表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『11月15日2巻発売!』願ってもない追放後からのスローライフ?  作者: シュガースプーン。
第三章三番弟子は冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/330

89話犯罪の証拠

ゲートを潜ってギルドに戻って来た孝久と和馬は息も絶え絶えの様子で会話もせずに息を整えていた。


「孝久、分かってるよな。お前も共犯だぞ?」


呼吸が落ち着いて来た和馬が孝久にそう言うと、孝久はハッとした顔で和馬の方を見た。


「当たり前だろう。お前もあの時志歩を助けようとせずに一緒に、いや、我先にと逃げ出したんだから」


「な、そんな、俺は」


「大丈夫。黙ってれば誰も気にしないさ。ダンジョンで人が死ぬのなんてよくある事だ。

志歩は俺たちを逃がす為の尊い犠牲になった。良いな?」


「お前、良くそんな事、お前の彼女だろ?」


孝久の言葉に和馬はフッと笑って答える


「大学での恋愛なんてお遊びだろ?これからもっといい女にも沢山出会うさ。

志歩も、大好きな彼氏を守って死ねたなら本望だろうさ。そうだろ?親友」


孝久は和馬の言葉に背筋が寒くなった。

逆らったら口封じの為に自分も殺されるのでは無いかと思って何も良い返せなかった。


「それじゃ、受付に志歩の死亡届を出しに行こうか。今日の稼ぎは2人で割れるからいつもより大きいぞ?」


和馬の言葉に孝久は返事を返さずに後に続いて受付へと向かった。


その後、死亡届の提出は色々と書く書類が多く、別室にて記入していたのだが、血相を変えたギルド職員が部屋に入って来ると担当してくれていた職員に何かを耳打ちした後、2人は別室へ案内される事になる。

___________________________________________



楓、翠、志歩が通された部屋で座って待っていると、そこに孝久と和馬がギルド職員に連れられてやって来た。

2人は志歩を見てギョッとしたが、職員に案内されるまま、志歩達とは対面になる部屋の端の席に座った。

初めに話し始めたのは動揺した様子の和馬だった。


「ぶ、無事だったんだな、安心したよ。もう助からないだろうと思っていたから」


その言葉に、志歩は呆れて言葉が出てこなかった。

あの時、恐怖から気の迷いであの様な行動をとってしまったのではないかと思う気持ちが少し残っていた。

しかし、和馬から発せられたのは謝罪の言葉や言い訳では無く、まるで死んで無かった事が残念だとでも言っている様な。

そんな言葉に志歩には聞こえた。


「そうだね。残念だった?私が死んで無かった事が。和馬にとっては都合が悪いもんね」


「そんな事ないよ。無事でいてくれて嬉しいさ」


和馬は取り繕った笑顔でそう話した。


会話が途切れた所で、和馬達を案内して来たギルド職員とは別の、志歩達を受付で対応した職員がカートに乗せた機械を押して部屋へと入って来た。


「それでは、これよりダンジョン内で起こった内容についての取り調べを行いたいと思います」


「な、なんだい?仰々しい」


和馬の言葉にギルド職員は返事をせずに、代わりに楓が話をする。


「僕達は志歩がお前達に魔物の前に置き去りにされたと聞いているよ。場合によってはこれは殺人未遂事件だ」


「そんなわけないだろう!いや、あれは故意ではなく事故だ。仕方のない事だったんだ!」


「それを今から確認させていただきます。それでは、皆さんの冒険者免許の提出をお願いします」


ギルド職員の言葉に楓と翠はスッと冒険者免許を机の上に出すが、和馬、志歩、孝久の3人は理解できてない様子だ。

それでも志歩はおずおずと免許を取り出した。


「冒険者免許にはダンジョン内での出来事が記録されているからね。こう言ったトラブルの時には情報を確認するんだ」


楓の説明に志歩はコクリと頷いた。

この事は、冒険者免許を取得した時に貰えるルールブックに記載があるのだが、しっかりと読んでいない人はスルーしている項目なのだろう。

楓も翠も、黎人に言われてステータスが上がった後にルールブックを見直してなければ知らなかった。

まあこんな事が起こらなければ使わない機能なので、普通は読み飛ばしていても問題は無いのだが。


「さあ。出してください」


ギルド職員の言葉に和馬と孝久も机の上に冒険者免許を取り出す。

ギルド職員がそれを回収して機械にセットすると今から大体どれ位前の出来事かを聞いて時間をセットするとその時の出来事がモニターに映し出されていく。


冒険者免許にはこうした記憶機能が備わっている。

ゲートを通ればオンになる360度のドライブレコーダーの様なものだ。

ダンジョン技術の不思議機能と言っていいが、生きていれば発せられる微力な魔力を動力に免許の所持者の360度周辺の映像を記録し続ける。

ゲートを通ってダンジョンから出ればプライバシーの観点からオフになる仕様だ。


そこに保存されていた映像には、しっかりと和馬が志歩を魔物へ向けて押し出す所もその時のいやらしい笑顔も孝久と和馬が志歩を囮にして逃げ出す所も、その後志歩が1人で魔物の攻撃をなんとか防ぎながら、剣を弾き飛ばされ、絶体絶命の状況から楓と翠に助け出される所まで記録されていた。

映像が終わるとギルド職員が和馬と孝久に向けて話し出した。


「以上の映像証拠とお二人が谷口様の死亡届を出そうとした事実からお二人の殺人未遂が立証されます。警察に引き渡すまでの間、こちらで拘束させていただきます」


「待ってくれ、あれは事故だ。そうだよな?志歩。俺の事が好きなんだろ?ならこんな仕打ちはないじゃ無いか?」


「あんな事されればあなたへの想いも冷めるわ」


和馬の言葉に言い返した志歩の声は驚く程に冷たかった。

和馬と孝久はギルド職員に拘束され、楓達も退室する為に立ち上がった。


「なあ、俺は和馬に脅されただけなんだよ。分かるだろ?翠、助けてくれよ。お前の為に冒険者で稼ごうとしたんだぜ?俺の気持ちは知ってるだろ?なあ!」


いきなり翠の方に走り出した孝久をギルド職員は止められなかった。

しかし、孝久は翠の元へ辿り着く前に間に入った楓に組み伏せられ、取り押さえられる。


「それはお前の勝手な言い分だろ?」


「楓!はなせ!俺は翠に話してるんだ!」


孝久が暴れても楓の方が力が強い為、びくともしない。


「孝久君、私はあなたの事なんてなんとも思って居ませんし、付き纏われるのにも迷惑しています。もう私に関わらないでください」


翠が反応してくれた事に一瞬顔を明るくした孝久だったが、続いた言葉にガクリと頭を下げて力が抜けた。


「貴方の行いは最低でも殺人未遂幇助にあたり、重い罪になります」

ギルド職員のその言葉には孝久はもう反応を返さなかった。


その後、楓からギルド職員に引き渡されて和馬共々別室に連行されて行った。


受付にて志歩は被害届を提出して3人で帰路に就く。

ギルドをでた所で不意に志歩が話し始めた。


「私はもうあんな怖い想いするのは無理だから冒険者は引退かな。

大学も、少し休学して実家に帰って休息しようかなって思うの。だから、もし2人の在学中に戻って来れたらまた仲良くしてよね」


そう言って笑う志歩の笑顔は夕日の影で悲しそうに見えた。


その後、楓の肩をポンと叩いて、次に翠にハグをした。


「私は見る目が無かったけど、翠ちゃんは逃しちゃダメなんだからね」


翠にだけ聞こえる声でそう話すと楓と翠の2人とは別の方向へ歩き出した。


「それじゃ、私はこっちから帰るからじゃあね」


志歩はそう言って手を振ると走って去ってしまった。

残された2人はその突拍子のない行動に顔を見合わせる。


「多分、今は1人になりたいんだと思うの。また後で連絡してみるわ」


「うん、お願い。こう言った事は男の僕より椿さんの方がいいと思うから」


2人並んで歩く翠の顔が、先ほどから赤く染まっている事は夕日の光もあって楓は最後まで気づかなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『願ってもない追放後からのスローライフ?』 2025年8月28日漫画1巻発売!  購入して応援してくれたらとても嬉しいです!  原作も2巻発売中!  各販売サイトは一部は下のリンクからどうぞ! 漫画 1巻 Amazon 楽天 原作 1巻 Amazon 楽天 紀伊國屋 2巻 Amazon 楽天 紀伊國屋
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ