156話少しの成長
師匠に教えてもらう様になって数週間、私はダンジョンの自分が配信をしていた辺りまで進んで来ていた。
と言っても、私が来ていた所なんて入り口から少し進んだ所だけど。
ちゃんと教えてもらう様になって、ステータスの重要さと、カメラを持ってのダンジョンの危なさが理解できてきて、私は、なんて危ない事をしていたんだろうと思う。
それが理解できるのも、ステータスが少し上がって来たからだろうか?
そういえば、最近すこし学校に行くのが楽しみだ。
それは、同級生の子とお話しする様になったから。
お話できるのは心ちゃん1人なんだけど…
島宮心ちゃん。私の配信を見ていてくれたみたいで、前に話しかけてくれた同級生だった。
最初に話しかけてくれた時は動揺して会話する事ができなかったけど、最近になって勇気を出して話しかけてみたのだ。
心ちゃんはすごく気さくな女の子だった。
「柚木さんってさ、クールでカッコいいイメージだったけど、なんかかわいいね」
はじめて話した時はそう言われて固まってしまった。
私がゆっくり話そうとするのも、ちゃんと聞いてくれる。
そして、すごく褒めてくれる。
私は恥ずかしくて天邪鬼な事を言ってしまうけど、怒らずに笑ってくれる。
この前は、はじめて一緒にお昼ご飯を食べた。
心ちゃんは友達が多くていつもは他の友達と食べているけど、私と2人で食べてくれた。
家族や師匠ほどスムーズに話せる訳ではないけれど、心ちゃんのお陰で学校が少し楽しく思える。
心ちゃんは、アルバイトプログラムで冒険者をしているそうだ。
私の配信を見てアルバイトプログラムを始めたみたいで、このまえは私をパーティに誘ってくれたけど、他の人達もいる所に入っていくのが怖くて、断ってしまった。
でも、私は今師匠に教えてもらってるんだから、勝手する事もできないよね。
でも、断った事で嫌われてないかな?少し心配だ。
私は不安をかき消す様に、目の前の魔物を倒した。
「力が入りすぎだな。考え事しながらダンジョンに潜るのは危険だからいくらマージンを取っていながらでもやっちゃダメだ」
「はい、ごめんなさい」
「で、何を考えていたんだ?」
師匠には私の考えなどお見通しのようだ。
学校での不安を相談すると、師匠は私の頭をポンポンと優しく撫でながら相談に乗ってくれた。
「そんなに焦らなくていいんだよ。ゆっくり歩み寄っていけばいい」
「でも…」
「友達は頑張って作るもんじゃないさ。
無理をして作った友達は後々辛くなるだけだ。ゆっくりでいい。その子とも気を使わず、自然に過ごせる友達になれたらいいな」
「うん」
師匠に教えてもらう様になって、魔石を吸収してステータスを上げて、少しずつ私は変われている実感はある。
師匠が言う様に、無理をせずにゆっくりと頑張っていこう。そう思った