113話姉弟子達
本日のエヴァは、東京、葛飾区に居た。
黎人や唯達が用事の為に東京に来るのについて来たわけだが、黎人達が用事の間に、姉弟子達に面倒を見てもらう事になったからだ。
人当たりが良く気さくな火蓮と大人しく知的だが優しい紫音。
初めは借りてきた猫の様だったエヴァは2人が見守る中、ダンジョンの中程の魔物を1人で相手をしていた。
紫音はDランクであるし、火蓮に至ってはCランク冒険者だ。
これは冒険者免許を取ってから最速でCランクまで上がったとして東京第2で少しの間話題になった程だ。
そんな2人から見ても、まだダンジョンに潜り始めて一月程のエヴァがこの辺りの魔物をこうも簡単に倒していくのは才能に溢れていると感じる。
全ての魔物を倒し終わった後に、2人に向かって振り向いたエヴァに、火蓮と紫音はハイタッチをして労った。
「もう最深部に行っても大丈夫そうだけどね」
「うん。でも、黎人さんにもここまでと言われているんだし、何か考えがあると思うからここまでにしておこう」
こうした会話の後、何回かこの辺りに出現する魔物の群れを狩った後にダンジョン探索を終えた。
その後は、3人で晩御飯の買い出しをしてから家に帰る。
「2人とも、今日の晩御飯は何がいい?」
「そうね、エヴァが居るんだしやっぱり和食かしら?」
火蓮の質問に紫音がそう答えると、エヴァは食い気味に意見を言った。
「オムライスとハンバーグが食べたいわ!」
なんでも、紫音もよく知るイギリス美女のレベッカが、日本のハンバーグはとても美味しい。そして、オムレツと日本のライスを融合させたオムライスなる物は至高の味だとエヴァに力説していたのだそうだ。
昨日は和食だったのもあり、今日のメニューはその二つに決まった。
2つが同時に食卓に上がるのはとても豪勢だと思うのだが、妹弟子が可愛くて仕方のない火蓮は張り切って作ると宣言した。
その横で、自分と外食した時、目を輝かせながらお子様ランチを頬張っていたレベッカを思い出して微笑ましい気持ちになった紫音が「エビフライもつくってお子様ランチにしましょう!」と言ったのもあって、晩御飯はお手製お子様ランチで決定したのであった。
スーパーの買い出し中、エヴァはカゴに日本に来てから激ハマりしている飲み物を5本も入れた。
エヴァが衝撃を受けた飲み物。
それは、おいしい無糖のアイスティーだった。
まず、冷たい紅茶を飲んだ事がなく、紅茶と言えばミルクティーだったエヴァはこの香りは薄いのにどんな料理にも合ってしまう冷たい飲み物に衝撃をうけた。
それからは、この無糖アイスティーを常飲している。
日に日にカゴに入る量が増えていくのに、姉弟子2人は苦笑いなのだが、ちゃんと1日で飲んでしまうのだから凄いものだ。
きっと、お子様ランチにも合うだろう。
おいしいご飯を想像するエヴァは晩御飯なのにランチと言っている違和感は感じなかった。
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「おじいさん、ちいと根を詰めすぎじゃないですか?」
「唯達から連絡があった。ここで打つ刀も最後かもしれん。
エヴァの為に立派な刀を打っちゃらんとな」
そう言って真剣に刀を打ち続ける背中を見てため息を吐く女性は、仕方がないなとここで食べれる様におにぎりをにぎりに台所へ向かうのだった。