第299話 登校
輝羅が春風家に一泊した次の日の朝。
「アンナちゃん、輝羅ちゃん、朝ごはんの用意するからちょっとまっててね」
火蓮がそう言ってキッチンに行った後、紫音が2人に声をかけた。
「それじゃあ待ってる間に2人の髪の毛をセットしようかな? 友達になった記念におんなじ髪型で、これをつけようかな」
紫音がジャーンと言った風に2人にお揃いの髪飾りを見せた。
昨日の反省点を見直して可愛い飾りの付いたヘアゴムである。
「かわいいですの!」
「うん、かわいい!」
アンナと輝羅は、眠たそうに擦っていた目をパッチリと開けて輝かせた。
「2人とも、できたよ。って、いいね! 2人とも可愛い」
髪をセットして着替えを終わらせたアンナと輝羅は、火蓮の言葉に嬉しそうな顔をした。
「パパに見せてくる! 行こ、輝羅ちゃん!」
「うん!」
アンナと輝羅は黎人の部屋に走って行った。
「ちょうどいいから朝ごはんできたよって連れてきてねー!」
火蓮が叫んだ横で、紫音がクスリと笑った。
「2人いると朝から賑やかね」
「そうだね。紫音ちゃん、飾り付きのヘアゴムなんてよく持ってたね」
「あれは黎人さんが昨日買って来たのよ。今渡すよりも明日の朝渡してくれって預かったの」
「なるほど。そこまで準備してるのに、早起きして見に来ないのが師匠らしいよね」
火蓮と紫音は顔を見合わせてまた笑った。
「お姉ちゃん、アンナちゃんのパパ連れて来ましたの!」
「パパもかわいいって言ってくれたの!」
2人に手を引かれて、黎人がリビングにやって来た。
「それじゃあ早く食べよっか。学校に遅刻しちゃうといけないからね」
「火蓮ちゃん、コーヒーセットしておいたわ」
「アンナちゃんと輝羅ちゃんはオレンジジュースと牛乳、お茶どれがいいかな?」
「お母様、マリアさん、ありがとうございます!」
火蓮が呼びに来ている間に、譜とマリアが飲み物を用意しておいてくれて、食卓の準備もバッチリである。
今日のメニューはホットサンドとサラダにオニオンスープと言う洋食のようだ。
アンナと輝羅は、ホットサンドから伸びるチーズを楽しそうに見せ合いながら笑顔で食べ終えると、歯を磨いて登校の時間だ。
「輝羅ちゃん、また泊まりに来てね」
「いいんですの?」
「アンナも来て欲しい!」
「アンナもそう言ってるから、是非来てあげてね」
「分かりましたの!」
登校は、アンナの友達の友里達のマンションの前まで黎人が送って行く。
2人は黎人に手を繋がれ、待ち合わせ場所に向かうと、友里達とママさん達が待っていた。
「あれ? 輝羅ちゃんも一緒だ!」
「あー!2人とも一緒の髪型! いーなー」
「髪飾りも一緒だ、かわいい!」
友里や樹菜達が輝羅や髪飾りに反応した。
「輝羅ちゃんは昨日お泊まりしたんだよ! 楽しかったの!」
「めちゃくちゃ仲良くなりましたの!」
「えー、いいな! 私もお泊まりしたかった!」
「私達ももっとアンナちゃんと輝羅ちゃんと仲良くなりたい!」
子供達は、お泊まりの話で盛り上がっている。
輝羅が一緒に登校しても、仲良くできそうで一安心である。
「それじゃ、今度の連休の時にみんなでお泊まり会かな? 輝羅ちゃんの分もお揃いのパジャマ用意しないとね」
黎人の言葉に子供達は喜びの声をあげるが、ママ達は迷惑じゃないのかと確認を取ってくる。
「まあ、家は広いので大丈夫ですよ。弟子達もいるので人手もありますから」
黎人は、そう言って笑った。
ママさん達も心配だったら食事する時に一緒に来てもらうのがいいかな。などと考えていたりする。
登校の時間になったので、アンナ達は学校に向かう。
毎日の事だが、見えなくなるまで手を振って行くので、人にぶつからないか心配である。
前を向いて歩くように言うのは、日課のようなものだ。
黎人はその後、ママさん達とお泊まりの会の事について少し話した後、家に帰るのであった。
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