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3. 定期運行をぶち壊す

「やっべぇ!寝坊した!」

『うるさいッスねぇ』


 ウザガエルは無視して、俺は身だしなみをほとんど整えずに家を飛び出した。


『みっともないッスよ』

『うるさい。別に知り合いに見られるわけでも無いし、最低限寝癖が無ければ良いんだよ』

『そんなんだから彼女が出来ないッスよ』

『何か言ったか?』

『いいえ~』


 こいつと念話している余裕などない。

 早く行かなければ『朝市』が終わってしまう。


 格安で野菜が手に入るチャンスなんだ。

 もやしが十円だぞ、十円。

 これを逃すわけにはいかない!


『そんなに急ぐなら全力出せば良いじゃないッスか』

『馬鹿言うな。もし誰かに当たったらどうするんだ』


 俺が全力で走れば数キロ離れたところへ数分で到着する。

 だが、あまりの勢いで人を轢いて死なせてしまう可能性があるのだ。


 程々の手加減が出来れば良いんだが、これが結構難しいんだよ。

 最近はあまりご飯を食べてなくて力が無いからな。

 失敗する未来しか見えん。


『なら空を飛べば良いじゃないッスか。一直線で行けるッスよ』

『無理だ。あれはめっちゃ疲れるんだよ』


 それこそ、手加減して走る事より遥かに面倒だ。

 腹が減って途中で墜落したらどうする。


『姿を消して屋根の上を飛び越えるのはどうッスか。これなら人に当たらないッスよ』

『な、なんてあくどい事を考えるんだ』

『この案でそれを言われるとは思わなかったッス』

『そんなことしてもし屋根を壊したらどうするんだよ。雨漏りして住んでいる人が困るだろうが』

『悪逆非道の限りを尽くすと決めた人の台詞とは思えないッス』


 相変わらずこいつは魔王みたいなやつだな。

 毒されないように気をつけないと。


『お、ラッキー、バスに乗れそうだ。あれに乗れば朝市に間に合うぞ』

『でも出発しそうっすよ』

『何、ちょっ、待ってええええ!』


 くそぅ、俺が走っているのが見えてるだろうが。

 あのバスの運ちゃん無視しやがった。


『残念でしたッスね』

『まだだ、奴には俺をコケにした罰を受けて貰う』

『おお、何かやるッスか』

『黙ってろ、時間がもうない』


 俺はなけなしの力を振り絞り、特大魔法を発動した。


 タイム・リバース。


 名前の通り、時を戻す魔法だ。


『おおおお、存在すら不確かな伝説級の魔法じゃないッスか!いつの間に覚えたんすか』

『ちょっと待ってろ。乗ってからな』


 せっかく時間を戻したのにまた逃したら単なるアホだ。

 それに滅茶苦茶疲れてるから早く座りたいんだよ。

 お、良かった空いてたぞ。


『向こうでは一回も使わなかったッスよね』

『まぁな。実用的じゃないからな』

『そうッスか?時を戻せたら強そうじゃないッスか』

『んなこたーねーよ。戻せるって言っても数秒だからな。ギリギリの戦いの最中では効果があるかもしれんが、流石の俺でも少しばかり溜めが必要だから隙を見せちまう。それに、かなり体力も消費するから連発も出来ない』

『はぁ~大魔法だからって都合良くはいかないもんッスねぇ』

『そんなもんさ』 


 これを使ったのはのぞきがバレた時くらいかな。

 あの時はまだこいつと契約してなかったから知らないだろう。


『でもなんでこの魔法が罰になるッスか。周囲の人は気付いてないッスよね』

『まぁな。気付いているのは俺と、お前くらいだ』


 そういや何でこいつは知覚出来てるんだ?

 俺と契約しているからか?


 まぁどうでもいっか。


『この魔法にはな、大きな問題点があるのさ』

『……ごくりッス』

『なんと、この時間が戻ったことで、世界中の人がデジャブを感じやすくなるんだ』

『……へ?』

『あれ、これさっきも経験しなかったっけ?って釈然としない気持ち悪さを感じるんだぜ。最悪だろ』

『あ~……そッスね』


 俺そういうの気にしちゃうタイプだからな。

 正体の分からない違和感ってマジで気持ち悪い。


 大抵がスパイに覗かれてたとかこっそり魔法をかけられてたとかだから、見つけてぶん殴って解決したけど。


『俺をコケにした罰だ。気持ち悪い思いに苦しむが良い。はーっはっはっは』

『この人は変わらないッスね』


 そうさ、俺は変わらず悪逆非道の限りを尽くす男となるんだ!


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