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真実を知る燈たち


その貴族の名はカリス・エストワードと言った。


護衛の兵士1人もつけずに、エストワードは例の魔法陣の扉を開け、店へと入ってきた。


一悶着あったケンジ達の雰囲気、そしてやや赤く腫れたダイゴの顔を見て首を傾げたものの、いかにも接待には慣れた様子でケンジ達を席へと案内した。正確には指示を出して店主に案内をさせた。


顔からして大人であろう。30代前半のところだ。緑色を軸にしたいかにも貴族が好むような服装。どう考えても暑い中でするような服装ではない。髪は後ろにきっちりと上げられ、手には白い手袋をしている。


「いつものやつを頼む」


エストワードは店主にそう言った。店主は深々と頭を下げて注文を受理した。


貴族は体を鍛えたりしない、とケンジは先入観を持っていたが、エストワードの体格は良かった。服に覆われていても、腕の太さといい胸板といい、鍛えられているのが窺える。ダイゴと同等、とは行かずともそこまで劣っていないように見える。


もしかしたら腕にも自信があるのかもしれない。もっとも彼は手ぶらで来たようで、武器は何一つ見えないが…。


妙な空気だった。少なくともケンジ達はかなり警戒している。エストワードは、ケンジ達に警戒されていても気にしている様子はない。むしろこの空気を楽しんでいるようにも思えた。


「この店の雰囲気、私は結構好きでね 」


昼間なのにも外の光は一切なかった。この場所は全てを締め切っているため、蝋燭の火だけがユラユラと明かりを照らしてくれている。石壁には数倍大きなケンジ達の影が描かれている。


燈と貴族。両者に挟まれたローテーブルにはボトルが数本置かれた。すぐさま栓を開けられ、中身はグラスに注がれた。ボトルについて一通り説明を受けたがケンジだが、何一つ分からなかった。とりあえず周りに合わせて相槌を打った。


味も、少なくともケンジには合いそうになかった。なんとも言えないこれまでに経験したことのない味がした。異様な苦味…これがいわゆる大人の味なのかもしれない。


その隣に座るダイゴはグラスに手を触れようともしない。奥のティアは慣れたように口をつけている。というか、飲み干しているようにも見える。ヤケクソに…。


そんなティアの飲み方を気に入ったのか、エストワードは薄く笑った。口調にも上品さというか、波風立てないような静かさ、けれどもどっしりとした重みがある。


「お気に召したようで何より。これは普通では手に入らない代物でね、東側の一級品なんだ。ミエーランのような西側に流れ込んでくるのは珍しいのに、ここの店はこの時期になると変わらず仕入れてくれる。私のために、ね」


エストワードはダイゴと向き合うように座っていた。3人掛けのソファ座るケンジ達とは違い、同じ大きさのソファに1人で堂々と陣取っていた。グラスを手に取り、いきなり飲むのではなく、ゆっくりと中身をかき混ぜるようにグラスを動かし、鼻を近づけている。どうやら飲み物の匂いを楽しんでいるみたいだ。


「まず、話を伺いたいのだが…どうして手紙に応じた? ほとんどの貴族は返事すらもなかった」


ダイゴが尋ねたが、エストワードの動作は何一つ変わらなかった。ようやくグラスに口をつけた。というのは正しい言い方でなく、ごく僅かな量を口に含んだと表現した方が良さそうだ。注がれた時と量がほぼ変わっていない。


「まぁ、そう慌てるな。そうだな…。一つ、君たちにとっても良いことだから教えてやろう。この世界の貴族は、せっかちな奴は嫌う。何事もゆっくり行い、かつ丁寧だ。その動作に、言動に何一つ間違いがあってはいけないんだ。なぜか? 単純な話さ、周りの評価が下がるからだ」


エストワードが横に目をやると、店主が立っていた。この店主は先ほどから一言も喋らない。ベストを着て、黒縁の眼鏡から先がよく見えない。両手にはそれぞれ料理が握られ、テーブルに置かれた。これまたかなり上品な盛り付けで、ミキジロウにこの飾り付けできないだろうな、とケンジは思った。


「お腹が空いているだろう。用意した。十分に楽しんでくれたまえ」


意図せずエストワードと目が合い、するとエストワードはケンジに手を差し伸べてきた。どうやら先に料理を取っていい、という合図だったらしい。


ケンジは軽く会釈し、皆の分量を考えながら自身の小皿に装った。なるべく飾り付けを崩さないよう、端の辺りから。端の辺りから。端の辺りから…。


「話に戻るが、貴族、我々の世界にとって周りの評価、評判は命そのものだ。自身の未来が豊かなものになるか、お粗末なものになるか…全て関わっていると言っても過言ではない。貴様ら義勇兵で言えば…そうだな、己の力量だ。ほら、力のない者はすぐ死んでしまうだろう」


「それは…そうです」


ケンジは答えた。力のない者は死ぬ。貴族の世界では評判が悪い者は死ぬ、ということだろう。自身の世界を語ったエストワードだが、気が変わったのか急に方向性を変えてきた。


「…まぁ、たまにはいいだろう。こちらのマナーを押し付ける気はない。マナーというのはお互いが気持ちよくなるものであり、最大の違反行為はマナーを知らぬ者を揶揄したり指摘したりすることだ。君らには君らの世界の、私には私の世界のやり方がある。…おっと、嫌味に捉えられてしまったかな」


「いいえ、ご寛大で。感謝するわ」


ティアもそういい料理に手をつけた。途中、取った量が少ないとケンジの皿にサラダをモリモリ追加しながら。食事に手をつけないのはダイゴとエストワードだけになった。


「君は、手をつけないのかね?」


「あいにく腹は減ってない」


ダイゴの調子は何一つ変わっていない。相手が貴族であるにも関わらず、ティアのように取り繕おうともしない。既に上品な味を口に含みながら。ミキジロウの料理なんてもう口にできないかもしれない、なんて考えているケンジとはまるで違う。


エストワードの眉がピクリと動いた。


「私はここに一人で来た。君に送った紙、その紙がなければここには誰も入ることができない。加えて、紙持たぬ者は扉すら感知できない魔法を施している。いきなり誰かに襲撃されるようなこともない。もちろん、外で待ち伏せたことなど私は何も指示を出していない。ここまで言わせて不服か?」


「俺とティアはエルバート家、王族が追っている選抜パーティの一員だ。俺たちを差し出せば、その評価とやらは上がっていくんじゃないのか」


抜けたクセして、とティアの声が聞こえた。本人は小声で喋っているつもりだろうが全然小声じゃない。むしろ丸聞こえだ。ケンジは思わずダイゴとエストワードの顔を見たが、二人は気にしていない様子だった。互い向かい合っている。今にも剣を抜いて対峙しそうだ。


フハハっと軽くエストワードが笑った。嘲笑とも受け取れるような笑い方であった。


「私もプライドが高い…と言われるが、ハハっ、なるほど。他者から見れば、こうも鬱陶しく映ってしまうのか。これからは謹んだ方が良さそうだ」


「こちらの世界のやり方には口を出さないじゃなかったのか?」


「ふん、戯言を。貴様の性格の問題であろうに」


「取り繕って、魔物は倒せないんでな」


どちらも一歩も譲らない様子であった。最終的には「好きにしろ」とエストワードが諦めたような形で一旦の話し合いが終わった。ケンジとしては、ひとまずエストワードが選抜パーティを捕える意思がない、これだけでかなり気持ちが軽くなった。


さらに料理が運ばれてきてテーブル一杯に並んだ。店主が小皿に料理を盛り付け、それをエストワードが1回受け取ったが、すぐ店主に返した。どうやらエストワードは飲み物だけで食事は取らないようだった。今も表情がよく見えない店主はお辞儀をして下がっていった。


ケンジ、ティアの2人で料理を楽しんでいく。 エストワードは飲み物だけを楽しんでいる。特段これといった会話はなく、エストワードからの料理の解説を聞いていた。小難しく、頷くので精一杯だったケンジに対して、ティアが熱心に会話の相手になっていた。相槌を打ったり、時には質問を投げ返したり。


それがかなり気に入ったのか、エストワードを徐々に饒舌にさせていった。この野菜もここらでは珍しく売れば良いお金になるだとか。サラダの中のある果実については、この時期旬で美味しいものだとわざわざケンジ達2人の小皿に、指示を受けた店主が、入れてくれた。


「…」


それでもダイゴは一向に手をつける気配はなかった。手を組んでひたすらエストワードを睨みつけている様子だった。ティアが『代わりに取ってあげるから』と手をつけるように促したがダイゴは何も答えず、姿勢一つも変えない。流石のケンジも気分を悪くし手を止めようとしたが『ケンジ、問題ない。お前は食べろ』とダイゴが言われた。だから、遠慮せず食べることにした。指示を受けたのだからしょうがない。しょうがない。


対するエストワードは時折ダイゴを見て、楽しんでいる様子だった。自分達の和に入れず、ただじっと我慢しているダイゴを憐れむような目で見つめていた、そんな感じだった。


話が本題に入ったのは、あれだけあった料理がすっかりなくなり皿を下げた後だった。口直し、ということでティーカップの中に茶色の液体が入っている。『紅茶』だとエストワードは言った。この世界の飲み物かとケンジは飲んだ。また少し苦い味が満腹となったお腹へと流れていく。


「燈、は知っているよな?」


「あぁ、もちろん」


すっかり上機嫌になっていたエストワードは、この時にはダイゴが口を開いたことにも気づかない様子で受け答えていた。


「この世界の救世主として召喚された者のことだ。エルバート家代々に伝わる究極召喚により、数年に1度だけ、どこに通じているのか分からない異世界からやってきた人間のことで間違いない」


いきなり情報が多すぎた。ティアが身を乗り出すようにして聞いた。


「待ってください…!数年に1度だけっていうことは、召喚は定期的に行われている、ということですか?」


エストワードに頷いた。


「不定期であるが時期的には規則性がある。ちょうど、我々貴族が避暑する前の辺りでな。今では100人ほどだが、当初は数人程度だったとの言い伝えだ」


「え?!」


「そこまで驚くことなかろう。私はエルバート家の究極召喚を管理する者の1人、カリス・エストワードだ。王宮内でもそれなりの地位と信頼を築いている。君たちに言えば、そうだ、ドーバンは私の直属の部下だ。そもそもある程度目星をつけて私を呼び出しのではないのかね?」


瞬間、今日何度目になるか、ティアがダイゴを睨みつけた。ダイゴは気にしている様子はないが、いつ殴りかかってこられてもいいように準備している。エストワードとティアの位置からは見えないかもしれないが、ケンジからは丸見えだ。


それにしてもエストワードの話は驚愕であった。てっきり自分達が初めて召喚されたものだと思っていたとケンジは思っていたのだが。


「ということは、先に召喚された燈にもーーー」


「残念だが、いない」


「い、いない…というのは?」


「死んでしまったということか?」


エストワードの代わりにダイゴが答える。不敵な笑みをエストワードが浮かべた。


パン、パン、パン。


間隔が空き、乾き切った音がやけに広がった。『そうだ、正解だ』と言わんばかりに拍手をしたのだ。まるで他人事のように、少なくともケンジにはそう捉えてしまった。


「昔と今では状況がまるで違う。昔ももう数百年以上前だ。当時の救世主は体内の魔力が豊富でここらの魔物に引けを取らないほど脅威なほど強力だった。しかし、時代は進み、空気中の魔力が濃くなり連れ、今度は魔力を喰う魔物が力をつけた。救世主の魔力を上回るほどの魔物が大量に溢れかえったのだ。当然、生存率も低くなる」


「皆、魔物に殺されてしまった…と?」


「全てを把握しているわけではないが、そういうことになる。究極魔法を管理してここ数十年以上、召喚時期になると必ずこの街に足を運んでいるが、多くの燈の訃報ふほうが私の耳にも入ってくる。特に召喚された年には、な。その通りで、召喚されたほぼ全員の燈が魔物との戦闘で亡くなっている」


「…」


「だからだ。『燈』というかつて英雄を指し示すその単語は、いつの日か市民に浸透しなくなった。貴様らがよく気づいているはずだ。誰もが誰も、燈に助けを求めているわけじゃない。人によっては忘れられている、もしくは存在すらも知らない。それは、そうだ。燈の寿命が短いからだ。広がる前に、消滅する。もう燈というのは、かつての英雄。世界にとって、今は忘れ去られた存在なのだ」



しばらく誰も口を開かなかった。気づけば店主が後ろへと下がっていた。ここにはケンジ達しかいない。


「私たちはそれじゃ、無駄に召喚されたってことですか?」


「そうではない。燈をエルバート家は必要としている。自国を守るための戦力としてな…。だが、王都まで辿り着く奴はこの数十年いない、という話だ」


じゃあ、自分達もいずれ死んでしまうというだろうか、とケンジは思った。燈は人々に忘れられてしまうほど、かつての英雄となっているというならば。気づけば握りしめていた拳の中に汗を滲み出ていた。


「なら、今回のケースは珍しいということか? 明らかに誰かに殺害されたケースだ、魔物じゃない」


ダイゴが話を切り替えた。


「あぁ、君が手紙に書いてあったことか。それが本当なら確かに珍しいケースだ。貴様らの管理はドーバンだが、奴の上司として、究極召喚を管理する者として、是非とも話を聞きたい」


「数十日前、ある燈の1人が虐殺された。場所は街から離れていない西側の森、時間は夕方頃だったという」


「うむ、それこそ魔物の仕業ではなかろうか?」


自分と同じようなことを聞いた、とケンジは思った。


「いや、明らかに短剣のようなもので主に胸を複数回に渡って刺されていた。ここら近辺で短剣を握るような魔物はいない。そして仮に、魔物に殺されたとすれば魔力を欲する。殺した後にすぐ奴らはその人肉を喰うはずだ。だが、亡骸は喰われていた様子はなかった。代わりにあったのは刺し傷だ」


「なるほど…それは妙だ」


「 単刀直入に言わせてもらう。殺した奴は王族や貴族側にいると思っている」


「ちょっと、ダイゴ!」


ティアが立ち上がってダイゴを止めようとした。しかし、それでも姿勢を変えない。ダイゴは言葉を選びながら慎重に話していく。


「ティア。俺たちには時間がない。今の話が本当なら、俺たちは魔物によって死ぬ可能性が高い。なら、他の敵は早いうちに明確にしておきたい。違うか?」


「そ、そうだけど…」


順序ってものがあるんじゃない、とブツブツと呟きながらティアは座った。どうやらダイゴの勝ちらしい。今回は。ダイゴはエストワードを視界から外していない。


「そう言うことだ、何か心当たりがあれば教えて欲しい」


「断る」


エストワードは確かにそういった。ケンジ達は一瞬、凍りついた。

だが、すぐに、くくく、と不気味にエストワードは笑い出した。


「と本来なら言いたいところだ。貴様は私のもてなしを拒んだ。なにゆえこちらが教える理由があるというのだ」


「…」


「ふん、都合が悪ければ黙りか…。まぁいい、そちら2人に感謝するんだな。実に私を楽しませてくれた、気分がいい」


エストワードが葉巻をふかし始めた。ケンジ達はエストワードが話してくるのを待ち続けている。


「元より私は君たち側だ。そうじゃなければ既に拘束している」


「…!」


「そう身構えるな…。私は、それなりに長くエルバート家に仕えるものだが、正直な話、エルバート家は衰退した。財政力も権力も他国に劣り始め、この件でさえ今は究極魔法を維持するので手一杯だ。もっと話せば、自分の近辺である兵士でさえ、物資に格安とはいえお金を払ってもらい回収しなければならない始末」


ケンジに心当たりがあった。エナキとのマーケットに出かけた時のこと、品物の価格がやけに低くて驚いたことがある。その理由の一つとして王都からの支援物資だということをケンジは聞いていた。何故支援物資にお金を、と当時エナキと話をしたが、まさか王族側の財政難であったからだとは予想外だ。


「お前達、『燈』は実に可哀想だ。勝手に召喚され、記憶を失い、そして義勇兵とされ野放し。上層部が、『燈』が王都まで辿り着けず、息絶えてしまうという事実に対策を打ち始めたのもここ数年の話。なんとか訓練をつけさせるようになったが、それだけでは到底生き延びられん。世界の救世主だ、もっとより丁重に扱うべきだと私は思うがね。だから貴様の話にわざわざこうして出向いてやったのだ」


不意にエストワードは指一本たてた。


「燈の件、貴様の話を聞いて分かったことがある。それを教えてやる。ただ一つ条件を飲んでもらう」


「それは?」


ダイゴは間髪入れずに尋ねる。


「近々王族の兵士側で大きな討伐がある。その討伐に参加すること。これが条件だ。何、安心したまえ。私から便宜を図ってやる。選抜パーティも参加できるようにな」


「その魔物っていうのは?」


「追って連絡がいくだろう、もうすぐだ」


ダイゴは頷くしかないと思ったようだ。わかった、と短く言った。エストワードは不気味に笑みを浮かべた。


「では貴様からの質問の答えはこうだ。王族側の兵士と貴族が『燈』に手を下したとは思えん」


「なぁ?!」


それはあまりに卑怯だ、とケンジは思った。今の話の流れだと、その犯人を教えてくれる流れだと思っていたのだ。


「根拠があるのか?」


「ある。この世界で人間の死体を森に置くのは御法度だからだ。これは盗賊でさえいかなる悪党でさえ必ず守る。何故なら死体は魔族の仕業によっていずれアンデッドとなる、そうなればかなり脅威だ。倒れない、討伐するにも一苦労する。だから皆、必ず遺体を燃やすか、聖水にかけて処理をする。もしくは魔法を施すか…そういった処置はされていなかったのだろう?」


ダイゴは頷き肯定した。エストワードは続ける。葉巻は吸い終わり、灰皿へと雑に捨てられた。再びグラスの中の飲み物を回す。楽しんでいるように。


「いずれにせよこの世界の者なら必ずそうするだろうな。絶対森の中に置き去りなどしない。ということはーーー」


「待って。じゃあ、その通りを守らなかったということは…」


エストワードの言いたいことが分かったのか、ティアが驚きの声をあげている。ケンジもなんとなく分かった。その常識を持たぬ者などある『団体』しか考えられない。記憶を失った団体。


「私から言えるのはそういうことだーー―」


「君らの仲間だろう、殺した奴は」


燈が燈を殺したということになる。


エクリュ・ミエーラン来て139日目のことだった。



********


ケンジ達が去った後だ。店主が尋ねてきた。


「いいのですか?あそこまで話をして…」


「構わん、どうせ奴らに時間はない」


そう言った。そして思い出したように、服から巾着袋のようなものを取り出した。これまた煌びやかである。


「これを渡しておいてくれ。対象はお前から見て手前に座っていたあの若い小僧だ」


店主は巾着袋の中を見た。数えきれないほどの金貨が入っていた。


「確かに」


店主は深々とお辞儀した。それからエストワードは皿を見た。ケンジ達の料理が乗っていた皿だ。


下下の餌など食えるか、とエストワードは思った。


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