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5. 客を追い払い売り上げを減らしてやる

「うげぇ、一時間待ちかよ」


 たまには旨い物が食べたい。


 そう思った俺は行列が出来るラーメン屋に向かったが予想以上の大行列が出来ていた。


「しゃーねーか」


 異世界に行く前は精神的な余裕が無かったから一時間も待ってられなかっただろう。

 だが今の世界最強の俺は心にゆとりしか無いからこの程度はどうってことない。


『魔法でスルーして普通に入っちゃえば良いッスのに』

『分かってないな。こうやって待つ時間こそが料理を美味しく食べるスパイスになってるんだぜ』

『それって普通に食べたら美味しく無いってことッスか』

『なわけねーだろ!元々すげぇ美味しい料理がもっと美味しく感じられるって意味だよ!』


 行列が出来る店に来たの初めてだから味は知らんけど、きっとそうに違いない。

 でなければこんなに並ぶはずが無いだろうしな。


『どうせいつものチキンハートで順番抜かしすると心が痛むだけッスよね……』

『何か言ったか?』

『何も言ってないッス。それよりどうやって時間潰すッスか』

『適当にスマホでも見てればあっという間だろ』

『寂しいッスね』

『うっせ』


 友達と来ていれば会話して時間を潰せるだろうが俺はソロだ。


 べ、別に友達がいねーわけじゃねーし。

 クソガエルだっているし。


 大体ラーメン屋にツレで来んなよな。

 ラーメン屋なんて個人で来てさっさと食べてさっさと出る場所だろうが!


『寂しいッスね』

『何故繰り返した』


 まさかこいつ心が読めるのか!?


『考えていることがバレバレなんスよ』

『ハッ、俺様の崇高な思考が貴様如きに理解できるわけが無いだろうが』

『はいはい』


 全く失礼な奴だ。


 さて、動画……はパケット使いすぎるからWeb小説でも読んでるかな。

 悪役令嬢の短編が山ほどあるからそれ読んでいれば直ぐだろう。


 ……

 …………

 ……………………


 悪役令嬢がロボットに乗って巨大化した王子と戦うだと!?

 また頭のおかしい話を見つけてしまった。

 これだから悪役令嬢の短編漁りは止められないぜ。


 おっと、もうすぐ店内に入れそうだな。

 俺の前は三人になっていた。


 お腹も程良く音を鳴らしているし、今なら何を食べても美味しく感じそうだ。


『やっぱり味関係ないじゃないッスか』


 なん……だと……


 確かに空腹ならば何でもおいしく感じられる。


 貧乏で金が無かったあの頃、スーパーで叩き売りされていた怪しい外国の激安カップ麺ですらご馳走に感じたものだ。

 だがそれも後でもう一度食ったらゲロマズだった。


 となるとこの店は意図的に行列を作り強制的に腹を空かせることで美味しく感じさせている可能性が……?


 もしそうだったら、俺様が怒りの鉄槌を下してやるぜ!


『まーた出来もしないことを考えている気がするッス』


 失敬な。

 俺は正しくレビューして嘘偽りのない内容を投稿してやるのさ。

 くっくっくっ、震えて怯えるが……なにぃ!?。


「あ~来た来た。遅いよ~」

「ごめんごめ~ん」


 俺の前に五人も女が割り込んできやがった!

 このくそアマ共が!


『場所取りッスかね』

『だとしても五人はやりすぎだろうが!』


 俺は別に心が狭い人間じゃあない。

 一人くらいならまぁ仕方ないかと許せるさ。


 だが五人だぞ五人。

 俺は一時間も待っているのに、割り込んできた奴らは待たずに店内に入ろうとしてるんだぞ。


 あり得ないだろ!


『注意しないッスか』

『そうだな。ここは俺様がビシっと言ってやらないとだな』


 いや、待てよ。


 相手は大学生くらいの若い女連中。

 めんどく……若さゆえに暴走しやすい年頃だ。


 ここは紳士として穏便に済ますのが正しいのではないか。


『やっぱりチキンッスね』


 紳士だといえ、紳士と。


『でも他の人はそう思ってないみたいッスよ』


 バッカお前、気付いて無いフリしてたのに言うなよ。


 後ろから殺気が飛んで来ているんだよなぁ……


 異世界でもここまでの殺気を垂れ流せる相手ってそうはいなかったぜ。


「ちょっと姉ちゃんたち、横入りすんなよな」


 な、なんだと!?


 俺の後ろに並んでいた小太りの男が注意しやがった。


「最初からみんなの分も取ってただけです」

「そんなのダメに決まってるだろ。後ろに並べよ」


 女の反論にも男は一歩も退かなかった。

 後ろに並ぶ人からも同意の空気が感じられた。


 だがこのクソアマ共はとんでもないことを言い放ちやがった。


「そんなルールどこにも無いですよね」

「文句があるなら店とか警察に言ったらどうですか」

「ぐちぐちねちねちキモイ」

「あんたなんか豚のエサでも食ってれば良いのよ」

「そうそう、一緒の店に入るとかマジあり得ない」


 俺を間に挟んでギスギスするの止めて貰えませんかね!?


 それに、確かにその男はマシマシで見た目が汚い某ラーメンを食べるのが似合いそうな雰囲気ではあるが、いくらなんでもそこまで言うか!?


 男は顔を真っ赤にして怒り狂っているが、女共の勢いに押されて黙ってしまった。

 何を言っても侮辱で返されることが分かってしまったのだろう。


「あ~あ、せっかくこれから美味しいラーメン食べるのに気分悪い。サイアク」

「あたしレビューで苦情書いとくね」


 こいつら、店の評価まで落とすつもりなのか!?


 悪逆非道、いや、これは外道の類の行いだ。


 どうやら俺を本気で怒らせてしまったようだ。


 このまま無事に帰れると思うなよ!


『やっぱり正義の味方じゃないッスか』

『チッチッチッ、これを見てもそう言えるかな』


 今回は直接人体を害する魔法を使ってやる。


 この国の人間は魔法耐性が一切ないからな、やりたい放題だぜ。




 バッドステータス付与魔法:Destiny




『初めて聞く魔法ッスね』

『今作ったからな』

『今!?』


 俺にかかれば魔法を作ることすら朝飯前さ。

 今は昼飯前だけど。


『Destinyってこっちの世界で運命って意味ッスよね。壮大な魔法に感じるッス。どんな効果ッスか?』

『見ていれば分かるさ』


 ほら、もう効果が発生した。


「あ、あれ……?」

「な、なんで?」

「さっき行ったのに!」


 焦ってる焦ってる。


「どうしよう、私も」

「ええ、みんな同時なんて変だよ!」


 確かに変だが、その理由を考えている余裕などお前らには無い筈だ。


 このままで良いのか?


 我慢すると体に悪いぞ。

 脂汗が流れて化粧が崩れるぞ。

 そもそもその状態でラーメンを食べられるのかな。


「店員さん!」

「ちょっと!」

「ずるい!」


 女共の一人が店の中にかけこんだ。

 おいおい、そんなことをして良いのか。

 女のグループでの抜け駆けや裏切りがどうなるのか……あいつは終わったな。


「もうダメ!」

「私も!」

「ここで待ってて!」

「え……無理無理無理無理!」


 残された女共は列を抜けて近くの店に向かって走り出した。

 間に合うと良いな。


「うわああああ!」


 おっと店の中に入った女も慌てて飛び出して来たな。

 どうやら空いていなかったようだ。

 可哀想に。




 そいつもお腹を押さえて苦悶の表情を浮かべながら走り出した。




『…………まさか腹痛ッスか』

『正確には便意を催す魔法だな』


 クソ生意気な女共も、便意には敵わないだろう。

 ざまぁみろ。


『なんでDestinyなんて壮大な名前なんスか!』

『仕方ないだろ。英語に翻訳したらそう出て来たんだから』

『どういうことッスか!?』


 それはむしろ俺が聞きたいよ。


 魔法名が『便意』だとクソダサだから英語にしようと思って調べたらそう出て来たんだもん。


「お次のお客様」


 お、ついに俺の番が来たぜ。

 魔法も使ったからかなり腹減ったよ。

 大盛にしよっと。


『方法は相変わらずアレでしたッスけど、今回は悪逆非道感があったッスね』

『俺はいつも悪逆非道だろ』


 つーかお前は排泄とかしてなさそうなのに辛さが分かるのか?


 ラーメンはとても美味しかったです(小並

便意で調べたら本当にDestinyって出て来て笑ってしまいました

※投稿時の話です。いずれ修正されるかもしれません


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