45話ステップアップ
レベッカさんの尋ね人は黎人さんだった。
話をする為に移動したのだが、レベッカさんの提案で大手手羽先チェーン店に移動した。
黎人さんに連れて行ってもらう時はいいお店ばっかりだからなんか安心する。
レベッカさんは私が教えてあげた様に、手羽を折ると食べる方を口に入れて、歯で挟んで骨を引き抜く。
すると綺麗に骨だけが剥がれて美味しいお肉が食べられるのだ。
「うん、タレもいいけどこのスパイシーな胡椒も美味しいわね!」
この店秘伝のスパイスなのだがレベッカさんには些細なことなのだろう。
食事をしながら色々と話を聞いて驚いたのは、2人は義理の姉弟だと言う事だ。
黎人さんがそう言うと、レベッカさんは「こんな可愛くないのが弟だなんて認めてないわよ」と言っていたが、そう言っている時の目がすごく優しくて、照れているだけじゃないかと思う。
レベッカさんが日本に来た理由も黎人さんが冒険者を引退したから文句を言いに来たんだって。でも、ここまでの話に文句なんて出てなくて、引退してからどうやって過ごしていたのかとか聞いているのを見ると、心配していたのでは無いかと思う。
「義母さんにあんたの結婚が破談になったって聞いて笑いに来たのよ」
と言っていたが、本心では無さそうだ。分かっているから黎人さんも心配かけたと謝っていたけど、レベッカさんは「心配なんかしてないわよ」と一蹴していた。
ほんと、素直じゃない。そう思うと私は自然と笑顔になった。
「紫音ちゃん、なにニヤついてんのよ?」
「え、いえ、レベッカさん物凄く食べるのにスタイルがいいなと思って!」
なんとか誤魔化せた?レベッカさんは既に手羽先を10人前は食べている。
ダンジョンで会った時も唐揚げを食べていたし、このスタイルのどこに入っていくのだと思う。
「こんなの回復魔法の応用よ。回復魔法は体の自然治癒能力を高めるイメージでしょ?スタイルを保つには脂肪を燃焼させたり筋肉に負荷をかけたりするイメージよ。
上手くやれば消化を促進したり、アルコールを分解したりもできるわよ」
レベッカさんは簡単に言っているが、まだ魔法を扱えない私には夢物語だ。
しかも、黎人さんは回復魔法自体使える人が少なくて、少し間違えれば体を壊すからお勧めしないと言っていた。
どうもレベッカさんが特別らしい。おおらかに見えるけど、緻密なコントロールが得意みたいだ。
その後も話は続いて、黎人さんの一番弟子火蓮さんの話。そして、私と出会ってからの話。
この話をレベッカさんは楽しそうに聞いていた。
これまでの話を聞いて満足したのか、レベッカさんは「元気そうで良かったわ」と小さい声で呟くと立ち上がった。
「私もあんたが弟子を育ててる所を見てあげるわ!」
レベッカさんは、ビシッと音が聞こえそうな勢いで黎人さんを指差してそう宣言した。
そっか。私も、黎人さんの弟子の1人なんだ。
こうして、次の日から私のダンジョン探索にレベッカさんが加わった。
_____次の日
私達は3人でダンジョンを探索している。
「fantastic!すごいわ!まるで日本のアニメだわ!」
紫音の戦い方をみたレベッカのテンションは高い。
「だけど、黎人は過保護なのね。人間ピンチにならないと更なる高みには行けないわ。黎人がSSSになったあの時みたいにね。
見た限り、紫音ちゃんが絶対に大丈夫な魔物の数まで間引いてるでしょ?ここはGランクなんだし、今は私も見てるわ。
少し、厳しい戦いをさせてあげたら?その方が紫音ちゃんの成長につながると思うの」
レベッカさんが言った内容は昨日黎人さんがダンジョンの帰り道で言っていた事とほぼ同じだった。
これまではダンジョンでしっかりと戦える様に特訓して来たが、もう少ししたら怪我をするかも知れない特訓に切り替えて魔法を練習していこうという事だった。
その事を私がレベッカさんに伝えると、レベッカさんは顔を赤くした。
「べ、別に黎人と考え方が一緒だった訳じゃなくて、一般的な意見よ!そう、一般的な!
ほら、そんな事より紫音ちゃん、魔法の使い方を教えてあげるわ!」
私は「はい!」と言ってレベッカさんの方へ向かう。
黎人さんが笑顔なのも、レベッカさんの性格が分かってのことなのだろう。
「ほら、見てなさい。こうやって魔法を撃つのよ!」
レベッカさんの照れ隠しなのか、特大の雷が大森林に落ちた。
カクヨムにて100話ほど先読み掲載してます。




