第235話 自己紹介
「黎人、そう言う訳やからこの2人の事何とか頼めやんやろか」
坂井はいつもの愛称をやめて黎人に頭を下げた。
黎人はコーヒーを飲み終えると苦笑いで返事をする。
「なんだよ、気持ち悪い。お前には世話になってるから2人くらい面倒みるさ。 あ、すいませんコーヒーのおかわりをください」
黎人は返事の途中で通りかかった店員を呼び止めて追加の注文をすませる。
「ほんまか! 助かるわ」
坂井はガバッと顔を上げると2人に口元を隠して聞かれないように黎人に耳打ちする。
「……実は書類上ではこの2人はちょっと難ありでな、だからこそお前に任せたいと思ったんや」
坂井は黎人の人を育てる能力を信頼している。
過去に《黄昏の茶会》を引き継いで、傘下のクランともども最強の集まりに育て上げたのは黎人の力があったから。
兄弟弟子だからと自分がリーダーを継いでいれば、日本最強どころか、傘下のいないせいぜいAランククランで終わっていただろうと思っている。
今日集めたのは士官候補生の中でも一癖あり、普通の指導では潰れてしまいそうだと思った《《3人》》だった。
ただ、磨けば光る。このまま他に回すのはもったいないと思い、士官候補から外れそうだった所を坂井が拾い上げた候補生だ。
それに、坂井が総理大臣である黒川を育て、この国を冒険者の国にしようとしているのは日本をよくする事は勿論だが、《リーダー》である黎人の意思があったからだ。
だから、それから法の中心を担う警察と自衛隊の冒険者部隊には、黎人の弟子を据えたいと思い、ピーキーだが伸び代のありそうな3人を選んだつもりであった。
イレギュラーな事故に、自分の見る目に自信がなくなりそうだが、後になって発覚するよりもマシであったと思う事にする。
「それじゃ、2人には自己紹介してもらおか」
坂井の言葉を聞いて、グラタンを食べていた少女は慌てて口の中のグラタンを飲み込んだ。
「はい。毒島ひまわり警部補です、よろしくお願いします」
グラタンを食べていた女性が頭を下げて自己紹介を終わらせると、もう1人の女性は急に立ち上がった。
「陸上自衛隊二等陸曹小柳津氷那であります。ご指導よろしくお願いいたします」
綺麗な敬礼と共に店に女性の声が響いた。
幸い昼過ぎで、他の客が居なかった為迷惑は少なかっただろうが、店員はギョッとした顔でこちらを見ている。
「元気なんはええけど周りの迷惑も考えよな。えらいすいませんなあ」
坂井が黎人の所におかわりのコーヒーを注ぎにきた店員に代表して謝った。
店員がコーヒーを注いで戻っていくと、今度は黎人が自己紹介をする。
「俺の名前は春風黎人だ。今日から2人の師匠になる事になった。しっかり面倒を見るから安心してほしい。 とりあえず、食事が終わったらどんな風に指導していくのか軽くダンジョンにでも行ってみようか」
自己紹介も終わり、黎人のひまわりと氷那への指導が始まるのであった。
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