44話尋ね人
黎人が紫音の面倒を見始めて数ヶ月がたった。
順調に魔石を吸収して、森の中での戦闘もこなす様になっている。
特注の車椅子は流石で、木の根をものともせずに森の中を駆け回る。
魔石の吸収によってSTRが上がった為か、最近では、最初の様にランスを構えて敵に突っ込むだけではなく、ランスを突き出す、攻撃を受けながす、滑らせて弾く等、ランスをうまく扱える様になっている。
勿論、左手のコントローラー捌きも上達しており、アーケードの格闘ゲームのプロさながらのスティック捌きで車椅子を自分の体の様に扱っている。
加速と急ブレーキを使いこなして、ドリフトの様に旋回して魔物の横に移動しての攻撃を見せた時には、黎人も思わず拍手をした。
そんな日々を過ごしながらも成長を続ける毎日。
そんなある日、紫音がダンジョン探索を終えて、着替えを済ませてギルドのロビーに居ると、声をかけられた。
「Hello!お嬢さん、また会ったわね!」
紫音が振り向くと、声をかけて来たのは以前、ホテルで話したことがある外国人のお姉さんだった。
「貴方、すごい車椅子ね。あの時は普通の車椅子だったのに」
外国人のお姉さんはこの大須ギルドに来るまでにある商店街で人気の唐揚げ専門店の唐揚げが入った紙カップを器用に片手で2つも持っている。ギルドの中で食べ物を食べている人も珍しいので、匂いのせいもあってか注目を集めている。
「やっぱり唐揚げは最高ね!この唐揚げに付いてる甘くてスパイシーなタレも素晴らしいわ!」
話の途中で一口食べて、そう言って顔を綻ばせる整った顔立ちに見入ってしまう。
「あ、あの、私の名前は紫音って言います。お姉さんの名前は?」
見入ってしまったのが恥ずかしくなって紫音はそう質問した。
「あら、私もまだまだね。私はレベッカ・ワトソンって言うの。モデルとかもしてるんだけどベッキーって知らない?」
「すいません。私、あまりテレビとか見なくて、あ、でも、友達の雑誌で見たことある様な?」
施設のテレビは年齢の低い子達に優先しているので元々見ないが、前に、萌香ちゃんが雑誌で憧れの外国人のモデルさんの事を言っていた気がする。
少し前の楽しかった日のことを思い出して、紫音の胸がチクリと痛んだ。
「気を使わなくていいわよ。あ、紫音ちゃんも食べる?」
そう言ってレベッカさんは唐揚げを爪楊枝で刺してグイッとこちらへ突き出した。
「え、じゃあ。頂きます」
つい反射でそう答えてしまい、レベッカさんみたいな美人さんに唐揚げを食べさせてもらってしまう。
「ね、美味しいでしょ?」
私は唐揚げで口が塞がって返事が出来ないのでコクコクと首を縦に振って答えを返した。
そのあと、少し話をしていると、レベッカさんは人を探している様で、今日はこのダンジョンに探しに来た様だ。
でも、実は昨日までは人探しそっちのけで名古屋飯や城巡りをして観光していたのだと笑い話を織り交ぜながら話してくれるので、楽しく過ごすことができた。
しかし、人を探すならこんな夕方からではなくて、朝からのがいいと思うんだけど。
そんな話をしていると、今日の探索の成果報告に行っていた黎人さんが戻って来た。
「レベッカ?なんでこんな所に居るんだ?」
「あ、見つけた!」
レベッカさんの大声がロビーに響いた。
どうやら、レベッカさんの尋ね人は黎人さんだった様だ。
カクヨムにて100話ほど先読み掲載してます。




