第236話 準備
喫茶店を出ると、坂井は忙しいらしくさっさと帰ってしまったので、今は、黎人とひまわり、氷那の3人でダンジョンへと向かっている。
士官候補生は、冒険者免許の取得が義務付けられていたそうで、ひまわりと氷那は2人とも免許を持っていたが、黎人はいつもの様にGクラスダンジョンへと向かう。
冒険者免許を取るだけならば警官や自衛官は取りやすいだろう。
治安を守る職業としてそれなりの戦闘訓練を受けているはずである。
2人の様にエリートならばなおさらであろう。
しかし、対人をイメージした戦闘訓練とダンジョンの魔物は違う。
人型の魔物は似通った部分もあるが、それはランクの低いはじめだけである。
だから、結局は今ある癖を矯正する為にもGクラスダンジョンからのスタートが望ましいと黎人は考えている。
ただステータスが上がっただけではその辺りのゴロツキと変わらず、冒険者としての真価を発揮する為には上がったステータスを使いこなす行動を体に、脳に学習させなければいけない。
だから冒険者マネジメント会社ができた事によって日本の冒険者のレベルは急速に上がっているのである。
もちろんこれは戦闘面に限った事ではなく、学力などについても同じことが言えるのだが、話すと長くなるので今は置いておこう。
黎人はいつもの様に2人にインナースーツを渡してダンジョンへ入る準備をしてくるように伝えると自分も着替えをする為に更衣室へと向かった。
警察や自衛官に対して高価な物を渡す事を贈賄だと叫ぶ者もいるだろうが、黎人はそんな事は気にしていない。
世界冒険者法によって冒険者の武具の受け渡しにそういった事は否定され、特別なルールが決められている。
それはダンジョンと言う特殊な環境から命を守る為に決められている法である。
だからこれまで黎人が弟子達にインナースーツを与えたからと言って、インナースーツの価値に対しての贈与税などは発生していない。
ただし、受け取った武具を売却する場合にはその国の法律に従って、免除されていた税金などが全て上乗せされる仕組みになっている。
また、贈与でなく、個人間売買の場合、つまり金銭との取引の場合もその国での法に従うものとする。
つまり、お金に変えなければ警察だろうが政治家だろうが武具を渡しても問題ないのである。
黎人が準備を済ませてロビーに戻ると、そこにはひまわりの姿が既にあった。氷那はまだのようである。
「ひまわりは早いな」
黎人が話しかけるとひまわりは緊張した様子で反応を返した。
「は、はい。こう言った事はなれてますから」
ひまわりは緊張しているのかまだ話しかたがぎこちない。
そうこうしているうちに氷那も準備をして戻ってきた。
「あれ、毒島さんはもう終わっていたのですね。すみませんお待たせしてしまいました」
2人の様子に黎人は苦笑いである。
警察と自衛隊、所属は違えど同時に教える教え子として2人はバディになる事だろう。
急には無理だろうが、ゆっくりとでいいから、2人の間に絆が生まれ、仲良くなってくれる事を願いながら、黎人は2人を連れてゲートへと向かう。
とりあえず、初めは適性などを見る為に基本の武器は片手剣を持たせ、新しい弟子を連れた始まりのダンジョン探索が始まるのであった。
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