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『11月15日2巻発売!』願ってもない追放後からのスローライフ?  作者: シュガースプーン。
第六章お弁当屋の七番弟子

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第226話 個人の部

団体戦が終わって翌日は個人戦が始まる。


今年の新潟代表は亜夢が代表になっていた。


もう1人他校の生徒がいるが、今は置いておこう。


個人戦は、昨日行われた団体戦とはまた違った雰囲気がある。


個人の強さが物を言うので団体戦とは違った選手も出場してくる。


順調に勝ち抜き、亜夢は個人でも決勝にやって来た。


亜夢は、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


昨日は団体だった為、仲間と一緒にいた分、気持ちに余裕があった。


だけど今日は自分1人だ。


この半年で、自分は成長したと思う。


無駄なプライドを捨てて、柏木のアドバイスを受け入れて、全国の舞台へとやってきた。


目標は優勝。


これは、私の気持ちのケジメでもある。


意地を張って柏木を認められなかった自分。


分かっているつもりであったけど、妹の言葉に気づかされた。


柏木は、何も剣道を辞めたくて辞めた訳ではない。


家庭の事情や、生活環境がそうさせたのだと、私も妹に言われて、きちんと理解した。


去年私が柏木に目を掛けたのは、センスがあるとかそんな事ではなかった。


誰よりも負けず嫌いで、目標はインターハイだと大見栄をきって先輩達に笑われても怯まない。その意志の強さがあったからこそ、柏木の将来に期待したのだ。


だからこそ、勝手に裏切られたような感覚に陥って意地を張った。


理解すれば、きっちりとした目標があった柏木がマネージャーになる選択をした事は彼女に取って悔しくないはずがなかった。


それでも、家族を支える為に彼女は冒険者になり、剣道というスポーツを辞めたのだ。


辞めて尚、マネージャーをするのは柏木の未練なのかも知れない。


これは、柏木に聞いた訳ではなく私の想像だ。実際にそうなのかもしれないし、考えすぎた見当違いの考えなのかもしれない。


でもそれは関係なかった。


柏木がインターハイを目的にしていたのは事実で、冒険者になって剣道を諦めたのも事実。


だから私は、マネージャー、いや、コーチとしての彼女に、私がインターハイで優勝する姿を見せると決めた。


冒険者になったから質の良い指導ができたとか、そんなのは関係ない。


彼女も頑張っていれば、こうやってインターハイの舞台に立ち、優勝ができたかもしれないという所を見せたかった。


正直、柏木や妹が、冒険者として先に成長する事に、焦りを感じない訳ではない。


しかし、私は頭が固い性格だから、こうやって、自分が決めた事をしっかりやってからでないと前に進めない。


「亜夢先輩、硬くなりすぎです。ちょっとリラックスしましょうか」


「お、おい!」


柏木が防具をつけた亜夢の肩を掴んで、ぐわんぐわんと体をゆすった。


冒険者である柏木の力に亜夢は踏ん張りが効かずにタタラを踏む。


「お前な!」


「先輩、面の上からでも眉間のシワが見えそうでしたよ? 考え事は終わってからにしましょう。大丈夫です、ここで負けても、私がいーこいーこしてあげますから」


「だからお前は____」


「ほら、はじまりますよ?」


亜夢の言葉に聞く耳を持たず、柏木は背中をポンと叩いて監督席へと戻っていった。


あの剣道部での騒動以降、指導を通して柏木との仲は先輩後輩と言うよりも共に目標を目指す仲間といった雰囲気が強くなり、それに妹と仲がいいせいか、私の扱いが雑になったと言うかなんというか。


それはさておき、亜夢は全身からいい感じに力が抜けて、自分でも、最高のコンディションで試合が出来そうな気がする。


審判の指示に従って礼を取り、試合場の中に入る。


深呼吸をしながら竹刀を合わせ、インターハイ、決勝戦が始まった____




この日、松井亜夢は剣道インターハイでの個人優勝を決めた。


試合が終わった後、面を外した亜夢に、風美夏がハイタッチやグータッチではなく、頭にいーこいーこをして、自分の想像していた優勝を決めた感動のシーンと違った事に、亜夢が風美夏に文句を言ったのはまた別の話である。


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