37話ダンジョンまでの準備
次の日、黎人は冒険者専用ショップに来ていた。
冒険者専用と言っても冒険者しか利用できないのではなく、冒険者しか使わないような武器や防具が置いてあるお店のことを一般的にそう呼ぶ。
ギルド併設のショップにも武器や防具は置いてあるのだが、黎人は自分が面倒を見ると決めた紫音の危険はなるべく下げておきたいのでコチラに足を運んだ。
冒険者専用ショップ《Orichalcum》賢き者達の1人が創設したダンジョン装備の老舗である。
Aランク以上の冒険者御用達のダンジョン産の素材やテクノロジーを使った武具を扱う高級店で世界中に店舗があり、日本には東京、愛知、大阪、福岡、北海道の5店舗がある。
黎人が入店すると、すぐに1人の店員が声をかけて来た。
「いらっしゃいませ。今日はどの様なご要望でしょうか?」
「ああ。弟子みたいな子の安全の為にインナースーツと武器を見繕いたくてな」
黎人の言葉に店員は黎人をジロジロと見て話を続けた。
「失礼ですがお客様の冒険者免許を確認してもよろしいですか?ランクはどの位でしょうか?」
「え?今は冒険者免許は持ってないけど、ここって利用するのに冒険者免許は必要なかったよね?」
《Orichalcum》は創設者の理念として、より安全を求め、対価を支払うのなら犯罪者でない限り武具を販売する。だったはずだから問題はないはずなんだけど?
店員はあからさまにため息を吐くと話し始めた
「ここはAランク以上の冒険者の皆様が利用される高級店です。貴方が今おっしゃったインナースーツの値段、いくらか分かりますか?
最低品質のものでも貴方なんかには手の届かない値段です。それくらいオーバーテクノロジーが詰まった商品なのです」
「いや、その辺は大丈夫だからどの位のものがあるか見せてもらえる?」
「だ、か、ら。冷やかしは困るんですよ!
Aランクになるような方達は私達では想像もできない様な危険を犯して世界のエネルギー需給の為に頑張ってらっしゃるのです!
それを、冒険者免許も持ってないのに弟子?
ふざけるのも良い加減にしてください!私も冷やかしに付き合う暇は無いんです!」
めんどくさい店員に当たってしまった。
これじゃ話も進まないから一旦東京に戻っていつもの《Orichalcum》まで行くか。
紫音はダンジョンに潜る前に勉強させる事をテキストで勉強中だから東京まで往復して時間を潰しても問題ない。今からなら今日中に帰って来れるし、ついでに火蓮の様子も見て来れるか?
そう考えた黎人は「もう良いです」と店員に伝えて店をでた。
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Orichalcum名古屋店
入社2年目の店員井上は変な客が来た事に少し憤りを感じていた。
格式高いこの店に冒険者でもない一般人が冷やかしに来るなどとんでもない。
まあ表向きは誰でも購入する事ができるとなっているが、そんな建前を鵜呑みにする輩が居るとは。嘆かわしい。
ん、次にご来店のお客様は織田様だ。他のスタッフがすぐに取り次いで支店長が対応に向かっている。
織田様は特に特別だ。
織田様はAランククランのリーダーで自身のランクはSだという話だ。
名古屋にSランクは織田様だけで、実質この地域最強の冒険者。やはりああいうお客様がこの店には相応しい_______
「織田様、本日はご来店ありがとうございます」
この店、《Orichalcum》名古屋支店の支店長眞弓はそう言って綺麗なお辞儀をした。
「やあ。今日は多分、知り合いがここに買い物に来てないかと思って寄っただけなんだ。
あの人はこっちからご飯に誘わないと必要な事しか連絡して来ないからね。
昨日電話で弟子みたいな感じに面倒見るって言ってたし、あの人はクランメンバーに対しても過保護だったから、きっちりとした物を買いに来ると思うんだよね」
この方はクラン《黄金の鯨雲》のリーダーで織田悠馬様。
愛知で織田の苗字だからと言って、あの武将の血筋とは何の関係もない。
30代の優男に見えるが、歳は40代で幾つかの会社を経営するやり手でもある。
高ランクの冒険者と言うのは冒険者以外の職種でも活躍する人も少なくない。ここ愛知では織田様がその筆頭だろう。
逆に世間一般では織田様の様な人は冒険者という印象のが少ない。
冒険者は世間一般に情報があまり出回らない為に別の仕事で有名になってしまうとそちらで有名になるからだ。
しかし、織田様のお知り合いか、織田様の話から見れば大切なお客様なのだろう。普段からお客様には分け隔てない最高の接客を心がけてはいるが、より一層気合いを入れなければいけないな。
「織田様、今は店内にお客様はお見えにならない様子ですので商談室でお待ちになられますか?」
「じゃあ、そうさせて貰おうかな」
そうして2人はある人物を待つ為に第一商談室へと向かった。
カクヨムにて100話ほど先読み掲載してます。




