第291話 誕生会1
アンナと共に、黎人も大内山家におよばれする事になり、家に上がらせて貰うと、家に居た1人から黎人に声をかけられた。
「春風オーナー! アンナちゃんのパパって春風オーナーだったんですか!」
黎人の名前を驚いた様子で呼んだのは、集まっていたアンナの友達の母親の1人であった。
以前アンナの初登校の日の帰りに会ってないことから恵天華の母親であろうと黎人は予想した。
「天華ちゃんの?」
「はい。天華の母で恵成美です。渋谷支部で働かせてもらってます」
天華の母親である成美はそう言って黎人に頭を下げた。
黎人の家の側にあるマンションなだけあってこのマンションも高級マンションの一つである。
このマンションにシングルマザーで住めているのは冒険者ギルドの職員としてしっかりとした給料を貰っているおかげであろう。
職員がオーナーにとる態度としては普通なのだが、この誕生会の場としては少し大袈裟である。
「天華ちゃんのお母さん、今日は樹菜ちゃんのお誕生会ですから、俺はアンナのパパですよ」
黎人がそう言うと、天華ママは苦笑いで頷いた。
「お二人は知り合いでしたのね」
「まあ、仕事の上司と言った所です。それよりも、子供達も待ってますから誕生会を始めましょうよ。アンナは樹菜ちゃんの為に頑張って作って来た物があるんですよ」
集まった母親の1人が、質問をしたが、長く続ける様な話でもないと思ったので、黎人は主役である子供達の誕生会を優先する様に提案した。
黎人の言葉に「そうですね」と樹菜の母親が返事を返した後、黎人の言葉を聞いていたのかアンナの友達の樹菜が「ほんと、アンナちゃん?」と質問をしている。
すこし恥ずかしそうに頷くアンナは、チラチラと黎人の方を、もう渡していいのか確認するように見ている。
黎人が頷くと、アンナは持って来た木で編んだ籠の中から頑張って作ったクッキーを手渡した。
「うわぁ、かわいいクッキー! アンナちゃんが作ってくれたの?」
「うん」
「ありがとう! アンナちゃん! ママ、見て!」
樹菜が嬉しそうに母親に見せに行くと、恥ずかしかったのかアンナも黎人の方に来て足にしがみついた。
黎人はアンナと目線が合うようにしゃがみこむと「喜んでもらえて良かったな」と言って頭を撫でた。
樹菜だけクッキーをもらった事に、残りの子供達が羨ましそうにしているので、黎人はアンナに耳打ちした。
それを聞いたアンナはニッコリと笑うと「みんなの分もあるよ」と言って他の友達にもクッキーを渡した。
主役の樹菜の袋だけ大きく、特別なクッキーが入っているので、差別化はしてあるが、クッキーを貰った友達は皆嬉しそうにアンナにお礼を言っている。
「みんな、大事にとっておいてお昼ご飯の後に食べようね」
「「「「「はーい!」」」」」
今日は昼食も兼ねた誕生会になっているので、これからお昼ご飯である。
「パパのは渡さないの?」
アンナのクッキーにみんなが喜んでいたので、後で渡そうと思っていたのだが、アンナが喋ってしまったのでもう一つのプレゼントも渡す事にする。
「パパからじゃなくて、アンナとパパからだよ。皆さんにはアンナを暖かく受け入れてもらったようなので、よかったらアンナとお揃いのパジャマなんですが」
黎人は自分からではなくアンナとという所を強調して、親達にも渡していいか確認を取るように袋を軽く持ち上げた。
「ありがとうございます。アンナちゃんからもう一つプレゼントがあるって。みんなお揃いのパジャマみたいよ。今度パジャマパーティーもしないとかな?」
黎人の言葉を汲み取ってくれたようで、樹菜の父親が子供達にアンナと黎人の前に並ぶように言ってくれた。
黎人がアンナに渡してからアンナが友達に渡していく。
パジャマを受け取った子供達は、母親達に「かわいいパジャマ!」などと言って見せ向かう。
母親達は、子供達に「良かったわね」「パジャマパーティーしようね」などと言ってパジャマを預かり、包装のタグを見てギョッとするのであった。
「「「「《twilight.M.Apparel》」」」」
母親達の驚きの声が重なった。
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