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『6 フロアボス』

さくっと進みます

ダンジョンに籠って、さらに数年の月日が経った。


このダンジョンは6大属性をモチーフとした階層で出来ていた。

内訳はこんな感じだ。


1階層       無機質

2-20階層    風属性。新緑の回廊

21-40階層   火属性。獄炎の回廊

41-60階層   土属性。砂漠の回廊

61-80階層   水属性。水氷の回廊

81-100階層  光属性:極光の回廊

101-120階層 闇属性:深淵の回廊


獄炎の回廊は、文字通り火の回廊。

足を踏み入れただけで、大やけどをする。キチガイじみた回廊だった。

出てくる魔物もファイヤードレイク、イフリート、ウィスプと火属性の中でも最悪の部類がひしめいていた。


「熱っ!これじゃ先に進めないぞ!」


『お主、魔法剣士であろう。水魔法で身を包む事は出来ぬのか?』

「お、ナイスアイデア!」


『これくらい、当たり前に行きついて欲しいものだ』

「悪かったな!」


『お主、才能はあるが、残念な阿呆よな』

「うるさいわっ!」


それからは、なんとか火のエリアは突破した。

ごく稀に、炎に包まれたグリムホルダーも見られたが、見つからない様にやり過ごした。


平然とファイヤードレイクを捕食してボリボリと食べていたが。

あれだけは相手にしてはダメだろう。


次は土のフロア、砂漠の回廊だが。一面が砂漠で。太陽が照り付けている。

おそらく、この太陽も疑似的な物だろう。


しかし、実際に暑いワケで、全身の水分が急激に失われていく。

この階層から、グリムホルダーは見られなくなったが、

コカトリスの変異種。アビスワーム、ベヒーモスなど、少し頭のオカシイ強さの魔物の姿が見られた。


「いきなり、敵が強くなってないか?」

『土は地味でな。華のある魔物を添えてみた』

「いらんわっ!」


そして、次は水のフロア。水氷の回廊。

ここは、一面水が張り巡らされており。美しい渓流や滝も見られる。本当にダンジョンか疑わしいレベルだ。

戦い続きの俺は、景色の美しさに癒された。


しかし、魔物はリヴァイアサン。クラーケンなど、存在が災害と言われる魔物ばかり。

正直、土属性のフロアより、攻撃がえげつなかった。


次は、光属性のフロア、極光の回廊

ここでは、驚くことに、天使が現れた。

しかし、表情は無機質で、俺を敵と判定してからは、本当に容赦の欠片も無かった。


『良い感じで強くなっておるな』

「さすがに天使は聞いてないぞ?」


『光属性で強者といえば天使であろう』

「それはそうだが、ダンジョンに現れる相手じゃないだろう?出鱈目に強いし」


『弱音を吐いている暇は無いぞ。闇属性の敵は、最期だけあって一番厄介だ』

「天使より酷いってどんだけよ?」


そして、その厄介な闇のフロア

そこはアンデットの巣窟だった。


『ここだけは我も行きたくないのう』

「そんなフロアを作るんじゃねえ!」


『形式美というやつだ。アンデットがおらぬダンジョンなどあるまい』

「しかしなあ・・・」


アンデットの質がエグ過ぎる。

リッチー、ヴァンパイアなど錚々たる顔ぶれが見られるが、こいつ等はまだ可愛いものだ。


真に恐ろしいのは、いままでの階層の敵がアンデット化している奴だ。

天使に至っては、堕天使となって更に凶悪になっていた。


闇の階層は100層までの魔物が闇となった集大成だった。

そして、生前の属性を自在に使ってくる敵も当然いる。

リヴァイアサン、ベヒーモス、そして堕天使等が不死の化け物と化して襲ってきた。


「ヴォルクス!限度ってものがあるだろう。少し自重しろよ!」

『我の住居だぞ?手を抜くワケがあるまい』


「頼むから少しくらい抜け!」

『時間も限られておる。今のお主であれば何とかなろう。まあ頑張れ』

「根性論かよ!」


***


そして、なんとか闇のフロアを抜けて、120階に辿り着いた。

ヴォルクスの発破は何かと効いたようだ。


そして目の前には、厳格な神殿を思わせる、荘厳で洗練された門があった。

今までの階層とは、比較にならない神聖な雰囲気を感じる。


『ようやく、入り口に到達したか』

「おい!今、とんでもない発言をしなかったか?」


『それこそが、我が作った迷宮。今までの場所は外観、人間で言うなら庭みたいな物だ』

「あれが庭かよ・・・」


そろそろ、ヴォルクスの規格外にも慣れてきたと思っていたが、まだまだ甘かったようだ。


しかし、たった一人でこんなダンジョンに挑んでいるのだ。

話相手がヴォルクスだけだが、それでも精神的な面で大分助かっている。


「それでは。この先は今迄とは比較にならない程危険って訳だな」

『うむ、残り80階層だが、飛び切りのフロアボスが6名いる』


「それはまたご丁寧なことだ」

『なに、グリムホルダーに比べれば・・・マシか?多分。そうだとよいな』


「いちいち不安を煽らないでくれ」


こいつの茶目っ気には、流石に慣れた。

見てくれは恐怖の塊だが、話すと結構ジョークも織り交ぜてくる。

下手な人間より、話していて楽しい奴だ。


120階から出て来る敵は、グリムホルダーに匹敵どころか、遥かに強い強敵しかおらず、

敵の数こそ少なかったが、一つの戦闘に恐ろしく時間がかかった。

グリムホルダーに比べてマシなど、過小評価にも程がある。


だが、知的な敵が多く、今までの様な無言で殺し合い、倒して食料にするといった

原始的な戦いにはならなかった。

逆に話の通じる敵との戦いは、精神的に助かったと言っていいだろう。


そして、飛び切り過ぎるフロアボスと遭遇した。

最初の番人は火竜。しかもヴォルクスと同等の存在感を放つ。古代種だ。


『ここに人間が来るとは驚いたぞ』

「そりゃ、どうも」


『人間風情などと浅慮な事は言わぬ。ここに来るだけでも大したものだ』

「あんたみたいな立派な竜に、面と向かって褒められると少し照れるな」


『さて、会話はこれくらいにして』

「ああ、存分に仕合おう」


『我は獄炎竜ワグナス。汝の名は?』

「リックだ。しかし竜ってヴォルクスといい、格好いい名前が多いな」

『誉め言葉として受けておこう。さあ、来るがよい』


こうして、戦闘が始まったのだが・・・


「ぐあっ!熱っ!痛ってぇーーー!!!」

『どうした?口だけか人間!』


天上から業火のブレスが、滝の如き勢いで雨の様に隙間なく降り注ぎ、

逃げ転がりたい地面はマグマが次々に噴き出す灼熱地獄。

そして、炎雷を纏った爪が、縦横無尽に襲ってくる。


どこに、戦いになる要素があるのか教えて欲しい。


「いや!戦いになってないぞ!これ!」

『フハハハハ!!!』


正直に言って、ワグナスは格が違い過ぎた。

今まで戦ってきた相手が子供に見える程に、実力が飛び抜けている。


しかし、俺は人間の生活を取り戻す事を諦める訳にはいかない。

普通に考えれば、膝を屈して当たり前の相手だろう。

だが、俺には諦めるという意思は欠片も起きなかった。

こういう所も阿保なのだろうな。


「くそっ!無策で挑むのは無理だ!」

『ほう、まだ我に勝てると思っているのか?』


竜の表情はよく分からないが、

ワグナスに、面白い物を見る目をされた気がした。

なんとなく、ヴォルクスに通じる物を感じる。


『よかろう、戻って修行でも何でもやってみるが良い。1回だけは見逃してやろう』

「次は必ず倒してやるぞ!ワグナス!」


ワグナスは戦闘を中断し、俺は部屋から退散した。

意図的に見逃してもらった。

これ以上ない、完全敗北というやつだ。


***


一面の火の海ならば、炎獄の回廊で体験したが、

ワグナスの灼熱地獄はそれが涼しく感じるレベルだった。

ザックリ言えば、お湯とマグマくらいの違いがある。


「あいたたた。あれは反則だろう。色々と規格外過ぎる」

『情けない・・・ワグナス如きに破れるとは』


「いや、強いとかそういう次元じゃないぞ!?絶対人間が挑んだら駄目な相手だろう!?」

『そこは、我と同族であるからな』


「もしかして、ワグナスって、あんたより強くないか?」

『我の方が強いわ。阿呆』

「阿保言うな」


「とにかく、作戦を立てないとどうにもならんな。あれは無策では勝てん」

『阿呆が少しは成長したか』


「お前は、もう少し俺に協力的でもいいと思うぞ?」

『誉めているではないか』

「もういいわ!」


とにかく、ワグナスと戦うには対策が必要だ。

最低でも、全身を氷属性で包む必要がある。

しかし、果たしてあの業火の中で耐えきれるか?・・・今の俺では無理だな。


逆に全身を炎で・・・って自殺でもするのか?却下。


それでは、こっそり忍び込んで不意打ち?

ナンセンスだ。こちとら見逃してもらった身だ。

そもそも、姑息な手が通じる相手じゃない。


マジで詰んでいるな。

ここに来て、俺は本気で躓いたのだった。

流石に簡単にはいきません

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