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第192話 騒動

勢いよく体育館の扉を開けたのは木村と松井であった。


「お前ら、やめろ! 何やってるんだ」


松井の声に皆が動きを止めて入り口を見る。

気がそれて勢い余った何人かが竹刀をぶつけて竹刀を落とした。


「これは、どう言う事なのかしら?」


木村が剣道部の3年生に向かって質問した。


「ち、違うんだ! 私はちょっと脅かして分からせようとしただけで本気でやるつもりは無かったんだ。アイツらが勝手にやっただけで……」


竹刀は持っているものの、風美夏に攻撃していなかった剣道部員が言い訳を始めた。


どんなに言い訳を重ねようと、後輩を人質に風美夏を呼び出した事実は変わらない。


しかし、先輩に裏切られた剣道部に関係のない生徒はその言い訳にキレた。


「はあ? 先輩も柏木がムカツクって言ってたじゃないですか! しめるから手伝えって。それに、夏帆だってコイツが部活に口出しするから鬱陶しいって言ってたよね!」


竹刀を持って風美夏を襲ったリーダー格の生徒の言葉に反応したのは、端の方で縮こまる人質にされた生徒であった。


「わたし、そんな事言ってない。柏木さんの指導で部活が厳しくなって大変だけど、強くなってるのがわかって充実してるって言ったんだよ」


「はあ?厳しくて大変なんじゃん! 充実してるとか意味わかんないんですけど!」


部活(スポーツ)をやっていない人間に部活(スポーツ)の楽しさを説いても分からないだろう。


それに、この生徒は自分がムカツクんだから周りもムカツクと思っていて当然と考えている様であるし……。


「クソ!」


しまいには逆ギレして持っていた竹刀を振りかぶって夏帆と呼ばれた生徒へ向かって動き出した。


冒険者の風美夏とは違って無防備な生徒、それも周りには同じ様な生徒が集まっている。


素人が振り回す竹刀であっても、下手をすれば大怪我になりかねない。


風美夏は、落ちていた竹刀を拾い上げると、一足飛びに移動して振り下ろされる竹刀を逆袈裟斬りに切った。


力任せにぶつけて、破裂した竹刀の破片で他の生徒が怪我をしない様に、最近使える様になった風魔法の刃を竹刀に薄く纏わせて、スパッと切断した。


突然現れた風美夏と切られた竹刀に、驚いたリーダー格の生徒は腰を抜かして竹刀の手に持った部分的を放り投げて尻餅をついた。


「え、あ、あ……」


風美夏に見下ろされた事に恐怖を覚えたのか、腰を抜かしたまま言葉を失った。


誰も話さなくなって、ひと段落かと思った所で体育館に声が響いた。


「こらぁ! お前ら何やってるんだ!」


体育館に響いた男の声は、剣道部顧問の長山であった。


「おい、これはどう言う事だ? 柏木、お前竹刀なんかもって、冒険者が手を出したら大問題だぞ! 学校も監督責任に……。剣道部は即刻──」


「せんせー!」


顧問が怒りを叫ぶ中、長山に軽い感じに話しかける声があった。


体育館の入り口にいた松井星空であった。


星空は、風美夏を体育館前で止めた後、何かを考えてスマホで一部始終を撮影していたのだった。


「せんせー、はやとちりは厳禁ですよ。コレは剣道部の皆さんが冒険者の動きを見て練習に役立てようとしてたんですよ。昼休みにまで練習するなんて熱心じゃないですか。あれ? もしかして何に使うか確認せずに鍵を渡したなんて事ありませんよねぇ?」


動画見ます? とでも言いたげにスマホをぷらぷらと振った。


長山は顔を赤くして「そんな事はわかってる! 顧問として様子を見に来ただけだ!」と言ってドスドスと足跡を響かせて帰って行った。


助かったと思って長山を見ていたリーダー格の生徒は顔を青くした。


「ちゃーんと動画に撮ってあるんですよぉ。これ、余分な所カットしたら冒険者を襲う一般人だよねぇ。何年か前にそれで大変な事件になってたけど、知らないのかなあ? まあ私達まだ小学校か中学校に上がりたてだったし? 知らなくてもしょうがないのかなぁ?」


リーダー格の生徒だけで無く、竹刀を振り回していた生徒や剣道部の3年生も顔が青ざめた。


「せ、星空、私達友達でしょ?」


「はぁ? 勝手にあんた達が話しかけて来るだけじゃん。鬱陶しいだけだよ」


星空はいい笑顔でそう切り返した。


「でも、色々問題にしたら剣道部が活動停止とかになっちゃうから、あんた達が縮こまって学生生活を送ってるうちは黙っててあげる。でも、うざいと思ったら速攻でばらまくから。わかったらもう行けよ! あ、私が言う事じゃ無いか。柏木さんいい?」


星空の迫力に圧倒されつつ、風美夏は頷いた。


そして、剣道部を残して体育館から出て行った。リーダー格の生徒の歩く姿はガニ股だったとかなかったとか。



そして、体育館には剣道部と、星空が残った。


「それじゃ、お姉ちゃん、私ももう行くね。これ、動画のSDカード」


星空は、亜夢にSDカードを渡して去って行った。



「昼休みの残りで足りる話では無いと思うので、今日の部活の時間をミーティングにします。みんな、怖いかも知れないけど頑張って来てくれるかな」


人質にされた部員に木村が優しく微笑んだ。


昼休みの騒動は一度解散になり、放課後に話し合いのミーティングが開かれる事となった。















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