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7. 小悪党など放っておけ

「給料日だーーーー!」


 一か月の短期バイトを終えてまとまった金が入ったぜ。

 これで極貧生活からはおさらばだ。


『悪逆非道を目指す元勇者が金欠であえぐなんて情けないッスね』

「金欠じゃねーよ。今の俺は金持ちだ!」

『そういう問題じゃないッスよ。それにその程度で金持ちって……』


 この世界で金を稼ぐことの大変さを知らないからそんなことが言えるんだ。


 Sランククエストとか存在しないんだよ。

 ドラゴン倒して賞金がもらえたりしないんだよ。

 王女様を助けてお礼に土地とかもらえねーんだよ。


 最後のはいらねーけどな!


「よーし、豪遊するぞー!」

『えぇ……また貧乏になるッスよ』

「そん時はそん時だ。悪逆の限りを尽くす人間が節約なんて言ってたらみっともねーだろ」

『もうみっともない基準が分からないッスよ。欲望に忠実と思えば悪役っぽい気がしなくもないッスけど』

「だろ? クソガエルも分かって来たじゃねーか」

『カエルじゃないッス』


 おっとこいつと話なんかしている暇なんて無かった。

 さっさと飯食いに行こう。


 もちろん行くのは焼肉だ!


『高級店っぽくないッスね』

「俺にはあ~いうところは合わないのさ」

『金が足りないッスか?』

「食べ放題じゃない焼肉なんてどこも同じだろ」

『金が足りないッスか?』

「さぁ、食うぞ食うぞ!」

『はぁ……』


 何を食べるのかはもう決めてある。


「もちろん最初はタン塩、じゃなくてカルビだ! カルビ! カルビ! そしてカルビだ!」


 焼肉の礼儀なんか知ったこっちゃない。

 今日は好きなもんを好きなだけ食うと決めたんだ。


 だからと言ってカルビ連発はやりすぎじゃないかって?

 ばっかだな。

 だって歳をとるとカルビとかきつくなるらしいじゃんか。

 だったら若い今のうちに喰っとかないと勿体ないだろ。


 俺ってインテリだから自然と計画的に行動しちゃうんだよな~


『なんかめっちゃうざいこと考えてないッスか?』

「エスパーかよ」

『うざい顔になってたッス』

「おいこらうざい顔って何……カルビきたああああ!」


 いいやっふううううう!


 焼くぞー!

 食うぞー!

 焼くぞー!

 食うぞー!


「ファイアーーーー! あはははは」

『ちょっ、火がヤバイッスよ』

「カルビはこうなるもんなんだよ。消化消化っと」


 カルビファイヤーと豚トロファイヤーが焼肉屋でのわびさびってやつなのさ。


「はぁ……超うめぇ」

『ドラゴンステーキとどっちが旨いッスか?』

「おいコラ、ここであっちのこと言うのはマナー違反だろ」


 せっかく気持ち良く食べてるのに思い出させるんじゃねーよ。

 あっちの方が旨かったよコンチクショー!


「コレにはコレの良さがあるからいーの」

『そッスか』


 クソガエルのせいでテンションが下がっちまったぜ、クソ。

 ここは味変してハラミやロースに手を出して気分を変えるべきか。


「だがカルビだ!」


 こんな無謀なことをしても誰にも咎められない。

 それが一人焼肉の良い所さ。


 と思っていたのに、うぜぇ奴らがやってきやがった。


「うわ、あれ見てよ」

「一人で肉食ってる。マジかよ」

「恥ずかしく無いのかな」


 チャラい大学生達が俺の方を見て何か言ってやがる。

 せっかく気持ち良く肉を食ってたのに、空気読めよな。


「ちょっと撮っとこ」

「流石にヤバくね?」

「大丈夫だって、店に迷惑かけてるわけじゃねーし」

「むしろ一人で来るあいつの方が迷惑だよねー」

「それな」

「「「ぎゃははは」」」


 …………


『言われてるッスよ』

「ふん、あんな小悪党なんかほっとけ」

『懲らしめないッスか?』

「俺みたいな大物があんな小物相手に反応したらみっともないだろ」

『そういうものッスか』

「そうそう、気にしない気にしない」


 気にするだけ無駄だからな。


「そんなことよりカルビを食うぞ」

『流石に同じのばかり食べ過ぎじゃないッスか。野菜も食べるッスよ』

「お前は俺のオカンか」


 だが確かに食べすぎかもな。


 うざい横やりも入ったことだし、早めに切り上げることも検討するか。


「なんかブツブツ言ってるしきもっ」

「あんな大人になるくらいなら死んだ方がマシだよな」

「言えてるー」


 ふん、雑魚共が。

 俺様からほとばしる高貴なオーラに気付かないとはな。


 身の程を知るが良い。




「祝! 大! 炎! 上!」


 いやぁメシウマメシウマ。


 奴らが『一人客を動画にとって侮辱している動画』がネットで拡散されて大炎上中だ。

 もちろん俺の顔はマスクされていて奴らの顔だけがバッチリと映っている。

 名前と通っている大学が速攻でバレて、大学に抗議の電話が止まないなんて噂も流れている。


 俺が何かしたわけじゃないぞ。

 奴らが自滅しただけさ。


 俺はパッシブスキル『オートカウンター』を持っているから、攻撃されると自動的に反撃してしまうんだ。

 特に低レベルな攻撃の場合は、仕掛けて来た相手や攻撃方法に相応しい反撃をするように設定してある。


 奴らの俺に向けた侮辱が攻撃と判断されたのだろうな。


「ざまぁ」


 はぁきんもち良い~

 また焼肉行こっかな。


『やっぱりめっちゃ気にしてたじゃないッスか』


 はぁ? 別に気にしてねーし。

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