43話新幹線の移動
レベッカは今、新幹線に乗って名古屋駅に向かっていた。
思ったよりも、イギリスの使者としての仕事を終わらせるのに日にちがかかってしまった。
勿論、その内容とは引退した黎人に関する事だ。
イギリスは、過去に冒険者ゼロにとても世話になった国だ。なので、引退する黎人へ退職祝いではないが、これまで世話になった礼として王室とギルドの合同主催のセレモニーをさせて欲しいと言う内容だった。
黎人を知っている自分としては、黎人は断るだろうなと思いながらもそれは私の意見であり、国やギルドとしては打診だけでもしなければいけないのだろう。
こう言った場合、本人に直接打診が行くのではなく、所属していたギルドを通すのが通例だ。
なので私が出向いたのだが、対応が少しおかしかった。これは何かあるかもな。
と口いっぱいに詰め込んだシウマイ弁当を飲み込み、次の駅弁に手を伸ばした。
「やっぱり日本のご飯は最高ですね!」
3つ目の駅弁はいくら、カニのほぐし身、ウニが贅沢にのった海鮮弁当だ。
いくらの鮮やかさが宝石のように美しく、ウニの鼻から抜ける磯の香りが素晴らしい!
飲み物が無くなったので、ちょうど来たワゴン販売で緑茶を購入した。
チップに1万円を渡すと恐縮しながらも受け取ってくれた。
日本のサービスは素晴らしい。
このワゴン販売のスタッフでさえも丁寧な言葉遣い。両手を添えてお茶を渡してくれるなどおもてなしの心がこもっている。
こんな素晴らしいサービスにチップを渡さないのは失礼だと思うのだが、日本にはそう言った文化がないのよね。不思議だわ。
そんな事を考えながらいくらとカニを同時に一口。飲み込んだ後に緑茶で口をスッキリとさせてお次はウニ。
この後、レベッカは名古屋駅に着くまでに、更に2つの駅弁を平らげるのだった。
______愛知
名古屋駅に着いたレベッカはマリアにとってもらったホテルへチェックインする。
防犯の観点からも一流のホテルになる。
レベッカはせっかく日本に来たのだから、旅館に泊まりたいと思ったのだが、名古屋の中心にそんなものは無く、今回は旅館がお預けになった。
ホテルのエントランスに入ると、可愛らしいオドオドとした車椅子の少女が目に入った。
受付に向かう途中、その少女を追い抜かす時に『Hello!』と笑顔で手を振ったが、驚かせてしまったようで、びくりと体を震わせていたが、手を振りかえしてくれたので問題はなかったかな?
受付で、とりあえず1ヶ月分のチェックインを終えて、部屋へと向かう。
今の私は名目上バカンスなのだ。
今日の所はたくさん食べたし夜までお昼寝がしたい。
エレベーターでは、また先ほどの少女と同じになった。
驚かせてしまったので、今回は話しかけずにエレベーターが到着するのを待つ。
エレベーターが7階上昇して扉が開いた。
少女も同じ階のようだった。少女が降りるまでエレベーターのボタンを押して開けてあげる。
少女はエレベーターを降りた後「ありがとうございます」と笑顔でお礼を言ってくれた。
うん!かわいい!
その後、少女と同じ方向だったので部屋までの短い間だが、軽く話をしながら部屋へと向かう。少女はエントランスで、私が英語しか話せないのではと緊張して手を振ったそうだ。
部屋の前までたどり着くと、少女が「え?」と声をあげた。
何とそこは少女の部屋だったのだ。
しまった。数え方を間違えたのね、日本では1.2.3階だったわ。
少女に階を間違えた事を伝えて手を振って別れて、一階下の608号室へと向かう。
「素直そうでかわいい子だったわね」
微笑ましい少女を思い出しながら部屋へと鍵を開けて部屋へと入る。
そうだ。日本はホテルでも入り口で靴を脱ぐのよね!
靴を脱いで入室して、異空間から部屋着を出して着替えるとベッドへとダイブした。
ここはルームサービスも美味しいらしいし、夜はそれを食べようかしら?
黎人を探すのは、明日からで良いわよね?
でも、観光もしたいわ!信長や家康の城もあるのよね?ナゴヤメシも楽しみだわ!
レベッカは昼寝の前に鼻歌を歌いながらルームサービスのメニュー表を眺めていた。
カクヨムにて100話ほど先読み掲載してます。




