176話パーティー
ゲストも全員集まり、始まったパーティーは立食形式であった。
皆、それぞれ気の合う者同士無礼講で楽しく過ごしている。
「エヴァ、見てみなさい。綺麗に巻けたわ。このサーモンとイクラの親子巻き。最高だと思わない?」
「甘いわね、レベッカ。私はさっき火蓮に教わったのよ。この甘い玉子焼きと牛しぐれの組み合わせは最高だって」
「なにそれ。やっぱり日本人が考える組み合わせは最高ね!次はそれを巻きましょう!」
イギリス組がこうして手巻き寿司の楽しさの虜になっていたり。
「で、2人は最近はどうなんですか?」
「やっぱり遠距離恋愛ってたいへんですか?」
と、火蓮と紫音が楓と翠の最近の恋バナに花を咲かせており、博多の3人娘がその話を興味津々に聞いていたり。
大人たちが楽しそうに酒を飲み交わしていたり。
その光景を、楽しそうに黎人1人で眺めていた。
「やっぱりあなたは皆に好かれる才能があるわね」
黎人の側にやって来たのは、マリアであった。
「そうだとしたらあの人のおかげだよ。人として欠けていた俺に仲間の大切さを教えてくれた」
「ふふ。そう言って貰えて、あの人も喜んでいると思うわ」
その後は、会話もなく、2人は楽しそうにパーティーを楽しむ皆を眺めながら静かにグラスを傾けた。
「あ、師匠。こんな所にいないでこっち来てくださいよ!」
「黎人、私の作ったローストビーフはもう食べた? 紫音に聞いたんだけど、レタスに巻いてゴマだれで食べても美味しいの!」
火蓮とエヴァに連れて行かれる黎人を微笑ましく見守りながら、マリアは優しく手を振って見守っていた。
黎人がパーティーに戻ると、黎人を中心にパーティーはいっそう盛り上がった。
パーティーも終盤に差し掛かると、ケーキが登場した。
ビュッフェ形式に並ぶケーキを、皆思い思いに取っていく。
少し落ち着いた頃、黎人の所に、弟子達が勢揃いしていた。
明水子と一緒に心と瑠奈も一緒である。
「さて、今回のパーティーは年末前だから少し早いけどクリスマスもかねてるのよ」
「そう、私達から明水子達にプレゼントを用意してるのよ」
まるで、本当の姉や兄が、サプライズで1番下の妹を祝う様に、火蓮と紫音がそう切り出した。
「ほら、師匠、お願いします!」
「黎人さん、お願いします」
黎人が父親を押し出すかの様にグイグイと押されて前にでる。
「急かさなくてもにげないだろう? 明水子、お前は自分の殻を破って大切な友達を作った。すごい成長だと思う。 3人の絆がこれからもずっと続く様に俺達からお前達3人に少し早いクリスマスプレゼントだ」
黎人が空間魔法からケースを明水子、心、瑠奈の前に取り出すと、3人はそのケースを覗き込んだ。
ゆっくりと開けられた箱の中には3つお揃いのブレスレットが並んでいた。
既製品ではあるが、高校生の憧れの《twilight.M.Azure》のブレスレットであった。
「うわぁ」
「すごい」
「師匠、これ、本当に貰っても良いんですか?」
3人は高価なプレゼントに驚いている。
「明水子ちゃん、それで驚いてたら師匠の弟子はやっていけないわよ」
「弟子の証はそれとは比べ物にならないから」
翠とエヴァが苦笑いでそうアドバイスする。
それをきいて、3人は恐る恐ると言った感じでブレスレットを受け取って腕に着けた。
「ありがとうございます。ずっと大切にします」
「私も、大切にします!」
「うん。ブレスレットも、友達のキズナも」
3人はブレスレットを着けた手を前に出して、その手を重ねてニコニコ顔だ。
パーティーはまだまだ終わらない。
楽しい時間はまだまだ続くのだった。




