第276話 オムライス
黎人が電話したのはクラン《星空のレストラン》のクランリーダーであった。
星空のレストラン系列のレストランが、ワシントンにもある。
予約はしてなかったが、席に空きがあったのでねじ込んでもらった。
それに、無茶をお願いしてメニューにないオムライスも用意してもらえる事になっている。
という事で黎人とエヴァ、アンナの3人は、星空のレストランが入っているビルへと向かっている。
レストランに着くと、ウェイターに予約を確認した。
『すまない、春風で予約は入っているかな?』
『春風様ですね……はい!窓際の席に案内するように言われております。どうぞこちらへ』
きちんと予約は通っていたようで、窓際の席まで案内をしてもらった。
ディナーではなくランチタイムなのにレストランは客でいっぱいのようだ。
黎人が通された席を見て、店の空気が少しピリついた気がした。
店員達が一斉に黎人達を確認した事がそう感じさせたのだろう。
このレストランは、普段席が一杯になる事はない。
緊急的なVIPの時の為に1番いい席はどれだけ混んでいてもいつも空席である。
その席に座る客が現れたと言うだけで店員達に緊張が走ったのであった。
「春風様、私店長のマックスと申します。本日はオムライスとお聞きしておりますが、オムライスを3つでよろしかったでしょうか?」
「うん!」
マックスの質問に、アンナが元気よく返事をした。
黎人がエヴァの方を見ると、エヴァも黎人の方を見て頷いている。
それを確認したマックスは「かしこまりました」と答え、続いてドリンクの確認をした。
「どの様なお飲み物も用意がございます。どういたしましょうか?」
「アンナは何が飲みたい?」
「オレンジジュース!」
黎人の質問にアンナは元気よく答えた。
黎人は炭酸水、エヴァはアイスティーを頼んだ。
「かしこまりました。少々お待ちください」
オーダーが済んでしばらくすると、オムライスが3つテーブルに届いた。
ドリンクも届いて、いただく事にする。
出てきたオムライスはとてもシンプルなオムライスだ。
鶏肉と玉ねぎとマッシュルームのケチャップライスをオムレツの様に薄い卵で綺麗に包んであるタイプ。
ソースも、デミグラスソースやホワイトソースではなくトマトケチャップ。それもまだかかっていない。
勿論、オーダーすればオムレツを上で割る様なトロトロオムライスも、洋食店のようなデミグラスソースも、トリュフが乗ったホワイトソースも作ってもらう事ができた。
しかし、電話で予約を取るときに、アンナが言ったのは、ケチャップで文字を書いた普通のオムライスであった。
市販のケチャップがマックスによってアンナに手渡された。
「パパのは私が書くからパパは私のを書いて!」
「あら、私のは?」
あんなの言葉にエヴァはアンナに質問をした。
「んー、仕方ないから私が書く!」
アンナによって、黎人のオムライスにはカタカナで《パパ》とかかれ、その横に何か分からないヒゲの生えた動物の顔が描かれた。多分、犬か猫だろう。
続いてエヴァのオムライスに《エヴァ!》と書いて耳の長い動物の顔が描かれた。これはうさぎであっているだろう。
最後に、アンナにケチャップを渡された黎人がアンナのオムライスに《アンナ》と書いて、横に猫の絵を描いた。
「わー、猫!パパと一緒!」
どうやら黎人のオムライスに描かれたのは猫だったようだ。
その後、食べ始めたアンナに、美味しいかを質問すると、満面の笑みで「とっても美味しい!」と返ってきた。
オムライスの後は、アンナとエヴァにはアイスクリーム。黎人はコーヒーを頼んでゆっくりとした食後のひと時を楽しんだ。
とても先程までマフィアに追われていたとは思えない平和な午後の時間が流れていくのであった。
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