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『11月15日2巻発売!』願ってもない追放後からのスローライフ?  作者: シュガースプーン。
第七章公務員の弟子達

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第252話 ステータスを上げるリスク

永井が選んだのはソロの冒険者として今にしがみつく事であった。


士官候補生としては左遷されたが、ソロでの活動を勧められたと言う事は、これから始まる国家プロジェクトからは外れていないのだと、自身を無理矢理に納得させた。


自分が警察官を目指した理由は、日本の平和を守りたいと考えたからであった。


子供の頃にパトカーが好きな所から始まって、悪を成敗するヒーローに憧れた延長で目指した物だ。


その為に、警察になる為に必死で勉強した。


そして冒険者崩れなどステータスが上がった人間の犯罪が増えた事で、今回のプロジェクトが発足して、そのプロジェクトの一席をもぎ取った。


だけど、周りが自分について来れなかった結果マイナス評価を受けて、左遷されてしまった。


ただ、この左遷はまだ戻って来ることができると考えている。


なぜならプロジェクトから大きくはずされてはいないからだ。


プロジェクトに残ることができれば、後からでも業績を残して昇進は可能になるだろう。


このまま冒険者プロジェクトから外れて一般的な一課等に進む道もあったが、その道は選ばなかった。


今ある部署では、これからの日本に対応できなくなっていくだろうからだ。



指示を出して魔物を倒すよりも、単独で倒す方がFクラス(このレベルの)ダンジョンでは簡単だ。


見える場所の魔物を全滅させると、指導冒険者が拍手をして永井を褒めた。


「これくらいはできて当然です!」


「いやあ、初心者がこのクラスを1人で探索できるのは凄いんだよ。さすが警察官だなって思うよ」


ソロになって永井に付いたのはひょうひょうとしてパッとしない指導冒険者であった。


河野(こうの)さんはもう何年も指導冒険者をやっているベテランだと聞いていますが、上を目指すつもりは無いんですか?」


「ああ、俺はこれ以上は無理なんだよ。今は家族の為に必死に稼ぐだけだ」


この返事に、永井はため息を吐いた。


指導冒険者の河野はまだ40代前半で、これからステータスを伸ばせばまだまだ上を目指せるはずだ。


上のランクに行った方が家族を養うにもいい。


なのに、指導した冒険者達に上に進まれても頑なに魔石を吸収せずに初心者の指導冒険者をやり続けていると言うのだ。


そんな河野の事を、永井は正直軽蔑していた。


やる気のない人間なんだと。


だからそんな人間に指導されるのに嫌気がさしていたと言うのもある。


だから、つい言葉に出してしまった。


「家族の為を思うなら、もっとランクを上げるべきです。そうすればもっと家族の為に稼げるでしょう。怠けていい理由にはならない!」


永井の言葉に、河野は苦笑いだ。


「そうだな。ランクを上げる方が家族に楽をさせてやれるかも知れない。でもな、これは俺の我儘だがな、娘の成人式を見て、できれば孫の顔が見たいんだよ、俺は」


永井は河野の言い訳に、顔を顰めた。


それはランクを上げない言い訳にはならないからだ。


「そうだな。俺の事情を知らなきゃ分からないよな。俺はさ、去年、手術を受けたんだ。 癌の摘出手術だ。 冒険者は魔石を吸収してステータスを上げる。これによって、先天的、後天的に限らず障害が完治する事例がある。魔法で治癒能力を高めて怪我を早く治すこともできる。だが、一つだけ治せないどころか成長してしまう病がある。それが癌だ。俺が癌だと発覚したのはステータスを上げた後だった。今は社長の伝手もあって名医に手術してもらったから大丈夫なんだが、転移や再発の可能性もある。ステータスを上げれば、そのリスクは大きくなるんだ」


河野がステータスを上げない理由を聞いて、永井は衝撃を受けた。


その様な情報は知らなかったからだ。


「幸い、今の指導冒険者は普通に働くより給料がいいし、社長への恩もある。それに、俺のような人が増えない為にも、初心者に健診を勧めたり色々できる。俺には、今の仕事が天職なのさ。ま、永井は警察でしっかり健診を受けて来てるから心配はないだろうがな!」


そう言って河野は豪快に笑った。


ただ、上を目指すだけが全てではない。


永井が、自分の目標に疑問を持った瞬間であった。



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