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102話ご挨拶

椿家で楓が通されたのは和室で、イグサの香りがほんのりと香る落ち着いた部屋だった。

落ち着いた。といっても、主張しすぎない調和のとれた調度品と言うだけで、楓が翠と並んで座ったこの机も一枚板の味のあるテーブルで値段は凄く高そうだ。

テーブルでは無かったので正座で座ったのだが、楓にとって、この正座がどれだけ続けられるかも勝負の分かれ目だと気合いを入れた。


緊張した楓を、両親が来るまでに少しでも和らげようと頑張る翠だったが、楓が見せる笑顔はどこか引き攣ってぎこちなく、そうこうしている間に襖が開いて翠の両親が部屋へと入って来た。


楓達と対面する側に両親が座り、先ずは挨拶から始まった。

挨拶が終わると、翠の父親、葉一は翠に手を出しやがって。

などと言った事は無く、2人の並ぶ姿を見て笑顔を見せると自分の思いを話し始めた


「楓君。私は翠が選んだ人なのだから君の事をとやかく言う事はない。

つい先日も、翠は私が選んだ冒険者よりも素晴らしい師匠を自分で見つけてきた。

君もまた、翠が選んだのだから素晴らしい人間なのだろう。

しかし、翠は椿の長女なのだから、その伴侶となる人間には椿に入って貰いたい。

大学の卒業後も将来私の後を継げるように就職先に関しても口を出させて貰うのだが____痛!」


バチン!と葉一の頭に翠の母親、紅緒(べにお)の平手が飛んだ。


「あなた。話が飛びすぎて楓君も翠も混乱してますよ。一旦落ち着きなさいな」


それもそのはず。付き合って一月も経ってない人間にこの様な話をするとは誰も想像していなかった。


一旦落ち着いて、葉一は順序だって話し始める。


「まずね、楓君」


「はい」


「君と翠が付き合ったと聞いて君については先に調べさせてもらったから翠を君に任せる事に関しては信頼できると思っている。

元々は翠の婿に冒険者を探そうと考えていたわけだしね。翠と共に春風黎人から教えを受ける君なら家としても願ったり叶ったりだ。


今日ここに君を呼んだのは翠と付き合う君の覚悟を聞きたかった」


そこまで言って葉一は目の前に置かれたお茶を啜った。


「普通の家ならばこんな話は早いのかも知れないが、椿は日本に古くからある家で政治に関わって来ることもある。

今の日本の政治はどこか歪に感じる。

君に翠を任せるなら、そこに覚悟が必要だと思っている。

楓君の覚悟はどうかな?」


「僕は、ここでどれだけ言葉を繕った所で、その時にならなければその覚悟は表せないと思います。それを承知で言わせてもらえるなら、翠さんに困難が訪れた時には、隣に立って共に乗り越えていきたいと思っています。

お付き合いをしてからはまだ短いですが、冒険者のバディとして、ずっとそう思ってきました」


楓の言葉を聞いて翠は顔を赤くし、それを見た紅緒は機嫌が良さそうにニコニコと笑う。


葉一はふぅ。と息を吐き出すと、眉を下げて優しく笑って話し始めた。


「その覚悟があるなら私は君を翠の許婚(いいなづけ)としよう。そうすれば他にちょっかいを出してくるヤツも減るだろうからな」


その後は部屋を移動して、翠の妹朱音も加えて食事をした。


翠の父親の呼び出しを見事乗り切った楓であった。



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