143話税政策
有安総理大臣の会見の後行われた選挙の結果、与党と野党はまた入れ替わり、前総理大臣の黒川がもう一度総理大臣となった。
黒川が総理大臣に就任して1番初めに行ったのは日本が冒険者にかける税金改革だった。
手始めに魔石にかける税金を15%に引き下げた。様子を見て、10年後にはさらに引き下げられればいいとも発表している。
そもそも、税金が足りずに行政が運営出来ていないのにと引き下げに反対する野党も大勢いた。
しかし、今の黒川内閣を止める事はできなかった。
見方を変えれば税金とは国が行う一つの商売である。
例えば、理美容室で一昔前に10分1000円カットと言うものが話題になった。
電車の待ち時間に終わるし、何より安いと言って、一定の支持を集めた。
反対に、安すぎて不安だと言う意見もあった。
大体平均すれば4000〜5000位がカットの平均金額だった為、1000円カットは10分で終わらす為に手を抜かれるのではないか?信用できない。と言った意見も多かった。
では、理論上この二つはどちらの方が儲かるのだろうか?
10分1000円と言う事は60分6000円と言う事になる。
10分で終わらせる為にシャンプーもしてくれないが、安いから《《しかたない》》だろう
一方、5000円のカットはシャンプーして乾かしてをする為に企業としては時間換算として60分枠で予約を取るのだそうだ。
そうすると、60分で5000円。しかも、シャンプーをする為にシャンプーをしない1000円カットとは違って余分な経費が掛かる。
お分かりだと思うが、10分1000円の方が多く稼ぐ事になる。
薄利多売の理想的な図式だろう。
勿論、牛丼チェーン店とブランド牛を牛丼で1000円や1500円で提供する店の比較も同じである。
早い安い美味いが売りのチェーン店とブランド牛の牛丼を比べて、ブランド牛より味が劣る!と怒る人はいないだろう。
そんな人はそもそもチェーン店に来ないと思う。
提供時間の話をすれば、おそらくではあるがチェーン店の時間にブランド牛を扱う店は敵わないだろう。そもそも、求められてもいない。
そうすれば、材料費を加味した結果、牛丼チェーン店の方が多く売り上げてもなんら不思議ではない。
薄利多売とは立派な商業戦略である。
だとすれば、今回の騒動で冒険者の数は増える傾向にあり、マネジメント会社の影響でこれから高ランクの冒険者も増えていくだろうと予想できる。実際、海外に流れてはいるが、既に増え始めている。
だとすれば、日本からの冒険者の流出を防ぎ、海外に流出した冒険者を引き戻せたとしよう。
そうすれば、日本に冒険者が増え、魔石の取得量も増える。
結果的に税率が低くなっても税率が高い時よりも税収は上がる算段なのである。
これは、昔に行われた少子化対策と同じである。
少子化対策は人口の減少により税収が減り、税率を上げて補填するしかない中で、将来の人口を増やす事で将来的に税金を上げずに済む様にする対策であった。
少子化対策はダンジョンの出現による混沌戦争における戦死での人口減少や、その後の魔石による税収の増加により頓挫してしまったが、今回場合は、その地盤が既に整えられているとも言える。
世界平均では魔石の税率は25%。それよりも10%低くなった事になる。
この税対策がどうなるのか、黒川政権の腕の見せ所である。




