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『5 ダンジョン上層』

改めて最上層に挑戦

俺は改めて、ダンジョンに挑む事にした。


「まずは、着る物が欲しい」


何しろ、今はボロ布を巻いているだけで、全裸に近い。

防具よりも、服が欲しいところだ。

数年は原始人みたいな暮らしをしてきたが、これでも文明人のつもりだ。


しばらく、慎重にダンジョンの探索を続けていたら、祭壇らしき場所を発見した。


中には、ダークキマイラが3体。以前のモンスターハウスに比べればかなりマシな状況だ。

俺は、ダークキマイラを1体ずつ、誘き出して順番に屠って行った。


デカブツを相手にするなら通路を利用するに限る。

1体しか通れないからな。

もっとも、背後に敵が来たら挟み撃ちになるので、内心ヒヤヒヤ物だ。


そして、魔物を倒し切った後、祭壇を調べると

中央に宝箱が置いてあった。


特に罠は無く、蓋を空けると、中に人間の服が入っていた。


都合が良過ぎて、怖いな。

ヴォルクスの掌で踊っている気がする。

というか、実際その可能性が高いだろう。


とはいえ、臭いボロ布と、どちらを取るかは考えるまでも無い。

俺はその場で、宝箱の衣装に着替えた。


これは、聖属性の服か?

かなり品質の高い服である事は間違いなさそうだ。

なにより動きやすくて、魔法耐性が異常に高い。


色々調べてみたが、そこいらの防具屋では手に入らない最高級品という事が分かった。

特に、魔法耐性が高く、高難度のダンジョン攻略にはうってつけの逸品だ。

そして、聖なる服を手に入れた後の攻略は順調だった。


この服は、レイスのブレイク攻撃にも耐性があるため、

即死攻撃を回避する事が出来たのは、何より大きかった。


そして、武器や防具も一式見つける事が出来た。

特に、剣に聖属性を付与する、アクセサリーは、レイスを相手にする時はありがたい。


ヴォルクスが作ったダンジョンは武具だけでなく、

道具や装飾品も見た事も無い程、高級なものばかりだった。


ドラゴンは自分の宝にこだわると噂に聞いた事がある。

それが、巡り巡ってプラスになっているわけだ。


俺は上機嫌で洞窟に戻った。


***


『ふむ。大分マシな姿になったな』

「ああ、ありがたく借りているぞ」


『それにしても、のんびりやっておるな』

「ん?まあな。そう急ぐ物でもないだろう?」


『その調子では、我と違ってお主は老衰で死ぬぞ?』

「ろ、老衰?!」


『そのダンジョンは地下200階ある。まだ1階ではないか』

「200!?あんた、どんだけ頑張ったんだよ!」


『我の住まうダンジョンだぞ?全力に決まっていよう』

「本当に変な所に力を入れるな・・・まるで」


俺みたいじゃないか?と言いそうになったが、

それは、認めたくないので思いとどまった。


『なんだ?』

「いや、何でもない。しかし、それじゃ急がないとヤバイな」


『毎回、その洞窟に戻るより、ダンジョンで安全な場所を探すが良かろう』

「そんな所があるのか?」


『後々に迷宮内に街でも作ろうかと思って、安全なフロアも作った・・・はずだ。多分』

「おい!そこで不安を誘うな!」


『仕方なかろう。そのダンジョンを作ったのは。1万年以上も前だ。覚えている物か』

「そりゃまた随分年期が入っているな」


『ゆえに。ダンジョン内でいくつか制御しきれぬ場所もある。生態系が変化しておるな』

「どれだけカオスなダンジョンだよ・・・」


最上階から、Sランクの魔物がうじゃうじゃいるとか、

お前、どう考えても、制御出来ていないだろう。


『そして、最上階の魔物は森から出られぬが、結界が解ければ、外に溢れ出よう』

「待てよ?こんな奴らが外に出るのか?」


そんな事になれば地獄絵図だ。

仮に、ここで一番戦いやすい、ダークキマイラが5体、街に現れたとしよう。

女子供は無惨に食い殺され、無数の冒険者の死体の山が容易に浮かび上がる。


当たり前だ。ダークキマイラはSランクの魔物。

何の備えもしていない街に、いきなり複数体現れたら街は数分で壊滅する。


『お主を追放した街など捨て置けば良かろう』

「馬鹿勇者はどうでもいいが、女子供が襲われるのは気分が悪いな」


『ぬるい男だ』

「ほっとけ。お前も自分の同族が意味も無く殺されたら嫌だろ」


『そのような感情は、数万年の昔に置いてきた』

「そっか。まあ明日から急ぐよ。俺も老衰は勘弁だからな」


忘れた割には反応が遅かった気がするが、特に詮索する事ではないだろう。

それこそ野暮というものだ。


俺は、考えた結果、先に進む事にした。


ここをクリアすれば、最上層の魔物が地上に溢れる?

そんな先の心配より、今は前に進む事を考えよう。


悩むのは、ダンジョンコアの目の前でもいい。

なにしろ、俺はまだ2階に降りてすらいないのだから。


***


今日は2階への階段を見つけた。

ダンジョンで見つけた、ヴォルクスの武具が優秀だった事もあって。

最上層の魔物に苦戦する事はなくなった。


そして、俺は2階に降りて唖然とする。


無機質な石と違って、2階は一面が緑色に染まっていた。

正確には無数の植物が一面にびっしりと詰まっている。

まるで、植物の園だ。

そして、天井が高く、庭園の様な広さがあり、とてもダンジョンとは呼べない風景が広がっていた。


さらに驚いたのが、一際異質な魔物だ。

植物の球体だが、獰猛な口がついている。そして無数の触手がウネウネと動いていた。


俺は、見た事も聞いた事も無い魔物に、怖気が走った。

本能が警笛を鳴らす。アレに挑んだら間違いなく死ぬ!


(な、何なんだ!あの魔物は!?)


俺が、息を潜めていると、俺が知っている魔物。ミノタウロスの姿が見えた。


牛の頭をしており、筋肉質の身体を持つ魔物だ。

こいつも普通なら、ダンジョンの深部にいる魔物。

本来はAランクの強さだが、それは普通の相手の話。


遠くに見えるミノタウロスは黒い金属製のバトルアックスを持っており、

同じ材質の鎧を身に着けている。

知能が高い、亜種のミノタウロスだろう。当然Sランク以上だ。


そして、緑の球状の魔物はミノタウロスを見つけると、物凄い勢いで襲い掛かった。


ミノタウロスは球体の魔物に向かって、金属製の斧を振り回すが、

正体不明の魔物が放つ強靭な触手が、斧を、瞬時に粉砕した。

そして、ミノタウロスを触手で締め上げ、完全に動きを封じた所に獰猛な口がぱっくりと開く。

ミノタウロスはなすすべなく、緑色の化け物に食われていった。


俺は、その圧倒的な力の差を黙って、見る事しか出来なかった。


『ふむ。早速イレギュラーに出会ったか』

「ヴォルクス・・・あれは何なんだ?俺はあんな魔物は聞いた事が無い」


『うむ。我も分からぬ内に発生した魔物よ。グリムホルダーと名付けておる』

「おまえも分からないのか?」


『ダンジョンでは、魔物同士の共食いなどは発生しない。あやつはバグよな』

「バグ?」


『突然変異の事だ。アレはかなり強い。今のお主が相手をすれば間違いなく死ぬぞ』

「それは俺も直感で分かった。亜種のミノタウロスを一方的に捕食するモンスターなんて初めて見たぞ」


俺は、グリムホルダーという未知の魔物を避けて3階への階段を探した。


そして、ここに来て荷物がかさばってきたのだが、

アイテム整理が出来るマジックストレージというアイテムを2階で見つける事が出来た。


「これは便利だな」

『魔法でも同じ事が出来る物がある。下の階層にスクロールがあるはずだ。探してみると良い』

「そりゃ、どうも」


マジックストレージは破格の値段で取引される商品だ。

勇者パーティーでもアレンしか持っていなかった。

しかし、アレンのストレージの収納容量は中。こちらは極大だ。

価値としては比べ物にならない差がある。


流石に、ヴォルクスが集めて置いたアイテムだ。

品質が半端なかった。


***


3階への階段は、比較的簡単に見つかった。

そして、3階は2階とほぼ同じ作りだった。


『それぞれ、趣向を凝らした層が6つある。しばらくはこの景色が続く』


というのは、作った本人からのありがたい言葉だ。

そして、中央の層には、安全と思うエリアがあるらしい。


どのみち、洞窟に引き返すには、俺は奥に進み過ぎた。

ヴォルクスのいう事を信じて、先に進むしかないだろう。


緑色の階層では、主に植物の魔物、そして亜種ミノタウロスが多く出現した。

とはいえ、ブラッドプラント、エルダートレントなど、Sランク以上の化け物ばかり。

しかし、真に恐ろしいのは、イレギュラーのグリムホルダーが各階にいて、その階層の魔物を捕食している事だった。


Sランクの魔物を捕食しているのだから、軽くSSランク?

いや、人間の格付けはアテにならないからやめよう。


やむを得なく戦いになった時に自分で測ればいい。

俺の経験則からそれが一番いい気がした。


そして、地下5階に降りた時、敵の気配が止んだ。


『どうやら、セーフティーエリアに入ったようだな』

「ここが、安全なフロアなのか?」


『色々と趣向を凝らしていたはずだ。好きに使え』

「そりゃ、随分親切な事だ」


一面緑色の空間というのは変わらないが、確かに魔物の気配はしない。

そして、蔦で出来た扉を発見した。


「ここは、部屋になっているのか?」


俺は中に入って驚いた。


そこには人間の住居みたいな部屋があったのだ。

丁寧に調理場や、トイレ、そして身体を洗う水場まであった。


「ヴォルクス・・・流石に趣向を凝らし過ぎだろう」


しかし、疲れ切った俺は、ありがたくその部屋で眠るのだった。


次話からは、ダイジェスト形式で速い展開になります。

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