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161話患者

ピッピッピッ


病院の個室で、心電図が規則正しく音を鳴らしている。


しかし、この患者はずっと眠り続けたままだ。


日本が機能を停止していた頃、この患者は暴漢に襲われた。

相手は浮浪者で、私怨があったとされているが、捕まった浮浪者は譫言ばかりで要領をえず、被害者も目覚めない為に事件の全容はあまり分かっていない。


彼女の体には無数の傷跡が残っている。

襲われた時に果物ナイフで滅多刺しにされた為だ。

発見場所が冒険者マネジメント会社の施設周辺だった為に治癒が得意な冒険者がたまたまそこに在籍していた為、かろうじて命を取り留める事ができた。


しかし、冒険者の治癒も万能ではなく、体には刺された後が一生傷として無数に残り、当時の恐怖かなんなのか。原因が分からないままずっと目覚めていない。


病室に、1人の女性が見舞いにやって来た。

彼女は患者の叔母だ。


未婚の彼女は、この患者の事を娘の様に可愛がり、大切にして来た。


あの騒動の後、自身は職を追われたそうで、毎日の様にこの病室に通っている。


彼女は、ベッドに寄り添って患者の傷跡が残る頬を撫でた。


「可哀想に。怖かっただろうね。女なのに、こんなに傷まみれになって、目覚めるのも怖いんだろうね…」


病院の個室で、彼女の声だけが静かに響く。


「おばちゃんがなんとかしてあげるからね。

議員時代のコネを使ってなんとか話が付けられたよ。

試験中の新薬らしいんだけどね、体を冒険者に負けないくらい強くして、体の傷も綺麗に治っちゃうみたいだよ。

もうすぐここに来てくれる。

だからね、早く起きようね」



言葉が終わった所で、病室のドアが開いた。


「いやぁ。お待たせしてしまったかな?」


「大丈夫よ。それより、早く、この子を目覚めさせて!」


「そう焦らないでくださいよぅ。ちゃんと持って来てますから」


「もう私にはこの子しか居ないの。ねえ、早く!」


「最後の確認ですよ。貴女はこの患者を目覚めさせる為なら全てを捧げると言いましたねぇ?」


「ええ。だから、私はあなた達に家を処分してまで私財を全て渡したじゃない!」


「ええ。だからちゃーんと持って来てますよ。ほら、これがエリクシール。人間を進化させるための薬、その過程で全ての傷は完全に治癒するでしょう」


「じゃあ、早く」


「ふふふ。わたし達はちゃんと貴女の全てと引き換えにこの薬を使ってあげるのです」


「なに、まだ何か要求するの?もう私には何にもないわよ!」


「あるじゃないですかぁ?貴女の大事なその患者と、貴女の命がぁ」


その日、病室から1人の患者が居なくなり、騒ぎになった。

警察にも相談して捜索するも、患者を見つける事はできなかったという

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