第275話 お昼のオーダー
少女を連れてホテルに帰ってきた黎人は、ホテルのロビーで待っていたエヴァに声をかけられた。
「黎人、今日は暇なんでしょ? 美味しいランチに行きましょうってあれ?何、その子?」
「ああ、さっき変なのに襲われてたから助けたんだよ。マフィアの誘拐かな。身代金目的?」
「それは、災難なマフィアね。最強に出くわすなんて」
黎人の話を聞いて、くすくすと堪えるように笑うエヴァに黎人は苦笑いだ。
「でも、その子の親を探さないとね。マフィアが身代金目的で誘拐するような子供ならすぐに身元がわかるでしょうけど」
「パパはパパだよ?」
エヴァの提案に少女は黎人にしがみついて自分の父親は黎人だとアピールした。
「え?」
素っ頓狂な声を出してしまうエヴァに、黎人は先程からこの調子である事を伝えた。
「なるほどね。お嬢さん、お名前は?」
「アンナ!」
「アンナちゃんはどこから来たの?黎人はパパじゃないよね?」
アンナと答えた少女に、エヴァは一つ一つ質問をしていく。
「んー、暗くて明るい所?から来たの。パパはね、なんだか波長が合うの。きっとパパなの!」
「全くわからないわ!」
エヴァはあんなの言葉が解読不能だと匙を投げた。
「まあこんな感じでな。乗りかかった船だからちゃんと面倒見ようかと思ってな」
「面倒みるって、警察に預けて終わりでは?」
エヴァの言葉に、黎人を掴むアンナの力がグッと強くなった。
「それも一つの方法だろうけど、その上に直接聞いてみようかと思ってさ。明後日に会うしな」
「じゃあ、それまでは面倒みるって事ですか? 知りませんよ、どうなっても」
エヴァはやれやれと言った様子で鼻から息を吐いた。
予想はできていた事だ。こうやって黎人は弟子を拾っていた訳だし、どこの国でも裏と表がある。
組織ぐるみで無くても警察とマフィア、日本で言えば警察とヤクザ。ちょっと前の日本では警察と冒険者もあっただろう。
個人として、陰で協力関係を築いている者達もいる。
運が悪ければ、この子は警察から親では無くマフィアに渡されるだろう。
それなら、《《えらい人》》に許可を取って黎人自ら探した方がいいと我が師匠は考えるはずである。
「……やっぱり、私も協力します。私もこのホテルですし、このまま放っておいたら後が怖い気がします」
エヴァは、この事実を知っていながら、目を離してしまう事のリスクを恐れて協力を申し出た。
エヴァの性格が分かっているから、その言葉ににっこりと笑って黎人は頷いた。
「とりあえず、なにかご飯を食べませんか?私は黎人とランチするつもりだったのでお腹が減ってます」
「そうだな、何か食べようか。何か食べたい物はあるかな?」
エヴァの提案に黎人は頷いて、食べたいものがないかアンナに質問した。
「オムライスが食べたいの!」
アメリカの真ん中で、まさかの日本の洋食をオーダーされ、黎人は苦笑いだが、心当たりはあるので黎人は知り合いに電話をかけるのであった。
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