第284話 自己紹介
小学校は、黎人の家から徒歩10分ほどの距離にあり、黎人とアンナは歩いて学校へ向かっていた。
「アンナ、疲れてないか?」
「大丈夫!」
黎人はアンナと手を繋ぎながらゆっくりと歩いて来たので、学校まで15分程かかった。
校門が見えて来た頃に、隣で元気に歩いているアンナに一応声をかけたが、元気一杯の声が返って来た。
アンナの体力的には登校するのは問題ないようである。
学校へたどり着き、校門をくぐって職員室へ向かう。
職員室で、担任の先生に挨拶して、校長室に案内され、色々と説明を受けた後、担任の先生にアンナをお願いして送り出した。
校長にも挨拶をして帰ろうとした所、校長から声をかけられた。
「子供さんが新しい学校でやっていけるか心配でしょう。どうですか?少し覗いて行かれますか?」
校長からの提案に、黎人は是非ともと頷くのであった。
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担任の先生について、アンナは階段を登って教室の前まで来た。
「それじゃ、先生が呼んだら教室に入って来てくれる?」
アンナは笑顔で頷いたが、担任の先生が教室に入って行き、1人になった事で、急に緊張や不安が襲ってきて、顔が曇っていく。
しばらくして、教室の中から担任の先生の呼ぶ声が聞こえるが、入って行く勇気が湧いてこない。
アンナがオロオロとしてしまい、教室に入るのをためらっていると、先程上がって来た階段の方から小さくアンナを呼ぶ声が聞こえた。
アンナが振り向くと、そこには黎人が手を振っていて、言葉は発していないが、口の動きが、「がんばって」「いってらっしゃい」と言っているのだと分かった。
アンナは、黎人の顔を見て少しホッとした様子で頷いた。
昨日、火蓮や紫音と一緒に練習した自己紹介を思い出した。
もう一度、担任の先生が呼ぶ声がして、アンナは勇気を振り絞ってドアを開けて教室に入った。
クラスの生徒達が一斉にアンナを見た。
「はい。それじゃ、春風さん、自己紹介お願いできる?」
担任の先生はそう言ってくるが、アンナは大勢の視線に緊張して、喉から声が出なかった。
「おい、金髪!」
クラスの生徒の中、最前列の男の子がアンナのことをそう呼んだ。
「お前の金髪はすごい綺麗だけどさ、金髪って言われるの嫌だろ? だから名前を教えてくれよ、俺は中原幸って言うんだ。お前は?」
男の子の言葉に、アンナは緊張しながらも必死に昨日練習したように自己紹介をする。
アンナは、この自己紹介をとても楽しみにしていた。
家族の中ではアンナとしか呼ばれないし、自分も自分の事もアンナと言う。今まで、苗字を名乗る機会などなかった。
「初めまして、春風アンナです!よろしくお願いします!」
アンナはとびきりの笑顔で、黎人と同じ春風の苗字を名乗ってクラスメイトに自己紹介をしたのであった。
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