第268話 氷那の悩み
「ひまわりは左、永井は一歩下がって」
氷那の指示によって、3人の連携がスムーズに行われて、Dクラスのダンジョンにレベルを上げても苦もなく全滅させた。
後ろで見守っていた楓と翠も拍手をして労っている。
黎人は海外に行っており、その間は楓と翠が指導を受け持っている。
日によって紫音が魔法を教えるのは継続しているが、基本は楓と翠である。
永井が加わっているのは、河野が復帰するまでは、特課としての連携を学ぶと言う事でヒマヒナペアに合流しているのだ。
永井は、今の氷那の指示を受けて、以前の自分の指示の至らなさを実感していた。
永井としては、もっと効率よく、いや、手数を少なく魔物を倒す作戦を考えることができる。
しかし、今の自分のスタミナを考えると、これ程に疲れずに倒す事はできないだろう。
急がば回れとは言うが、氷那の指示は、手数を増やす事で体力を温存し、Dクラスダンジョンでの不測の事態に備えているように思える。
自分が以前グループで探索していたFクラスダンジョンとは違う。
難易度が上がるほど、無茶を強いる自分の指示が滑稽だった事を実感する。
勿論、過去のグループメンバーとは違い、氷那の指示は洗練されており、ただ周りの力に合わせてレベルを落とすのではなく、補い合う事で何倍もの効果を出せる計算された指示であった。
ステータスが上がったからこそ分かるのかもしれないが、ヒマヒナペアを見ていると、どれだけ自分が井の中の蛙だったのかと言う事がわかる。
河野が復帰してくるその日まで、2人に食らいついて、必死に成長しようと思うのであった。
別の日、氷那は焦っていた。
ひまわりは、あの出来事をきっかけに魔法が使える様になった。
アンチドートの他に、ヴェノムという毒魔法だ。
対して自分はまだきっかけも掴んでいない。
名前に氷の文字があるから、氷魔法を使おうとしているが上手くいかない。
それに、最近は永井直人も一緒にダンジョン探索をして指導を受けているのだが、彼がなんと先に魔法を使える様になってしまったのだ。
名前に属性の文字がないのに、河野と同じ魔法を使いたいという希望から、土魔法を身につけた。
楓が土魔法を使えるというのもあって、手本がある分覚えやすかったのかもしれないが、氷那も氷魔法から考えを切り替え、姉弟子達に色々と聞いたが、結局何も使えるようにはなっていない。
今日も魔法を使えなかったと肩を落とす氷那に、指導をしてくれていた紫音が声をかけた。
「氷那、この後時間ある?」
「え、はい。ありますけど」
「なら一緒に魔法の勉強をしましょう。氷那は色々聞いて回ってるみたいだけど絶対に感覚派じゃないもの。多分あなたに必要なのはこれよね」
そうして紫音が見せたのは何冊かの本。
『猿でもわかる理解』『猿でもわかる氷河期Ⅰ、Ⅱ』『猿でもわかる液体の仕組み』などの氷那がもともと愛読していた『猿でもわかる』シリーズの本であった。
『願ってもない追放後からのスローライフ?』
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