした。でもケンジは全部、全部無視した。無視して、走り、とにかく探し回った。
同時に、白い布が被さった患者は見て見ぬふりをした。それがミキジロウだった時、少なくともケンジは耐えられそうにない。いや、あの紙には負傷が激しいだけで、死亡とは書かれていない。そんなはずはない、と否定し続けた。
知人を見つけたのは別館を3つほど回った後で、ようやくケンジの歩みは止めた。綺麗にされていた足は濡れて、泥がついてた、体力が戻り切っておらず、もう走るだけでもかなり辛かった。
見つけられたのは運が良かった。ふと、治療する者が離れた瞬間、知った顔が目に飛び込んできたのだ。それはマナブだった。ケンジと<<アッシュ・ベヒモス>>を戦った、あのマナブだ。ケンジは安心した。
「マナブさん…」
マナブの顔はやけに綺麗だった。呼吸も落ち着いているのか、どこにも異常は見当たらない。良かった。良かった。ケンジは心の底から思った。
一人、先ほど治療していた者がケンジに気がついて声をかけてきた。成人の女性で王族に仕えている者ということは服装で分かった。気品がある。
「このかたの知り合いですか?」
「は、はい...!」
「最善を尽くしましたが、たった今息を引き取られました。この中大変申し訳ないのですが、紙の束を持った我々王族の兵士に死亡とお伝えください。次がありますので、それでは」
その人は去った。マナブの顔には白い布で被せて。




