167話第一印象
「明水子ちゃん、明水子ちゃん、すごいよね!」
「え、あ、うん」
翠や楓と言った憧れの人物とダンジョンを探索し、連携して魔物を倒した心はテンション高く明水子に話しかけるが、明水子は反応に困ってとりあえず頷いた。
今日は明水子も冒険者免許を取得して初めてのFクラスダンジョンの探索であるが、これまでGクラスダンジョンでしっかりとステータスを上げて最奥も攻略した後なので、Fクラスダンジョンの入り口は危なげなく探索出来ている。
とりあえず周りに出現していた魔物を倒し終わったので、軽い休息をとりながら会話しているのである。
「所で、心ちゃんは明水子のBTubeを見ていたんだって?」
「あ、はい。たまたま私が所属してる冒険者パーティでBTubeの話題が出たんです。
クラスでそう言うのが人気だって。
それでたまたま初めに見たのがアリスちゃんだったんです!メイクとかしていつもと雰囲気違うけど、これ明水子ちゃんだってすぐ分かりました」
「アリス?」
楓の質問に心が元気よく答えるが、明水子のBTuber名を知らない2人が疑問の声を上げた。
明水子は、恥ずかしいのか顔を赤くしている。
「アリスは明水子のハンドルネームだな。
それで、よく明水子だってわかったね。明水子は誰にも気づかれていないって言ってだけど?」
黎人の質問にも心は楽しそうに返事を返す。
「わかりますよ。明水子ちゃんは私の憧れだったんですから」
「え?」
「クールで、一匹狼。強くてカッコいい。
ちょっと話しかけづらいけど、私とは真逆で憧れの存在だったんです」
「べ、別にそんなんじゃ無いし」
「あ、照れてるー。
あの時声を掛けて良かった。こんなに仲良くなれたし、ただの恥ずかしがり屋で可愛い所もあるって分かっちゃいました」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にする明水子を揶揄うようにほっぺをつつきながら、心は嬉しそうに馴れ初めを語っている。
「でも、私ももっと頑張らなくちゃですね。
こうやって一緒に探索してるけど、明水子ちゃんの方が強いです。Fクラスダンジョンは初めてのはずなのに」
いつの間にか心の顔は真剣な目をしていた。
「私はバイトでパーティリーダーしてるからたまにしかこうやって明水子ちゃんと探索できないけど、このままだと置いていかれちゃうからね」
「うん…」
「明水子ちゃん、嬉しいのは分かるけどそこはね、うんじゃなくて負けないよって言うのよ」
翠が2人の会話を微笑ましく思いながらも、ついつい苦笑いでツッコミを入れてしまった。
クールで強くてカッコいい。近づきにくいと周りに思われて、本人の人見知りもあってなかなか友達ができなかった明水子にも、こうして友達が1人できた。
友達と切磋琢磨して、2人で成長していける未来もある。
以前の明水子なら、声を掛けてもらっても、あたふたして何を話しかけられたのか理解せず、ましてや後日に自分から声を掛けることもしなかっただろう。
「そろそろ休憩も終わりかな。ほら、また魔物が現れたぞ?」
休憩中の話で明水子と心は気合いが入ったのか、その後の探索はいつもより多くの魔物を倒していたとか。




