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『11月15日2巻発売!』願ってもない追放後からのスローライフ?  作者: シュガースプーン。
第四章海を渡った五番弟子

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119話それぞれの行動1

「紫音、もう準備は完璧?」


「そうだね。ほとんどは火蓮が空間魔法で運んでくれるし、足りない物は向こうで買うわ」


「それじゃ、市野さんが待ってるし、早く行きましょ」


2人はマンションの部屋の戸締りをして出かけた。


辿り着いたのは東京、六本木にあるオフィスビルの一室だった。


「お二人とも、お待ちしていました」


そう言って出迎えてくれたのは40代半ばの男性、市野裕隆(いちのゆたか)だった。


「よろしくお願いします」


2人がそう頭を下げると、市野はニコリと笑いながら「任せてください」と頷いた。


「お二人が向こうで使われる部屋は春風さんの持ち物なので、今までと同じ様に使っていただけます。部屋も全室軟水濾過装置がついてますのでシャワーなんかも違和感が無いと思います。

ただ、亜桜さんの通う学校が少し遠いのですが、レベッカさんが任せてくれと言っていましたので後で連絡を取ってください」


いきなり何の話かと思うかも知れないが、紫音の留学の話である。

今の日本情勢的に、紫音の冒険者としての立場を理由に大学を退学処分になるかも知れないと黎人から言われた。

実際、入学してからと今では、紫音に寄って来る人の雰囲気は変わった。

初めは主席入学であったし、色々と話しかけられて、人によっては鬱陶しい程だった。

しかし最近の、冒険者の悪い噂が流れ出してからは本当に仲のいい友人としか話していない。

そう言った事情から先手を打って、レベッカと黎人と言うコネの力を使って最速でイギリスの有名大学への留学が決まったのである。

勿論、試験的な物はちゃんと受け、満点を叩き出している。日本と違い、魔石を考慮した問題なのだが、紫音を悩ませるにはまだ足りなかったようだ。いや、紫音が勉強を怠らなかったからだろうが。


火蓮も、一緒にイギリスへと向かう。

過保護な黎人からの助言と、家族も居ないのだから、いや、この一年一緒に暮らしてきた紫音が家族みたいな物だし、冒険者など向こうへ行っても出来るのだから、ついて行く事にしたのだ。


そうして、向こうで暮らす為の段取りを市野に頼んでいたのである。


この市野は《明星の管理人》のサブリーダーである。

この時点で分かる人は分かると思うが、《明星の管理人》は《黄昏の茶会》の下部クランである。


主に、経理関係に特化しているクランで、黎人の経理関係も明星の管理人のクランリーダーが担当している。


「何から何までありがとうございました。市野さんが居なかったらパスポートから何から大変でした」


そう言って笑う紫音に市野は「いえいえ。お二人なら調べればすぐですよ。今回は時間もあまりありませんでしたから」と言って笑顔を返した。


「市野さん達はこのまま日本に?」


「はい。《黄昏の茶会》の下部クランの殆どはこのままの日本だと向こうへ行くでしょうが私達《明星の管理人》はこっちでやる事を任されていますから。私達の戦場はこちらになりそうです。《星空のレストラン》は向こうに行くそうなので、ご褒美が無くなってしまうのが残念ですが、彼らのイギリスでの活躍をツマミにでもしようと思います。

今は春風さんの財団の関係でそんな暇も有りませんけどね」


そう言って笑う市野を見て火蓮と紫音は顔を見合わせて首を傾げた。


「師匠の?」


「財団ー?」



2人の疑問に市野は驚いた顔をした。


「春風さんはお二人にも言ってなかったですか。まあ、言っても仕方のない事ですしね」


市野は苦笑しながら「まあ、秘密でも何でもないですし、ネットにも普通に掲載されてますからね」と言って続きを話した。


「春風さんが代表の一般財団法人ペペルトは亡くなってしまった冒険者の家族を支援する為の財団です。

春風さんの私財でボランティアをする団体ですね。私達はその財団の運営を春風さんから任されているのですが、今後、冒険者の家族が差別を受ける可能性もありますからそちらの対応をどうするかなど色々あるんです」


「師匠ってそんな事してたんだ」


「春風さんは幼い時に冒険者だったお父上を亡くされてから一時期生活に苦労されたそうです。今の稼ぎからは考えられませんが」


「はい。20億って凄いですよね…」


火蓮の言葉に市野は声を上げて笑ってしまった。


「失礼。春風さん、お二人にはそんな風に。

それは毎月春風さんに私達が渡している分です。お小遣い的な物です。

元SSSの冒険者で《《世界各国》》に不動産を持つ春風さんの稼ぎがそんなに少ないわけないじゃないですか。

多分自分でも分からないから月に自分でわかる分を教えたんでしょうかね?

現役の時はエネルギーの1割はあの人が補っていたわけですから、エネルギー過多で昔より安くなったと言われていますが、当時は月に兆は稼いでましたよ。今でも100億はあるんじゃないですか?」


真実を知った火蓮と紫音(ふたり)は絶句し、目を回している。こうなるだろうから黎人は言わなかった訳だが、それはもういいだろう。


その後は、市野の運転で空港に向かうのだが、火蓮と紫音の黎人への尊敬度がまたグンと上がった様であった。










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― 新着の感想 ―
[良い点] >>当時は月に兆は稼いでましたよ。今でも100億はあるんじゃないですか? 明らかにおかしかった収入部分が今明らかになってよかった。
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