134話改革の差
冒険者ギルドは民営化され、内部改革が色々と進んでいる。
そして業務連携している《アドベンチャラーエージェンシー》他、冒険者マネジメント会社の業績は鰻登りだった。
これまで、個人事業主だった冒険者と言う職業を企業化し、冒険者を管理し始めたのがこの事業である。
冒険者ギルドと何が違うのかと思うかもしれないが、冒険者ギルドはあくまでもダンジョンの管理会社なので、冒険者を管理していると言う訳ではない。
ダンジョン内での迷惑行為があった際、冒険者法に従って冒険者を訴えて来たに過ぎない。
だからこそ、海外では国と世界ギルド、そして上級冒険者が所属するクランが犯罪を監視、そして冒険者の成長を援助してきた。
しかし、日本はそこから国と言うピースが抜け、世界ギルドは機能不全を起こしていた。
その結果、システムによる監視がないGクラスダンジョンは無法地帯と化し、そこでステータスを上げたならず者が低ランク冒険者となる事で犯罪者の温床となっていた。
上級冒険者になればそう言う冒険者が少なくなっていたのは《黄昏の茶会》傘下のクランをはじめとした上位クランが冒険者を管理する事で治安を保って来たためだ。
しかし今回、その上級クランも海外に移った事で冒険者の治安は崩壊してしまうはずだった。
そうなれば今の日本の政治家の思う壺だっただろう。
しかし、自分の会社で起こり得る犯罪を黎人が許すだろうか?
気づいているであろうが冒険者マネジメントも黎人が関わる事業である。
これは黎人が経営している訳では無く、発案とコンサルタントをしているだけだが。
勿論、マネジメント会社ができたからと言って冒険者がはいそうですかと入社する訳ではない。
会社として成り立つには冒険者の稼ぎをピンハネしないと成り立たない。
なら冒険者が今までの自分の稼ぎを犠牲にしてまで会社に所属するメリットはなにか?
これは教育なんて物はメリットとしては小さいだろう。教育、管理は働く為の条件でしか無い。
わかりやすいメリットをいくつか上げてみよう。
自分で用意できるよりも質の良い武具を貸し出される事によって、単純に今までよりも稼げる様になる。
そして、怪我をしない様に質の良い防具な訳だから、怪我が少なくなる。その分稼ぐ日数は増える訳だし、怪我をした時の治療費や怪我をした時の給与補償などもある。
だからと言って無茶をしない様にマネージャーがつく事になるし、強制的にバランスのいいパーティを組まされる事になる。
武具の強化や指導がつく事によって、今までよりも早いペースで魔石を稼ぐ事になる為、会社にマネジメント料を取られたとしても今までと同等、いや、それ以上に稼ぐ事ができる様になる。
勿論、指導するマネージャーも黎人が作ったマニュアルにより教育を受けている冒険者である。
それに、税金関連の管理も会社が行ってくれる事もメリットとして大きい。
冒険者は魔石の取得、換金から45%の税金を取られる訳だが、それとは別に所得税諸々の税金は一般人と同じく課されている。
まず、これが二重課税という事はひとまず置いておこう。
しかし、この所得税諸々の管理が出来ていない冒険者が低ランクになる程非常に多い。
これは低ランク冒険者が税理士などを雇う余裕がないと言うのもあるし、低ランクになるほど年末になって税金を払う余裕が残っていないと言うのもある。
そして数年所得税を払わず済んでしまう事に慣れた頃に、追徴税をくらってしまうケースが多い。
そうならない様に会社が管理してくれる事はとても良いメリットになる。
この二つだけでも、低ランク冒険者が会社に入る理由になるだろう。
勿論、キャリアを積んでマネージャーになるも、高ランク冒険者としてフリーランスになるも自由である。
フリーランスになる頃にはステータスも上がり、会社の教育も終わっているであろう。
こうして、日本の冒険者の民度は劇的に改善されていっているのであった。