異世界
「世界を掴むのは俺だー」
「いや、俺が世界を掴むんだー」
二人の撃ち合った魔法はぶつかり合いまぶゆい光に包まれた。
『うわーーー』
「ここはどこだ」
俺は独り言のように呟いた。
確かあの時お互いの放った魔法がぶつかり合って次元が割れ異次元に飛ばされた。
辺りを見回すと砂一面で何もない。
「クウホ」
魔法を唱えて空を飛ぼうとしたが飛ぶ事が出来なかった。
「クウホ」
やはり魔法が発動しない。
「なぜ魔法が、ここの世界は魔法が使えないのか」
自分の魔力を感知してみたが何も感じなかった。魔法が使えない世界じゃなく俺の魔力がなくなっていた。
しゃあない歩くか。
何もない砂漠を歩いていたら地面から震動を感じる。
『ザクザクザクザク』
音も聞こえるな。何かがこちらにじょじょに近付いてきているな。
『ザクザクザクザクザクザク』
「来る」
『ドカーン』
もの凄い音ともに砂の上に現れた。
顔面は目が6個位あり両腕は鋏みたいな切れそうな腕、胴体は魚の鱗のような堅い胴、尻尾は2メートル位ありそうだ。
何だこの気持ち悪いみたこともない生き物わ。
両腕の鋏を使って俺の腹を狙って攻撃してきた。
「エンブレムクロス」
相手を拘束する技を使ったが魔法がでなかった。
「やべー忘れてた」
「ぐは」
相手の鋏が腹に刺さった。
俺は致命傷を負い意識を失った。
「ここは」
俺は意識を取り戻したら知らないベットの上で仰向けになり寝ていた。起き上がろとしたら腹から激痛が走った。
「動けん」
腹には包帯が巻かれていて誰かが手当てしてくれたみたいだ。
『バタン』
扉が勢いよく開くと小さい女の子が入ってきた。
「お兄ちゃん起きたんだね」
「誰だてめーわ」
「ぐずぐずうわーん」
「うるせー。こいつうるせーぞ」
さらにこいつは俺の言葉に合わせるかのように大きく泣いた。
「あーもう俺が悪かった悪かったよ。名前は何て言うんだ?」
「アカって言うの。お兄ちゃんは何て言うの?」
「俺の・・・いや俺様の名前はアルベルクだ」
「変な名前?」
「お前だって変な名前じゃねーーかよ」
「アカの名前はお母さんが付けてくれたから変な名前じゃないの」
「お母さんか?」
「アルはお母さんいないの?」
アルっていきなり俺の名前を略すなよ。
「さぁ、どうだろうな。忘れちまったよ」
俺はちょっと寂しい顔をしてしまったのかも知れない。
「それよりもここはどこなんだ一体?」
「ここはアカの家だよ」
「まぁそうなんだけどな。この国の名前を教えろ?」
「アカの家よ」
ダメだ。このガキだと話しになんねーー。
でも言葉を通じる所をみると俺がいた世界『水の都ラチッタ』よりそんなに離れていない場所なのかも知れねーー。
俺には使命があるんだ。早く元の世界に帰らねば。
「アカもう一つ質問していいか?」
「いいよ」
「魔法はこの世界に存在するのか?」
「魔法って何?」
魔法を知らないだと。俺の世界で魔法がなければ生きる事も出来ないと言うのに。
「人の傷を治したり、自分の身を守る為に使われる神秘的な力だ」
アカはポカンとしている。
「でもこれなら出来るよ」
ハアーーと両手をかざし力を込めると目の前に円形の光が湧いた。
「これは?」
「うーん。お爺ちゃんが気功術って言ってたよ」
気功術。聞いた事ないが魔法と同じようなものを感じる。
「アカこれは誰にでも出来るのか?」
「出来ると思うよ。お爺ちゃんは誰にでも使えるって言ってたから」
魔法が使えない世界なら気功術って言う魔法みたいな技を習得するしかなさそうだな。
「それじゃやり方を教えてくれ」
「いいよ。だけどその前に体治してからね」
何だよ急にお母さんみたいないい方したがって
「分かってるよ」
「やっと治ったぜ」
俺はあの後一週間は腹の痛みがぬけずベットの上で寝ていた。
「アル治った治った」
こんなにも早く動けるようになったのもこいつが気功術を使って回復してくれたからだ
「アカそれじゃさっそくトレーニングを?」
「やろうやろう」
アカはやろうやろうと言ったきり何もしようとせずただ立っていた。
「アカまさか教えて方分からないんじゃ?」
「分かるよ」
ホッペを膨らませムッという表情をみせ、気功術のお手本を俺に見せた。
「こんな感じ。やってみて」
両手をかざしアカと同じように放ったが何もおからなかった。
「アカ何かコツとかないのか?」
「自分の心と向き合う事」
何だそのかっこいいアドバイスわ。結局俺は一日練習したが最後の最後まで出来る事はなかった。
「ハアーーーーーー」
あれから一カ月が経ったが今だに何もでない。
「アルご飯出来た」
「はいよ」
ここの生活で思った事はアカは一人で生活していた。
「アカそういえばあのデカイ鋏の化け物どうやって倒したんだ?」
「アカも倒すのは無理だから逃げただけだよ」
「気功術ってスピードも上げられるのかよ?」
「お爺ちゃんは全てのステタースを極限にまで上げられるって言ってたよ。意味分からなかったけど」
気功術極めれば魔法以上の力をだせるんじゃ。
「アカは何で使えるようになったんだ?」
「アカは天才なのだよ」
やっぱりこいつ馬鹿だわ。地道にトレーニングを積むしかないのか。
「ハアーーーーーーーーー」
あれからさらに三カ月が経った。
何回やっても何もでない。
「アカ世話になった。俺はそろそろ行くよ」
「アルどこに行くの?」
「取り合えず近場の村まで歩いて気功術の事を詳しく聞こうと思っている」
「アカも連れてって?」
「まだ子供だしそれは出来ない」
「アカは大人だよ」
背が低く声変わりもしてない。どう考えてもガキだ。
世話にはなったがうるさいので嫌だ。
「アカありがとう」
「やだやだやだやだやだやだ連れてって」
あーうるせー。
「あー分かったよ分かりましたよ。連れてけばいーんだろ。連れてけば」
「アルありがとう」
こうして俺はアカという少女と旅に出る事になった。
「遠いな。近くの村まで何キロ歩いてるんだ」
アカはピクニック気分でただウキウキしているだけだ。
「アルとお散歩楽しいな楽しいな」
「アカは近くの村まで行ったことはないのか?」
「ないよ。ずっと山奥で暮らしてただけだから」
だとすると村まで後どれ位かかるかも分からない訳だ。
『ザザザ』
「誰だ」
「大きな声だしてどうしたのアル?」
「今そこの草むらから誰か居たような」
「どこにもいないよ」
俺の気のせいか。
再び俺達は最初の村に向かって歩きだした。
「着いたー」
「やっと着いたねアル」
「だなー遠かったな」
俺達はあの後三日三晩歩き続けてやっと到着した。
街の中は大盛況で人がそこら中にいる。
「さてと気功術の事とこの世界の事を誰に聞くかな」
「アルあそこ行こうよ」
アカが指差した場所は道場だった。
看板には『来たれ伝説の気功術使い』と書かれている。
何だこの嘘っぽい看板。まあここなら気功術の事を聞けるのは間違いないな。
「入るぞアカ」
「うん」
『コンコン』
「ごめん聞きたい事があるんだが」
「うりゃー」
扉を開けて目に下のはデカイ男がお爺ちゃんに吹っ飛ばされていた。
「ぐへ」
投げ飛ばされた男は床にたたきつけられた。
「こりゃー客人か。驚かせてしまってすまなかったの」
「爺さんこれどうやったんだよ?」
「気功術じゃよ」
やはり気功術か。
「気功術の事を教えて欲しいんだが?」
「構わんぞ。ただ学ぶのは勝手だがお前には素質がない、習得は出来んじゃろ」
「俺に素質がない。そんなの見て分かるものなのかよ?」
「分かるとも。気功術は生まれ持っての物。お主の横の少女は素質がある。極めれば儂より上になるかも知れんな」
「アルどうやら私天才らしいよ」
「・・・」
「お主儂に何か質問はあるかいの?」
「いえ失礼しました。聞きたい事は聞けたのでこれで俺達は」
俺は『バシャリ』ど扉を強くしめて出て行った。
「アルどうしたの急に?」
俺は学んでも出来ないだとすると俺はどうすればいいんだ。
「何でもない」
『ゴゴゴゴ』
何だ地鳴りか。今地面がとつもない音ともに揺れた。
『市内放送市内放送』
『ただ今の地震により建物が燃えたもよう。近くの皆様は安全の為避難をお願いします』
あれほどの地鳴りだもんな無理ないな
『ドカーン』
目の前で地面が割れそこから人影が現れた。
「誰かいるのか?」
俺の声に反応は当然ない。
「グハ」
何だいきなり吹き飛ばされ俺は40メートル位後ろにいた。
「何か今吹き飛ばしたな」
「無意識に技を使うなと何回言えば分かるんだよ?」
「すまんすまん」
敵は一人じゃないのかよ。 アカはどうしている。
「アカ無事か?」
「大丈夫だよ」
アカは俺の横にいて心配そうにみていた。
「てめーらよくもこの俺をいたぶってくれたな」
「何だ貴様は?」
「俺はアルベルク。異世界から来た者だ」
「何言ってんだ貴様」
「てめーらは何で地下から現れたんだ?」
俺はこいつらが俺と同じ異世界から来た者だと思っている。
「地下の生活に飽きたから来たんだよ。地上にいる奴がどうにも鼻についてな」
「アカ地上の奴と地下の奴って仲悪いのか?」
「アカ分かんない」
それもそうだよな。ずっと山奥に住んでいる少女が分かるはずないもんな。
「お前も地上の者だな。ぶっ倒す理由になるな」
「売られた喧嘩は買うしかないよな」
「おら」
相手は拳を俺に向けて突いてきた。
その拳で空気団見たいな物を作ってさっき俺に当てたのだろう。
その空気団は強力で俺の後ろにあった鉄柱をも破壊するほどだ。
「どうした逃げてるだけか?」
「うりゃー」
相手の空気団をかいくぐり相手の腹を殴った。
「いてー」
相手にダメージを与える所か俺の拳がダメージを受けた。
「どうなってんだよあれ」
「お前バカか。気功術で身体全体を強化してんだよ。そんな事も知らねーのかよ」
また気功術かよ。やはりこの世界に生きるには絶対必要らしいな。
だが俺は習得は出来ないチクショウあいつを倒すのは不可能じゃねーかよ。
「殺し間中に何考え事してんだよ」
「しまっ・・・ガハ」
俺は相手の空気団を腹に受けて数百メートル吹っ飛んだ。
肋骨の何本かヒビが入り意識がもろうとしている。
「ヤベー油断した」
「これで終わりだ」
相手は俺の真上から拳を振り下ろしたら地面が割れた。地面から土埃がでて視界が遮れられた。
「な?」
土埃が晴れて俺の死体を確認しようとしたらそこには死体がなかった。
「あいつはどこに行った」
周囲を確認したらそこには少女におんぶされている俺の姿があった。
「てめー」
「これ以上アルをいじめないで」
「二人まとめて死ねや」
相手は空気団をうったがアカはなんなく避け、そのスピードに相手は付いていけない。
「早いな。だったらこれならどうだ」
間髪を入れずの乱打だ。無数の空気団が俺達に襲ってきたがアカは数10メートルジャンプして、全ての攻撃を避けた。
「この野郎くたばれや」
「やめておけ」
「何故止める?」
「良くみろ。あいつの瞳を?」
「瞳の色が変わっている」
「今日はここまでだ。帰るぞ」
「ちっ」
あいつらは地鳴りとともにまた地下に帰っていった。
俺が目を覚ました時は戦闘が終わっていた。
「俺は何も出来なかった」
非力だった。自分はただのお荷物。アカがいなければ何も出来ないただの弱い男だ。
「それはしょうがないよ。アルこの世界に来て間もないんだもん」
アカの優しさが今の俺には苦痛だった。
「だってアルは」
うるさい。それ以上喋らないでくれ。
「アル。ね聞いてるのアル」
「うるせーんだよいちいち。何だよてめー邪魔何だよ。俺は一人でも大丈夫だったんだよ」
自分でも何を言っているか分からない。ただただ相手を傷付ける為の言葉を発してしまった。
「アルはアカがいなくても平気?」
「当たり前だろお前いない方が最初から良かったんだ」
「そう。ごめんなさいそしてさようなら」
アカは後ろを振り向かず前だけを見て歩きだした。
「オラー」
「そんなじゃまだまだじゃぞい」
俺はアカと別れた後日々最初の道場でトレーニングをしていた。
素質がないのは分かっている。ただ何か無性に体を動かしたいのだ。何か俺の心に変な感情を取り払えたいから。
『ゴゴゴゴ』
また地鳴りか。でかかったな。
「バコーン」
扉が壊され煙の中から人が出て来た。
姿を現したのはこの前の二人組とアカだった。
「え、何で?」
「おや、あそこにいる嬢ちゃんはお主の」
俺はじいさんの声など通らずにただショックだった。
「アカ何でお前がそこにいるんだよ?」
「・・・」
アカからは返事がない。洗脳されてるのか?
「こいつはこの前俺達の仲間になったんだよ。お前にはちょうどいい。アカが相手だ」
アカは頷くと俺の顔面を殴り俺は道場の壁に背中からぶつかった。
何て言う力だ。とても小さい女の子の腕力じゃないぞ。
「アカ何でお前がそこに。故郷に帰ったんじゃないのか?」
アカは俺の言葉など聞かずに顔面を何度も何度も殴り続ける
俺はその度に意識を失いかける。
「アカ俺の言葉を聞いてくれ」
俺はアカの体を抱きしめた。
「アカあの時は悪かった何かイライラしててさ」
アカは俺の拘束を振り解き俺の腹を蹴り吹き飛ばされ痛みで意識が失った。
「アカそいつを殺せ」
仲間の一人がアカに向かって叫んだがアカは動こうとしない。
「おい早くそいつを」
泣いていた。アカは泣いていたのだ。洗脳されてるからといって今まで一緒に旅をしてきた、いや一緒に生活してきた人を傷付けてしまった罪悪感で泣いていたのだ。
「もういいやお前は死ね」
空気団がアカに向かって離れたがアカはまだ動けない状態でいる
『ドゴーン』
煙が立ち晴れるとそこにいたのは俺だった。
「怪我はないかアカ?」
その言葉と同時にアカの洗脳はとけた。
「大丈夫。アルごめんなさい」
アカは泣きながら俺に抱きついてきた。
「俺の方こそごめん」
「てめーら俺の存在を忘れてねーか?」
「すまんすまん。お前にイラつき過ぎて全然気付なかったよ」
「お前にイラつき過ぎてね。まともに気功術も使えずにましてやそんな体の状態で俺を倒せると思ってるのかよ」
確かに俺の体は満身創痍で今立っているだけでもやっとの状態だ。
だがそんな事はどうでもいい。アカをこんな目にした事は許さねー。
「アルここはアカに任せて?」
「大丈夫だよアカ。俺はお前を守りたいんだ」
俺の心のモヤは消えて頭がスッキリしている状態だ。
例えるなら産まればかりの赤ちゃんの状態だろう。ただ純粋でただ無垢で無知な。
「エンブレムクロス」
相手の足下から円形の魔方陣がでて火柱が立ち相手を焼き払った。
「頑丈だな」
相手はまだ生きていた。
「オマエナニヲシタ?」
声がたどたどしく死にかけているのかが分かる。
「死に行くお前に教えても無駄だろ」
「クソガ」
「癒やしを」
「アカ何やってんだ?」
アカが気功術を使って相手の傷を治そうとしていた。
「治療だよ」
「何で?」
「人が傷付いたら助ける。それは常識だよ」
「違う。傷付けられたのはこっちの方だろ。お前は洗脳され俺も精神的なダメージも受け体中も傷だらけにされた」
「アルこんな言葉知ってる?」
「何だよ?」
「人が人の人生を奪うべからずって言う言葉」
俺はその言葉を信じていいのか?俺自身の世界で俺は何人者人を。
「分かったよ。アカの勝手にしな」
「恩にきるよ。助かった」
火傷だらけの傷が元通りに戻った。
「ダース帰りましょう」
もう一人いたやつの名か。
師匠と交戦中の奴がこちらに気付いた。
「あの火柱で良く生きてたな?」
「こいつらに助けられました」
「で何かようか?」
「帰りましょう命を救われたので」
「ダメだな。俺には個人的な恨みがあるんでな」
「ごめん」
「ガハ。お前」
ダースは仲間に後ろからたたかれ気絶をした。
「それじゃ。命の恩人よ」
あいつらはまた地鳴りとともに消えていった。
「アルそれよりもさっきの何?」
「魔法だよ」
「魔法?」
「そう魔法だ。気功術見たいな物でこうやれば・・・あれ」
「何にもでないよ」
「あれおかしいな」
結局何回やっても俺の手から魔法がでる事はなかった。
「アル、アカ疲れたよ。おんぶして」
「俺も疲れてるよ。うるせーな」
俺達はあの後爺さんから『セントラルナイツ』に行ってみたら魔法の事が分かるかもしれんと言われアカと一緒に旅にでている。
「アル、おんぶおんぶ」
「だから俺もヘトヘトだから無理何だって」
『ポタポタ』
ん。上を見上げたら雨が降り出していた。
「アカどこかで雨宿りするぞ」
俺達は大きい大木の下で休む事にした。
「それにしても降りすぎだぞ」
アカは疲れて寝てしまっている。
雨を見ると昔を思いだす。
そうあれは俺が初めて人を殺した時だ。
「人殺し誰かそいつを捕まえてくれ」
『ハアハアハアハア』
「捕まってたまるか。俺はこの世界を変えるんだ」
「こちっだ」
俺は呼ばれた方に行き身を隠してもらった。
「ありがとう。助かったよ」
「困っていたらお互い様よ。所で何で追われたんだい?」
おばちゃんが俺の顔を怪しげにみている。
「食い逃げしただけだよ」
「食い逃げねー。まぁいいわ。今日はもう遅いし家に泊まってきな」
俺はコクリと頷き家に泊めてもらう事になった。
「それにしても良く食うわねあんた」
俺は人を殺して緊張の糸が解けたのか、腹がいつもより減っていて食がもの凄く進んでさまう。
「おばさんの料理が美味しくて」
「どんどん食べな」
さて飯も食べたしこの後どうするか。
『いたか?』
『』