第274話 助けた少女は……
アメリカに到着した黎人は、街へと出ていた。
会議は2日後であるし、それまでの間に知り合いにでも挨拶しておこうかと冒険者ギルドに向かっている最中である。
相手が会いたいかどうかなどは関係なく、とりあえずアメリカに来たし、Sランク冒険者には挨拶がてら会っておくか位の感覚である。
泊まっているホテルはワシントンの世界冒険者ギルドアメリカ支部の近くであった為、歩いて冒険者ギルドまで向かっていた。
道中に、コーヒーを買って飲みながら歩いていると、正面から人が複数人走ってきた。
黎人は、関わり合いになりたくなかったので、道の端に退いて道を譲ろうとした。
譲ろうとしたのに、走って来た先頭の人は、わざわざ黎人の背後に隠れると、黎人に助けを求めた。
『助けてください』
『おい、お前、その子をこちらに渡せ!』
背後に隠れているのは小学生位の女の子、対するは黒服強面の男達。
「マジかよ。『この子は貴方達から逃げているみたいだけどどう言った理由で追いかけているんですか?』」
とりあえず、黎人は状況と理由を確認してから判断することにした。
『うるさい!東洋人が!』
『めんどくせぇ、やっちまえ!』
男達は、黎人の質問に答えることなく、強行突破で黎人に殴りかかった。
黎人の背後の少女が小さな悲鳴をあげて目をつぶった。
黎人は仕方がないので背後の少女をひょいと小脇に抱えて、向かって来る男達を合気道の要領で投げ飛ばすと、投げ飛ばした男達の後ろにもまだチンピラのマフィアみたいな暴漢がいるので裏路地に入る様に逃げた。
そして、裏路地に入った所でビルの壁を利用して、飛んだ。
『きゃぁぁぁぁぁあああ!』
抱えている少女が叫んでいるが、勘弁願いたい。
一応暴力騒ぎを起こすのは日本ギルドオーナーとして避けたいのだ。
そのままビルの屋根、屋上づたいに飛び移って暴漢どもから逃げ出した。
追手が来ないのを確認してから、黎人は少女を降ろした。
少女は地に足がついて、安心したように息を吐くと、ガバッと顔を上げた。
『ありがとう、パパ!』
『おいおい、なんでパパなんだよ。会ったのは今日が初めてだろう?』
少女の急なパパ呼ばわりに、黎人は苦笑いで否定した。
『だって、私のお父さんは東洋人だって聞いたもの、パパに違いないわ!もう離さないから!』
少女はそう言って黎人の腕にしがみ付いた。
「おいおい、どんな理屈だよ……」
少女の言い分に、黎人はため息を吐くが、助けてしまった手前、これで終わりと放り出すわけにもいかない。
仕方がないので、今日の予定をキャンセルして、少女を連れ帰る事にする。
「パパ、おんぶがいいの!」
「日本語も喋れるのか」
黎人はため息をもう一度ため息を吐くと、少女に言われるがままおんぶをして宿泊しているホテルへ戻るのであった。
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