148話新コンテンツ
黎人は博多にやって来て、お昼ご飯に明太子食べ放題の定食で存分に明太子を楽しんだ後、腹ごなしにダンジョン内の視察をする事にした。
今回はGクラスダンジョンの視察をする事にして福岡第六支部へと向かう。
違和感を覚えた人も居るのではないだろうか?
黎人は冒険者免許を剥奪されており、Gクラスダンジョン以外には入れないはずなのに《《今回は》》と言っているのはおかしいのではないかと。
イギリスの時の例を参考にしてみよう。
イギリスではイギリスの世界ギルド以外を管理しているイギリス王室が、黎人に特別処置として特例で王室が身分を保証し、冒険者免許が無くても入場を許可する事で、王室が管理するAクラスダンジョンまでを自由に探索する事ができた。
黎人は、冒険者免許を持っておらず、ブラックリスト入りしている為に冒険者免許の再取得はできない状態である。
しかし、日本のギルド、世界ギルド管轄の日本支部以外の冒険者ギルドは黎人がオーナーの為に黎人は特例として自身の冒険者免許無しでのダンジョン探索を許可しているのである。
なので、日本支部が管理するダンジョン以外は入れる様になったのである。
所で、それならなぜGクラスダンジョンへ向かうかと言う疑問もでる。
Gクラスダンジョンでは黎人には腹ごなしにもならないであろう。
いや、この場合はAクラスダンジョンでも同様と言えるのかもしれないが。
黎人が日本を、いや世界を翻弄したあの出来事以降、日本での冒険者のイメージは変わった。
冒険者ギルドが民営化され、冒険者マネジメント会社と連携してダンジョンを定期的に見回る事でより安全に利用できる様になり、ダンジョンの雰囲気も変わって来た。
それに、地方ギルドを統合した事によって、Gクラスダンジョンに入る為にも冒険者仮免許というカードの発行が必須になった。
これにより、Gクラスダンジョンでも入場者全員の行動が記録される様になった。
これを何故今まで国や市町村がしてこなかったかと言えば、ただの怠慢であろう。
とは言え、そのおかげで、Gクラスダンジョン内での隠れた犯罪は激減した。
とは言え説明をきちんと読んでいなかったりしてやらかす人間はまだまだ居るのだが。
しかし、こうして犯罪は徐々に減っていき、より良いギルド、ダンジョンが作られていく。
冒険者が国民に受け入れられ、人気の職業の一つになって来たからこそ新たな問題も浮上する様になって来ていたりもする。
完全にトラブルがなくなる事は難しく、そのための対応に、冒険者ギルドもどんどんアップデートしていかなければならないのだ。
黎人は受付で入場登録を済ませた。
仮免許や冒険者免許では無いカードを出されて、受付は訝しんだ顔をしたが、そのカードの意味を理解して驚いて頭を下げ、上司を呼ぼうとしていたが、黎人は受付嬢に落ち着く様に言って、入場登録をしてくれればいいと指示してダンジョンへ向かった。
Gクラスダンジョンは今までより沢山の人で賑わっていた。
日本でも、仮免許をとって入場してみようと言う人達が増えたのと、冒険者マネジメント会社がアルバイトプログラムという仮免許専用の事業を始めたのが主な要因だろう。
黎人は、ダンジョン内を見て回るが、調子に乗って奥に進みすぎて危なくなっている人などはいない様だった。
そう思っていたのだが、最奥付近で1組のグループを発見した。
4人組のグループで、ダンジョン最奥に関わらず、冒険者の雰囲気とは少し違っていた。
黎人は初めて見たと、興味を持ってそのグループを覗いていた。
そのグループから、1人が離れて黎人の方にやって来た。
「お、見学か?
今日は俺達はコラボで東京から来てるんだが、コラボを見れるのも運がいいし、俺達5万人超えだからお兄さんは相当運が良いね」
そう言って近寄って来た男は黎人に声をかけると、「カメラの前には出ないでくれよ」と言ってカメラを構えた。
「どうも!新進気鋭のBTuberオカケンの岡本と」
「はーい!ケンケンだぜ!
今日は福岡コラボ!博多の美人BTuberとのコラボだ」
「今日も頑張るけん、見にこんね。アリスだよ!
オカケンさんこっちにもよろしくお願いします。みんなー、見えよる?始まったよー」
冒険者の地位が上がり、人気になった事で新しいコンテンツとしてダンジョン配信者と言うダンジョンで動画配信を行う人達が出て来た。
今の所、Gランクの比較的安全な場所でしか行われていない配信であるが、ダンジョン配信というジャンルが大きくなっていけば、冒険者免許を取って上のランクを配信する人達も出て来る事だろう。
中には、一般の入場者に迷惑をかける迷惑系と呼ばれる配信者もいるが、以前の冒険者と同じ様に配信者全てが悪いわけでは無い。
新しい可能性として、面白いコンテンツだと思う。
「それでは、今日のダンジョン配信は、アリスさんと一緒にGクラスダンジョンの最奥にチャレンジしていくよ!
ケンケンとアリスさん意気込みはどうだい?」
「この前の中層は楽勝だったから一気に最奥だけど、あの調子なら楽勝だと思うぜ」
「わー。皆んなコメントありがとう!
そうやよ。多分BTube初の最奥配信だよ!
頑張るけん応援してねー」
どうやら、1組かと思ったが、2組だった様だ。
3人組で2人が演者で1人がカメラで撮影を行うグループと、1人でカメラを片手に持って配信している少女のコラボ撮影みたいであった。
挨拶を済ませ、意気込みを語ると最奥へ向けて歩いていく。
黎人は、撮影と言う新しいコンテンツに興味を惹かれて見学の為に一緒について行く。
しばらく歩くと、魔物とエンカウントした。
「ちょっとデカいだけでこれまでと変わんないぞ!楽勝だな」
「調子に乗るな!ケンケン」
「頑張るばい!でも、私まだまだやけんオカケンさん達頼りにしちょるけんね!」
魔物が動き始めて戦闘が始まった。
「な、おい、今までより素早いぞ」
「それに硬い!」
「え、ウソ!ちょっと待って」
不利ながらもなんとか戦うオカケンの2人に対して、実力も少し劣る上に片手でカメラを持っているアリスは防戦一方である。
「くそ、これは無理だ。撤退しよう」
「バカ、配信中だぞ!そんなカッコ悪い事できるか!」
「命あっての物種だろ!また再戦配信しよう。難しさを伝えた上で攻略した方が難しさが伝わるとプラスにとろう」
「く、分かったよ!」
「アリスさんも撤退するよ!」
「え、今、ちょっと無理〜!」
タイミングを見て離脱したオカケンに対してアリスは防御に手一杯で取り残されてしまう。
「おら、サトシ、逃げるぞ!」
カメラマンも、いつの間にか撮影を終了してオカケンと共に逃げ出した。
アリスだけ、1人で取り残された事になる
「嘘〜!こんなん無理〜」
目の前に迫る魔物にアリスは絶望の声を漏らした。
配信を見ていたリスナー達の絶望のコメントが物凄いスピードで流れて行く。
「危なっかしいな」
もうダメかと思ったその時、魔物とアリスの間に見学していた黎人が割り込み、いつの間にか取り出した剣の一薙ぎで魔物を全滅させた。
その光景に、アリスは言葉を失ってしまう。
「大丈夫か?自分の手に負えないところまで来るのは命がいくつあっても足りないぞ」
「え、あ、ありがとうございます。もう、ダメかと思いました」
黎人の言葉に助かった事を実感してホッとしたアリスは、今までの配信用の声ではなく、常識のある言葉でお礼を言った。
「とりあえず出口まで送ろうか」
「はい。ありがとうございます。あ!」
アリスは配信中だった事を思い出し、素で話している事をしまったと思って慌てて配信を切った。
出口まで送る黎人の背中を、真剣な目で見ながら、アリスはついて行くのだった。
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