124話ギルド
「野郎ども!遂にこの日がやって来た!
黎人に頼まれた大仕事、《明星の管理人》史上最大のマネーゲームが始まるよ!」
そうメンバーを鼓舞したのはクランリーダーの市野智子。
隣で拍手をおこなっているサブリーダー市野裕隆の嫁である。
この部屋ではリーダー、サブリーダーの他に幹部が3人集まって今日行われる《《ある事》》に備えている。
「そんなにテンション上げなくても勝ち確ですよ、リーダー。
外資系も沢山参戦する様ですけどこっちは春風さんの資産を湯水の様に使えるんですから」
「でも今日のこの戦いが《黄昏の茶会》の計画の核となるんだ。任された私達にも力が入るだろう!」
「裕隆さーん、奥さんなだめてくださーい」
和やかな雰囲気を醸し出しているが、一度入札が始まれば皆プロの顔になる事だろう。
これから何が始まるか、それは、政府が、今の内閣が打ち出したマニフェストの一つ。
冒険者に使っている無駄な税金を無くす。
その最初の一つ目として冒険者ギルドの民営化を打ち出した。
そして今日がそのギルドを民営化するにあたっての競売が行われる日であった。
世界で初めてギルドが民営化され、その権利を得ようと沢山の企業が入札していくのだが、ある人物が所有する企業の一人勝ちで幕を閉じる事になった。
「終わってみれば楽勝。それも想定よりもだいぶ安い」
「無事終わってよかったじゃないですか。
でもこの結果は海外への冒険者の流出のおかげでしょうね。ギルドを手に入れても冒険者が居なければ成り立たないですからね」
「黄昏関係はイギリス、あとはアメリカ、ドイツ、ロシア辺りが大きく受け入れてるわね。
企業関係はアメリカに本社を移してるところが多いわ。
中国は法律が邪魔したわね。世界ギルド以外の中国ギルドに所属するには中国国籍じゃないといけないからね。今回日本から出た冒険者達は国籍は変えていない。これも、ある程度予測できるわよね。だから、日本の企業の入札は極端に少なかった訳だし」
「まあ何にせよ、地方、国家両ギルドとも権利はこっちの物ですね」
「よし、打ち上げよ!黎人が好きにしていいって言ってたのよ」
「でも、《星空のレストラン》はもうイギリスですよ」
「そりゃ、1番高いとこよ!」
「何ですかそれー」
大仕事を終えた《明星の管理人》の幹部達は和気藹々と打ち上げに向かった。