114話《エヴァ》の成長の記録
憧れの地。日本
降り立ったその時から空気が違っていた。
イギリスとは違うビルが並ぶ風景。移動すれば日本独特の瓦の家が並び、そして、憧れの刀を手にした。
今はまだ借り物であるが、私の刀も打ってもらえる事になった。
レベッカに聞いていた様に日本では何を食べてもおいしい。
ローストビーフまでも日本の物は違うのだ。
私が選んだ事だから仕方がないのだが、初めて入ったダンジョンがイギリスで無かったのが少し残念ではある。
しかし、黎人の指導は姉兄達に聞いていた物とまるで違っていてとても新鮮だった。
姉達は、戦い方、武器の動かし方まで細かく指導されたらしいのだが、黎人はまず私の思うがままに戦わせて、危ない所を修正してくれる程度。
どう戦えばもっと上手く戦えるかを宿に戻ってから思い出してよく考えなさいと教えられた。
初めのうちはどうしていいか分からなかったが、魔石を吸収していくと、不思議と気になる箇所が増えてきて、翌日のダンジョンで試してみたいと楽しみになるのだ。
そうして考える内に、私と黎人では同じサイズの刀を使っても理想の動きが違う事に気づいた。
黎人の戦い方に憧れていた私は少し残念に思ったけど、最近は私の戦い方もなかなか様になっていてカッコいいと思っている。
まだ、片手で扱う事はできていないのだけど。
昨日は、黎人について東京までやって来た。
黎人の東京の家には、姉弟子である火蓮と紫音が待っていて、一緒に食卓を囲んだ。
日本に来て。いや、産まれてからこれまでで1番おいしいと思った料理だったが、なんと、作ったのは火蓮だった。物凄い才能だと思う。
「やっぱり火蓮の料理は美味いな」
と黎人に褒められて喜ぶ火蓮を見て、羨ましく思った。東京にいる間に、私も教えてもらおうかな。
そう思ってお願いしたら快く引き受けてくれた。
次の日、黎人が用事なので東京のダンジョンには火蓮と紫音が連れて行ってくれた。
2人は私の戦闘を見てすごく褒めてくれたけど、弱い魔物とは言え、2人の戦い方も見せてもらった。
そしたら、2人の戦い方も凄かった。
ランクはまだ中級だけど、イギリスの上級冒険者にも負けないんじゃないかと思うほどだった。
日本は冒険者後進国と言われるけど、黎人と言い2人といい、冒険者の質がズバ抜けていると思う。
やはり、日本に来てよかった。
初めはダメ元でお父様に頼んでみたのだけど、二つ返事で了承を貰った時には拍子抜けした。
多分、お父様にも考えが有るのだろうけど、私には分からない。
それはそうと、昨日1番だと思った料理は簡単に更新された。
ハンバーグは私も手伝ったのだが、私の作った物だけ崩れてしまった。
それでも、初めて自分が作った物はとても美味しく感じた。
いや、火蓮が作った物と食べ比べればパサついていて、火蓮の作った方のが美味しかったけど、そう言う事ではない。
イギリスで食べた物よりは、私の作ったハンバーグの方が美味しかったはずだ。
私はまだまだ成長する。
料理も、勿論冒険者としても。
お姉様や、お兄様の力になれる様に。
私のミドルネームに恥じない様に。