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 初めて乗る馬車の乗り心地は、想像以上に最悪だった。


「ゆ、揺れすぎ……気持ち悪いぃぃ……」


 あの後、すぐに部屋に戻って適当に荷物をまとめようと試みたけど、そもそもライラの部屋のどこに何があるかもわからない私に30分は短すぎた。

 準備も終わってない私を引きずるようにして、使用人たちが放り込んだのがこの乗り心地最悪の馬車だった。


「あんなクソジジイのいる家にいるよりは、これから行くところの方が居心地が良いはず……だといいなあ〜」


 朝食すら取らせてもらえなかったけど、逆に酔っても吐かずに済んだから良かったのかも。

 そんな風に無理矢理ポジティブに考えないと、ほんの数時間前に啖呵を切った自分を後悔しそうだった。

 前世(?)でもそうだったけど、私は間違ってると思ったことを黙っておけないタイプで、そんな性格から損する事も多かった。


 さっきだって黙って座って我慢していたら、近いうちにヒロインと同級生になれていたかもしれないのに……!!


「夢の生エレナ、一目でいいから拝みたかったよぉぉ……」


 『マジスク』は乙女ゲーム歴10年以上の私でもどハマりしてしまうほど名作で、中でもヒロインは群を抜いて可愛かった。攻略キャラだけでなく、ヒロインもかなりグッズ展開されていたといえば、乙女ゲーム好きなら納得の人気だろう。

 正直言って、私の中で攻略キャラは王子を始めとしてみんな同じくらいの印象で、強いて言えばやっぱりメインヒーローのルートはヒロインが可愛いスチルが多い!ってことぐらい。

 せっかく入学前のライラになってエレナとはじめましてからやり直せるなら、親友……ううん、それはおこがましいかな。恋バナをできるくらいのポジションになりたかった!!


「でもこの道のり……どんどん険しくなってるし、とてもこれからの生活が期待できなそう……」


 街を出て畑を越えたあたりから、馬車の外はどんどん緑が増えている。

 あのクソジジイは「エバンス家に連れていけ」って言ってたし、どこかの屋敷に売られたのかと思っていたけど、もしかすると状況はもっと悪いのかもしれない。

 外聞がどうのとか言ってたし、大した魔法も使えないところもゲーム通りみたいだから、バラバラにされて研究対象にされる、なんてことはないと思うんだけど……。


 まあでも、部長に突き落とされて死んでる訳だから、もうどんな事が起きても生きてるだけマシなのかな!

 この国にいる限り、もしかしたらエレナが王子と結婚するところを国民としてお祝いできるかもしれないしね!


 だんだん草木も見えなくなり、周囲はまるで荒野だ。

 揺れがひどくなって、天井に頭を打たないように必死でしがみついていると、ガコン!と大きな音を立てて馬車が止まった。


「降りろ」


 従者ももうライラには敬語を使ってくれないけれど、荷物を下ろすのは手伝ってくれるところは親切よね。……早く帰りたいだけかもしれないけど。


 到着したのはだだっ広い荒野。

 え、野外に放置?と思ったら、目の前に信じられないくらい高い時計塔が建っていた。


「大きすぎて目に入らないってこと、本当にあるのね……」


「このドアに触れると、この塔の主が来る。覚えておけ」


「わかったわ、ありがとう」


 従者がドアに触れたけれど、特に音も鳴らないし光が灯ることもなかった。何か魔法的なことが起きるのかと思ったけど、そういう訳ではないのかしら。


「……おかしいな。ご主人様から連絡が行ってるはずなんだが……」


 しばらく経っても何の反応もないドアに、従者の表情に焦りが見える。

 そりゃそうよね、勘当娘とこんな荒野に置き去りにされても困るもん。早く帰りたいわよね。


「バクストン家の使いです!!いらっしゃると聞いています!!」


 こんな大きな塔の1番下のドアを叩いたところで、果たして声が届くのかしら?と疑問に思うけれど、焦っている従者はドンドンとドアを叩いている。


「相変わらずバクストン家の者は騒々しいな」


 私たち以外誰もいなかった荒野で、突然背後から冷ややかな声がした。

 驚いて振り向くと、そこには私が30年で出会った男性とと100本以上の乙女ゲームの攻略キャラを遥かに超えるくらい美しい男性が立っていた。


これから更新頻度をあげていきたいです。

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